埼玉県狭山市の自動車整備工場、FTECコーポレーションが、主に特殊整備にカテゴライズされる業務内容を紹介するブログです。

ダッジ ダコタのシャシーリフレッシュ 1/3

ダッジ ダコタ (第2世代 1997-2004年式)です。
シャシーリフレッシュで入庫しました。

パーキングスピードでステアリングを操作すると、前サスペンションまわりから異音を発します。

Dodge Dakota Regular Cab 1997-2004

積算走行距離10万マイル(16万キロ)を目前にして、まだまだ乗りたいとのオーナーのご要望をうけ大胆なシャシーリフレッシュを敢行。ベアリングやボールジョイント、コントロールアームのブッシュ等すべての消耗部品を交換したうえで、ロワードの方法を根本的に見直します

はじめに、ダッジ ダコタ とはいかなるモデルか、おさらいしましょう。


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北米でダッジのトラックといえば、筆頭に挙げられるのはRAM
ダコタはその縮小版といえるモデルで、南米ブラジルでも生産されました。
RAM トラックの巨体は、北米以外の仕向地にはフィットしなかったのでしょう。



車体はRAMより小さいものの、エンジンは小さくありません。
直列4気筒2,500㏄からV型8気筒5,900㏄まで、8種類のエンジンがありました。

ガソリンとディーゼル、4WDとRWD、キャビンとホイールベースが3種類。
用途と嗜好によって、多種多様な組み合わせを選択できたのです。

なかでもV8エンジン搭載車は、「ストリートスポーツトラック」という、北米特有のニッチ市場には欠かせない存在。ミッドサイズのボディにフルサイズのエンジンを搭載するダッジ ダコタのコンセプトは、ピックアップトラックに造詣が深い人の心には、今なお鮮明に焼き付いています。


今回FTECに入庫したダコタは、V8ガソリンエンジンでリヤ駆動(RWD)。
しかも、いちばん軽くて小さいレギュラーキャビン仕様。
車高を低くセットして、本格的なスポーツトラックを目指します。

冒頭で触れた通り、現車のサスペンションは改造以前に整備が不可欠
タイヤ側から手で揺さぶると、あちこちの関節にガタが生じていることがわかります。


ダブルウイッシュボーンサスペンションの定期点検個所のうち比較的わかりやすいアッパーボールジョイントにこれほどのガタがあるのに放置されていた。ということは、その他の部分も当然整備されていないと見るのが妥当です。

短いコイルスプリングで限界までロワードされていたため、バンプラバーも消えてなくなっています。タイロッドエンドもスタビライザーリンクも同様。ひとことでいうと、すべてがガタガタ


サスペンションの構成部品をすべて取外して、痛んだ部品を交換します。


タイロッドエンドのアウターボールジョイント。交換。


底付きしたショックアブソーバーで突き上げたのでしょう。
車体側のマウントが変形しています。ここは鈑金修理で対処。


錆びたボルトを慎重に抜いて、再使用に耐えるか点検。


サスペンションが取付けられる車体側のフレームは、点検修繕の後に清掃してシャシーブラックを施工します。組立ての後では施工できない箇所も多いので、機を逃さずに実施します。


上側ショックアブソーバーのマウント部以外に、車体側の不具合はありません。


車体から降ろした部品を俯瞰。

・ アッパーアーム
・ ロアアーム
・ ナックルアーム
・ スタビライザーリンク
・ コイルスプリング(社外品ショート)
・ ショックアブソーバー(社外品ショート)
・ ハブベアリング
・ ブレーキディスクローター

このうち、ロアアームとスプリングとショック、ブレーキローターは廃棄処分。
その他の部品は、修理を施して再使用します。


フロントアッパーアームの修理を始めましょう。
現状、アウターボールジョイントにガタがあり、インナーブッシュは崩れてしまっています。
ダッジに限らず、大抵のアメ車のメーカーはアームアッセンブリーでしか供給しません。

ダブルウイッシュボーンサスペンションのアッパーコントロールアームは、

異常な入力を変形して逃がす

役割も担っています。

FTECでは、消耗部品であるブッシュとボールジョイントを組替えてアーム自体は再使用しますが、作業中に僅かでも変形を発見したら即アッセンブリー交換に切り替える覚悟で整備にあたっています。







アッパーアームは、走行時の負荷には十分耐えられるように設計されています。しかし、圧入されているブッシュを不適切な方法で抜こうとすれば、簡単に変形してスクラップになってしまいます

ブッシュの交換には必ず専用の工具を使い、ボールジョイントの交換はリベットを研削して軽量なハンマーを使い、どちらも可能な限り優しく取外します。

繰り返しますが、シートメタルの鈑金細工なので絶対に強打してはなりません




ナックルスピンドルとアッパーアーム。
点検後に清掃して、防錆塗装を施工。






錆びたスピンドルを、組付けに相応しい状態に修理。





アッパーアームのインナーシャフト(= ピボットバー)を、組付けに相応しい状態に修理。




再使用部品の準備が整ったら、交換部品を組付けていきます。
まずはアッパーアームのインナーブッシュから。


一つ目のブッシュは、正しく段取りさえすれば油圧プレスで圧入できます。


ピボットバーを通してからブッシュを圧入するので、二つ目のブッシュは油圧プレスではなく専用工具を使用します。この工程にもアッパーアーム変形のリスクがあるので、慎重に。


アウターボールジョイントは御馴染みのMOOG社製。
リベットのかわりに付属のハイテンボルトで取付けます。 


最終的に3インチ(= 76.2ミリ)車高を下げる方針なので、その状態におけるアッパーアームの角度をシミュレートして最善の方法で取付けます。


すべての消耗部品が交換され、組付けを待つばかりとなったアッパーアーム。
ピボットバーのフリクションが左右で揃っていることを確認しましょう。


次回の記事では、ダブルウイッシュボーンサスペンションのロアアーム側に着手。
このダコタだけの特別な改善策を、詳細な写真と動画を用いてご紹介します。

ハブとブレーキ、スタビライザー等の関連箇所を含め、フロントサスペンション全体の組立完了までを盛り込む予定ですので、どうぞお楽しみに!