車体剛性の向上を図るために、フロア全体を補強します。
FTECのブログで過去の事例を見つけたオーナーが、自走で入庫させました。
基本構造を踏襲し、リヤ周りまで強固にして欲しいとのこと。
【過去の作業事例】FTEC WEBLOG カプチーノのフロアパネル補強
具体的には、床下の要所要所を結合する金具の製作が肝になります。
この手法は、ブレーシング(Bracing)やスティフニング(Stiffening)と呼ばれ、これらの英単語で検索すると、同種の情報を沢山入手できます。
事前の打ち合わせで確認した要点は、脱着可能な構造にすることと、過去の製作によって獲得した改善策をもれなく施すことなどです。
カプチーノの車体は、このような構造になっています。
いわゆるオープンカーの場合、キャビンスペースはサイドシルとフロアトンネルが剛性の要になります。スズキも当然承知していて、サイドシルは巨大な断面積をもつ袋状にし、フロアトンネルはトランスミッションとマフラーが縦に収まるほど高め、下面をアルミパネルで閉じることによって剛性を確保しています。
前後のダブルウィッシュボーンサスペンションは、それぞれ強固なメンバーに組まれてモノコックボディにボルト止めされます。カプチーノのボディを補強するならこれらの特徴を活かした構造にすることが肝要であり、オープンエアモータリングの快感を損なわずにできる方法としては、床下の補強が最適だとFTECコーポレーションは考えます。
現車を見ていきましょう。
前サスペンションメンバーは、後方が開いた形状でモノコックボディに結合されています。ロアアーム前方の連結部中央とメンバー後方の3点を補強材に含めることで、補強した部分と元来強固な部分との境界線に応力が集中することを防ぎます。
前ロアアーム前方を連結する純正メンバー。 |
前メンバー後方の結合部。 |
後サスペンションメンバーも、前と同様にモノコックボディと結合する側が開いた形状になっています。ここの上方には屋根を格納しなければならないうえ、燃料タンクも収めねばならないので空間の奪い合いが厳しく、補強は床面だけが頼りです。
以上を踏まえ、製作する補強の概念図を描きます。
赤色の線で描いた部分が過去に製作した補強、橙色の部分が今回追加する補強です。
純正のフロアトンネル下面がパネルで閉じられていることは先述した通りです。
浮錆を落として地金に防錆処理をし、クロメートメッキが施されたスチールのナットリベットを取付けます。
ここの2本は、フロアトンネル下を留めるその他の10本より小径のM6スクリュー。裏側に当板をできない構造なので、他の10本と同じM8スクリューは過剰という判断です。
過去に製作した経験を活かして、最前部の構造を見直します。
概念図の構造には、エンジンオイルドレンコックの真下を補強材が通るのため、オイル交換のたびに古いオイルが付着する問題がありました。
左右に伸びる補強材をクロスさせることによって解決できると判断して採用。
マスキングテープによる検討。 |
オイルエレメント交換にも都合が良さそう。 |
コンセプトが定まったところで、製作に取り掛かります。
主な材料は、SS400の等辺山形鋼。どこにでもあるL形のアングルですね。それと、19mmの角パイプを使用して溶接で組上げます。
不等辺の方が好都合な箇所がいくつかあるのですが、ワンオフものは少々手間をかけても製作した方が合理的です。
不等辺の材料を溶接で製作する様子。
これらの材料は、リヤメンバー前方の結合部に使用します。
お気付きの通り、この補強材は、材料も工具もホームセンターで揃うもので製作できます。
この溶接がちょっとハードル高いな、という方は、もっと大きいL形のアングルを買って一辺を短く切れば良いでしょう。
車体と補強材の結合部に使用する部品を製作し、それぞれを溶接で結んでいく。やるべきことは明白です。中央部を一番強固にして前後にデクレッシェンドしていく、というイメージで作業にあたることが成功の鍵だと、FTECコーポレーションは考えます。
次回は製作の模様を中心に、完成までを記事にします。