BMW Z3 ロードスターです。
エンジン冷却水漏れの修理で入庫しました。
診断にはクーリングシステムテスターを使用しますが、微量のにじみはエンジンの熱で蒸発してしまうので、目視点検にも重大な意味があります。一番ひどい所を手当てしたら、すぐまた別のところから漏れ出した、などという破目にならないために、冷却系統全体に配慮する必要があります。
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まず確認できたのは、アルミ製のコアとサイドタンクのカシメ部からの漏れ。
現物修理も技術的には可能ですが、費用対効果をはかりにかけてラジエターを交換。
BMWの部品は、良質の社外品(OEM品)が数多く出回っています。
スイッチ類も交換。後日ここが故障すると、全ての作業が台無しになる可能性があります。
この写真だと、エンジンをホイールベース内に収めようと腐心した跡がうかがえます。
6気筒モデルばかりが注目されがちですが、4気筒にも手抜きは感じられません。
ラバーホースの内側を覗いて見た図。外したら交換、は基本中の基本です。
サーモスタットをケースごと交換します。
なんだか妙なビスが見えました。(赤い矢印のビス)
これは、いわゆる「ナンバービス」。
ナンバープレートを取付けるクロメートメッキのビスです。
交換歴がある証拠をこんな形で発見すると、少々萎えた気持ちになります。
ピッチが合えば何を突っ込んでもいい、という訳ではありませんので・・・。
サーモケース下側からも、長年にわたって冷却水が漏れていたことが見て取れます。
付帯作業で取外したラバーホースは、再使用せずに交換します。
経年劣化したゴム製品を組み直して、取外す前の状態に戻すことはできません。
これでも、交換していない細かなホースから漏れだす心配を完全に拭い去ることはできませんが、整備士が手を入れることによる影響が悪い方向に作用する可能性は払拭できます。
エンジン冷却水の減少を知らせる警告灯がついたら、すぐに点検しないと危険です。
今回のように漏れのスピードが遅い場合もあれば、一気に漏れ出すこともあります。
自動車は機械ですので、自己治癒はありえません。
正しい整備による適切な処置を施して、安心と安全を確保しましょう。
おまけの映像は、Z3が新車当時のBMWによるプロモーションビデオ。
「グランド・マスター」のウォン・カーウァイ監督が製作した映画仕立てのものです。
8分強と長めですが、手の込んだ作品で一見の価値ありです。
BMWは、オーナーを喜ばせるツボを心得ていますね。