リヤバンパーとマフラーの改造で入庫しました。
F10型 523dは、ブルーパフォーマンスのディーゼルエンジンに8速ATと四輪操舵システムを備えた、全長4,915mmの4ドアセダン。2,970mmという長大なホイールベースを持ちながら、パーキングスピードではステアリングをロックまで回すことがほとんどありません。
今回のモディファイは、左2本出しの純正マフラーを左右4本出しに改め、リヤバンパーの加工ついでに社外品のディフューザーを装着するという内容です。
ディフューザーは当初、日本製のものを装着する予定だったのですが、現物をカット済みの純正バンパーに仮組みする段階でLCI(= Life Cycle Impuls = Face Lift = M/C、マイナーチェンジ)後の新形状には不適合であることが判明し、急遽ドイツのACシュニッツァー製に変更することになりました。
左右4本出しのマフラーは、幅広いラインナップを誇りフィニッシャーのデザインを選択できる、オーストリアのレムス製を選択。阿部商会のサイトによると、こちらもフロア下のレイアウトと干渉して不適合となる可能性が指摘されています(http://abeshokai.jp/remus/l_bmw.html)が、ここの加工はどうとでもできるので構わず採用します。
なお、今回不適合が判明した日本製ディフューザーのメーカー公式サイトには本件決着後に訂正が加えられ、現在は「前期のみ適合」と明記されています。
ディフューザーもマフラーも、装着には純正バンパーのカット加工が必要です。
まずマフラーの改造を先に行い、次にディフューザーを取付け、最後にフィニッシャーの位置を調整するという工程で作業します。
入庫時のリヤビュー。
そつなくまとまっているとは思いますが、とてもおとなしい印象ですね。
フロア形状と補機類のレイアウトを確認し、レムス製マフラーを仮組みします。
レムスのテンプレートを利用して、左右対称にカットラインを入れます。
純正リヤバンパーの下端には、裏側にPDCとTLSOの補機類が配置されています。
これは後の工程で位置を変更して対処。
インテグレーテッド・アダプティブ・ステアリング(四輪操舵システム)の架台となる、リヤサスペンションの巨大なアルミ製サポートメンバー。ディーゼルエンジンの振動を減衰させるマスダンパーをともなって、エキゾーストパイプが通されています。
左側の開口部。
ここを見なくてもテンプレートを使えば右側に対称形が写し取れる、と思ったら大間違い!
テンプレートの要所要所が現物と合いません。
このままカットしたら絶対に問題が出そうです。
そこで、テンプレートを表裏逆にして、既にある左側の形状を現車から写し取ることにします。ディフューザー取付の際にはカットしなおす部分とはいえ、マフラーを加工して左右対称に仕上げるためには、正確な形状のバンパーに合わせるのが一番合理的ですから。
レムスのテンプレートを利用して、バンパーのカットラインを左右対称に入れました。
次に、仮組みしたレムス製マフラーの左側ピースに合わせて純正マフラーを切断。
ハンガーとマウントを交換。右側ピース用のものは新設。
これらはレムス製マフラーの付属品です。
ディフューザー取付時のカットラインを再確認。
この段階でこれより大きく切ってしまったら収拾がつかなくなってしまうので慎重に。
レムス製のマフラーに治具を挿入し、右側へ延びるパイプの曲りを調整します。
本来はハンガーとジョイントの遊びの範囲内でレムス製の部分全体を調整するのですが、そうするとベストの位置にある左側の出口位置を妥協することになるうえ、インテグレーテッド・アダプティブ・ステアリングのラックとのクリアランスが狭くなりすぎます。ディーゼルエンジンの排気はガソリンエンジンのそれよりも温度が低いとはいえ、マフラーのモディファイが遠因となって標準装備の寿命が短くなっては元も子もありません。
床下を這うパイプをなるべく並行かつ水平に保つことは、出口の位置や角度を正確な対称形に調整することと同じくらい大切だというのがFTECの認識です。
拡管によって肉厚が薄くなっている部分を炙って角度を振り、テールピースの入り口で戻します。そうすることで、フィニッシャーの位置調整にも有利な条件を整えられます。
フィニッシャーの位置と角度は、左側を基準に右側を合わせる方針を一貫します。
左右出しのマフラーを装着した経験のある人なら心当たりがあるはずですが、両方同時にいじると大抵まとまらなくなってしまいます。
納得の位置と角度に、フィニッシャーを揃えることができました。
純正バンパー右側を、左側と対称にカットしてレムス製4テールマフラーを装着した姿。
この仕様も、なかなか格好いいですね。
続いて、ディフューザー装着のためのバンパー加工に着手します。
PDCとTLSOのモジュールを、ブラケットごと上方に移設します。
冒頭で述べた通り、ディフューザーは都合2種類を仮合わせすることになりました。
青いマスキング上方のラインがLCIの前後で10mmほど違い、旧型のリヤバンパーに合わせて製作されたディフューザーではこのラインが隠れません。
LCI後のF10用リヤバンパーは、このマフラーまわりの縁取りが大きくなる他、リフレクターまわりにメッキモールが追加され、4つのパークディスタンスコントロールのセンサー位置が左右に広がります。
新旧を並べない限り気付かないような、それでいて多岐にわたる変更で、エアロパーツのメーカーがBMWに部品番号を照会してはじめて不適合が判明した、という非常事態でした。
事態を受けて、オーナーが次に選んだディフューザーがACシュニッツァー製です。
実はこちらも、LCI前の旧型バンパーでしかフィッティングの確認が取れていない部品。純正バンパーとフィットするラインでLCI後の新型バンパーのラインをカバーできることを入念に確かめてから発注し、装着の準備に取りかかります。
▲ ACシュニッツァー製 |
▲ カタログから引用 |
ACシュニッツァーのカタログには、ボディ同色に仕上げた写真が載っています。ディフューザー以外のエアロパーツもフルキットで装着するなら、それがベストかもしれません。
今回は4テールマフラーとディフューザーのみの装着なので、過剰な主張を抑える意図で全体をマットブラックに塗装します。
▲ 塗り分け(中段)の検討 |
かくして、今回のモディファイは完成に至りました。
・ REMUS製 4テールエキゾースト
・ ACシュニッツァー製 リヤアンダーディフューザー
ディフューザーは、マットブラックの塗装仕上げ。
純正バンパーカット加工+レムス4テールマフラー装着状態と、そこにマットブラック塗装仕上げのACシュニッツァー製ディフューザーを追加装着した状態の比較。
BMW 523d ノーマルのリヤビューと、モディファイ後のリヤビューの比較。
印象の差は、歴然としています。
前世代の感覚では7シリーズと見紛うばかりの巨艦となったF10に、5シリーズならではの軽快感が表現できたと思うのですが、皆様の評価はいかがでしょうか?
古今、BMWのイメージは、スポーティなセダンが牽引してきました。
現行Mスポーツの外観は見ようによってはこの仕様よりも派手ですし、M5の過激さはいつの時代も抜群の存在感を放っています。
エアロパーツの類は、勢いにまかせてやり過ぎると子供っぽい印象になりかねないので、その選択に当たっては抑制を効かせた判断を心掛けることが成功への早道だと思います。
地味なLCIの影響に驚かされながらも、若々しいリヤビューを手に入れたBMW F10。
オーナーと歩むこれからの長い道程が、いつまでも安全快適でありますように。
今回のおまけ動画は、F10系 BMW5シリーズのデビュー当時のプロモーションビデオ。
BMWがモデル末期までこのイメージを堅守したことは、群雄割拠のこのセグメントでF10がおさめた成功を如実に表しているといえるのではないでしょうか。