スズキ ワゴンR (MC22S) です。
ATミッション作動不良のため入庫しました。
このクルマは、K6Aエンジンに4ATを組み合わせた初期の車輌です。
始動直後にトルクが伝達されず、前進、後退ともにできません。
動けない状態で暖機を進めると、弱々しいクリープが発生して辛うじて動かせる。
一旦走り出してしまえば、エンジンを止めるまでは普通に走れてしまう、という状態。
当初は、制御系統の電気的不良かもしれない、とも考えました。
しかし、ATミッションのオイルパンを取り外して見たところ、ATFに大量の切削粉が混入しているのを確認。ミッション交換は必須と判明しました。
MC系ワゴンRの4速オートマチックトランスミッションは、何度かリコール対象になっています。国土交通省のサイトで、このクルマに関する情報も閲覧できます。
メーカーが、最初からあった弱点を2度にわたって改修したことがわかります。
今回入庫したクルマは、最新の対策を受けていることを確認できました。
プラネタリーギヤセットの破損も頻発したのでしょう。
潤滑系統の対策を追加し、最終的にギヤセットそのものを対策品に更新しています。
また、スズキは該当する4ATについて、保証期間の延長をしています。
初度登録後9年以内、走行距離10万キロまでの車輌について、無償交換するとのこと。
対象車種は、ワゴンRのほか、アルト、アルトラパン、Kei、MRワゴン、ツイン、ワゴンRプラス、ワゴンRソリオ。車体番号はこちらのリンク先にある通り。
今回のクルマは、走行距離10万キロには及ばないものの、すでに登録後9年を経過しているため保証対象外と判明。ATミッションアッセンブリーの価格は、同年式の故障していないクルマ一台分の価格に匹敵します。
修理するか別の車に乗り換えるか。
- 同等クラスの新車に、魅力的なクルマが無い
- 気に入ったデザインの某イタリア車は予算的に無理
ということで、今のクルマを修理することに決定。
スズキの軽を修理する場合、選択肢は
- 新品のミッション (20002-84F50-000)
- メーカーリビルド品 (20002-84F50-111)
- ショップリビルド品
- 中古のミッション
の、いずれかに載せ替えるしかありません。
4.が一番安いのは明白ですが、いつまで動くかわからないので除外。
3.は二番目に安い。ただし対策後のプラネタリーギヤセットを組んであることを条件としたい。
スズキのお客様相談室に、対策後のプラネタリーギヤセットが組んであることを示す外観上の指標はないのか?と確認したところ、「無いです」との回答。山下さんありがとう。
つまり、よほど信頼のおけるリビルダーに供給してもらわなければ、綺麗なだけで脆弱なミッションを再び搭載してしまう破目になりかねない、ということですね。
幸いなことに、今回は2.の品番に該当するミッションを直に取り寄せることができたため、これを採用することに決定!
トルクコンバーターも水冷オイルクーラーも付属しています。
ATFクーラーが別体式ではないので、ライン洗浄の手間が要らないのは助かります。
センサー類は降ろしたミッションから移植。これはスピードセンサー。
ここにも金属粉が大量に付着しています。
コンバーターとオイルポンプの嵌合を確認。
ノックセンサーからのオイル漏れを発見。ついでに交換しました。
スズキ純正ATF3317を給油して、修理完了です。
FF大衆車のミッション交換は、エンジンやサスペンション脱着をともなうこともしばしばです。
このクルマはミッションだけを抜き取ることができますが、それでも付帯作業としてスタビライザーやボールジョイントは取り外します。
予算にゆとりがなくても、外したついでに作業できる箇所は整備してしまった方が得でしょう。今回の件に限って言えば、新品ミッションとの差額で全部のタイヤを新調しても、お釣りがきます。
FTECは、故障個所だけをパッチワーク的に治すより、予後好調となるよう配慮して修理したいと考えています。対策済みのリビルドミッションに載せ替えたからには、当分別のクルマに代替えはしないでしょうからね!
【追記】
見積りや作業の依頼には、フォームをご利用ください。
・ FTECへのお問い合わせ → http://ftecautorepair.jp/inquiry.html
電話で入庫歴のないクルマの見積りをすることは、たいていの場合無意味です。
時間節約のためにも、ご理解くださいますようお願いいたします。