ヘッドライト点灯の条件を変更しました。
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キャデラック エルドラドは、1952年から2002年までの50年間、北米市場に君臨したパーソナルラグジュアリーカーの代名詞です。現車は、1992年から2002年までの10年間に生産された最後のエルドラドであり、第12世代モデルにあたります。
エンジンはオールアルミニウムのノーススターL37、4.6リッターV8 DOHC32バルブ。300馬力のエンジンを横向きに搭載して前輪を駆動するプラットフォームは、一世を風靡した4ドアセダン STS(=セヴィル ツーリングセダン)と、多くの部分で共通です。
このエルドラドは、1997年のアップグレードによってインテグレーテッドシャシーコントロールシステムをはじめとする新機能で満艦飾の年式です。故に、暗くなると自動でヘッドライトを点灯させる程度の機能は、最初から備わっています。
では、これを改造する理由は何でしょうか?
▲ メインライトスイッチ |
実は、トワイライトセンチネルはライトの点灯より消灯に強く関与する機能なのです。真っ暗な駐車場にクルマを停めて、降りたところを襲われないように、最短で数秒から最長で3分間、ライトを点灯状態に維持できます。ライトが点灯している間は、他の乗員の気配を無人の車内に残すことができるので、玄関先で待ち伏せしていた暴漢から襲撃の機会を奪うことにも繋がるだろう、という設計思想です。
消灯の制御はこのままで結構ですが、点灯の制御には不満が残ります。いちばんの問題点は、暗さを検知してから点灯するまでのタイムラグ。オーナーズマニュアルによると
「5秒から15秒の遅れを設けている」
ことが分かります。
「暗いトンネルや駐車場内を走行するときなど、ヘッドライトを直ちに点灯したい場合には、メインライトスイッチを手動で操作してください」とも書いてありますね。
▲ オーナーズマニュアル(抜粋) |
大陸の地平線に沈みゆく夕日を眺めながらフリーウェイを走るのであれば気にならないのでしょうが、日本のようにトンネルや陸橋だらけの高速道路を走るとなると、「もっと素早く点灯して欲しい」と思うのは当然の成り行きです。
そこで今回は、汎用のオートライトキットを利用し、トワイライトセンチネルの機能を温存したまま、今風の「暗くなった瞬間に点灯する」ヘッドライトコントロールを実現します。
・徐々に暗くなるとスモール(クリアランス)→ ヘッドライトの順に点灯する
・徐々に明るくなるとヘッドライト →スモールの順に消灯する
・急に暗くなると、スモールとヘッドライトが同時に点灯する
・ヘッドライトが点灯する明るさを4段階から選択できる
・純正ライトスイッチの手動操作を優先する
・暗い場所で全ライトを消灯できる
他に、オートライトによる点灯をイグニッションOFFで強制的に消灯する、ライト消し忘れ防止機能も備わっています。つまり、この条件でトワイライトセンチネルを機能させられれば、所望の仕様が実現できたことになります。
▲ 汎用オートライトキットの配線図 |
純正ライトスイッチ(メインライトスイッチ)の手動操作が最優先されることは、トワイライトセンチネルも同じです。ということは、ここに介入して手動操作を再現できれば目的は達成される、ということです。
純正ライトスイッチの構造に介入の余地があるか、分解して確かめましょう。
スイッチ内にも基盤が乗っています。このスイッチでコントロールできる内容は、
・ノブの押し引きで、スモールとヘッドライトのON/OFF
・ノブを回してディマー調節、右一杯の位置でルームライト点灯
・スライダーでトワイライトセンチネルの時間調節、左一杯でOFF
・ボタンを押してフォグライトのON/OFF
この4種類。
ふたつのカプラーには基板で加工された信号が往来し、その先にあるPZM(≒ボディーコントロールモジュール)が、ライトのON/OFFを実行する仕組みです。
ということは、汎用オートライトキットを介入させるなら、スイッチ内の基板より手前の、操作パネル側に介入しなければなりません。
この基板と操作パネルの間に、配線を介入させる余地はあるか?
基盤と操作パネルを合わせると・・・
ノブの同軸線上にあるバリコンの左右にある接点(左2 右3)が、
ノブの左右の接点(左2 右3)に嵌合する構造です。この部分の導通は、ノブ側の接点のスプリングバックが保証しています。
はんだ付けされた部分に汎用オートライトキットの配線を介入させるのは、技術的に不可能ではありませんが、耐久性の面でリスクが高そうです。
手動操作で物理的に動く部分との距離が近いうえ、基盤も僅かながら揺動しています。安全に配線を取り出して汎用オートライトキットと接続するためには、純正ライトスイッチ側の加工箇所が多すぎるきらいもある。はんだにクラックが入れば走行中にライトを失うことになりかねませんし、純正ライトスイッチの故障で部品交換する際には再加工が必要になる。
以上の点検で判明した事実を総合的に勘案し、この純正ライトスイッチに汎用オートライトキットを介入させるのは得策ではない、という結論に至りました。
とはいえ、出来ませんでは済まないので、安全確実な別の方法を探すことにしましょう。
幸いなことに、現車には独立したヘッドライトリレーがあります。
このリレーとヘッドライトの間に汎用オートライトを介入させれば、ヘッドライトのON/OFFをコントロールできるのは確実です。テールライトやトワイライトセンチネルとの折り合いをどうつけるかについては、エルドラドの配線図を見ながら考えることにしましょう。