メルセデスベンツCクラス W204(2008年式) です。
サスペンションキット(社外品)の車高調整で入庫しました。
サスキットの構成は、
【前】
・ ロアシート調整式のストラットAss'y にアッパーマウントごと交換
・ スプリングの巻径を縮小して上部にヘルパースプリングを装着
【後】
・ スプリングとロアアーム間にアジャスターを装着
・ スプリングの線径を増して上側マウントは純正品を流用
・ 全長ねじ式のショックアブソーバーに交換
という、いちばん単純で伝統的なもの。
ねじ回せばいいだけじゃん、とはいかなかったので、気づいたことを記事にします。
フロントサスペンションの構図 |
現車はオーナーが購入した時には、すでに現在の仕様になっていたとのこと。
社外品の車高調が組まれてからは、だいぶ時が経っているようです。
リヤサスペンションの構図 |
ねじ式のアジャスターでスプリングシートを上下する車高調は、モータースポーツフィールドで標準化された技術がストリートにフィードバックされたものです。
とはいえ、クルマ自体が「似ても似つかぬモノである」ことからも分かるように、部品の構成や調整の要領にはストリートユースならではの発想が必要です。
・ 調整の利便性
この2点です。
ストリートユースのモノは、同じ部品を5年使うことなどざらです。
一方、1日に何度も車高を上下させることは滅多にありません。
フロントサスペンションの調整にはスプリングコンプレッサーを併用。
シートの荷重を減らせば異物の感触が得られ、破損や摩耗のリスクを軽減できます。
部品の寿命を延ばすための手間や時間は無駄ではない、というのがFTECの考え方です。
調整できない所に調整ネジが入り込むって、どういう商品なんだ (#゚Д゚)ςZ
車高調を組む人の嗜好がそうさせているのかもしれませんが、限界まで下げた状態で出荷される商品が多いようです。現車のオーナーとFTECは、「低いほどカッコいいとは思わない」点で一致しましたので、リヤサスを分解してアジャスターを取り外し、清掃・調整を施した上で組み直すことに決めました。
メルセデスベンツ純正のスプリングコンプレッサーはこの車高調の構造上使えませんので、ロアアームをボトルジャッキで固定して内側のピボットを取り外し、アジャスターとスプリングを抜き取りました。
ロアアーム内側はエキセントリックではないので、アライメントに狂いは生じません。
本来、アライメント調整はタイヤの空気圧も含めた車高調整後に行うべき作業なので、車高調整の付帯作業としてサスアームを分解することを躊躇う理由はないのです。
レバー比を計算してスプリングシートを25ミリ上げ、ショックアブソーバーのセット長を調整。結果、オーナーが理想とする車高「入庫時から35ミリアップ」を実現できました。
この2点です。
ストリートユースのモノは、同じ部品を5年使うことなどざらです。
一方、1日に何度も車高を上下させることは滅多にありません。
その違いは、車高調整の段取りにも影響します。
元来消耗品なんだから、痛んだらどんどん交換すべきなんだよ、と言っても始まりません。
何年もの間風雪に耐えなければならないストリートならではの条件を念頭に、雄ネジがスチール、雌ネジがアルミ、スプリングレートは10K/12K、そういう要素を考慮して作業手順を組むことが肝要です。
シートの荷重を減らせば異物の感触が得られ、破損や摩耗のリスクを軽減できます。
部品の寿命を延ばすための手間や時間は無駄ではない、というのがFTECの考え方です。
メルセデスベンツは10ミリ以内の車高のばらつきを誤差として許容しています。
現車の車高は左右の比較でその差5ミリ以下と、大変優秀な数値を示しました。
リヤサスペンションからは、さらに独創的な手法を要求されました。
マルチリンクのアームの奥にアジャスターが仕込んであるのですが、丁度ロアアームのくぼみに埋没する形になっていてレンチが掛けられません。
調整できない所に調整ネジが入り込むって、どういう商品なんだ (#゚Д゚)ςZ
入庫時には一番下がった状態にセットされていた車高。 |
11と5の間にアジャスター。5の穴に埋まっていて回せない。 |
車高調を組む人の嗜好がそうさせているのかもしれませんが、限界まで下げた状態で出荷される商品が多いようです。現車のオーナーとFTECは、「低いほどカッコいいとは思わない」点で一致しましたので、リヤサスを分解してアジャスターを取り外し、清掃・調整を施した上で組み直すことに決めました。
サービスホールを埋める形で取り付ける、アジャスターの固定ボルト。 |
アジャスター下面には湿った土埃が堆積しています。 |
メルセデスベンツ純正のスプリングコンプレッサーはこの車高調の構造上使えませんので、ロアアームをボトルジャッキで固定して内側のピボットを取り外し、アジャスターとスプリングを抜き取りました。
ロアアーム内側はエキセントリックではないので、アライメントに狂いは生じません。
本来、アライメント調整はタイヤの空気圧も含めた車高調整後に行うべき作業なので、車高調整の付帯作業としてサスアームを分解することを躊躇う理由はないのです。
30ミリ程上げたセット。これならアジャスターにレンチが掛けられる。 |
レバー比を計算してスプリングシートを25ミリ上げ、ショックアブソーバーのセット長を調整。結果、オーナーが理想とする車高「入庫時から35ミリアップ」を実現できました。
グラビアやカタログで見る分には低いほどカッコいいのかもしれませんが、乗り手が他人の多寡につきあうのも程々にしないと場合によっては危険です。
実際この車もスピードが出ますし、底付きしてバンプタッチしているようなサスペンションでは簡単にタイヤのグリップを失いかねません。
クルマは安全が一番、たのしいが二番。
これからも、ずっとこれで行きたいものです。
おまけの動画は、W204(セダン)とC204(クーペ)が主役のプロモーションビデオ。
映画仕立てのシナリオで、メルセデスベンツが装備できる様々な運転支援システム(= ドライバーズ・エイド)の実用性を、余すところなく伝えています。
ねじ式アジャスターを持つ車高調整式サスペンションのルーツがモータースポーツであることは、最初に述べた通りです。それゆえ、調整の度にアームをばらしたりマフラーをはずしたりなんてナンセンスだ、という意見もあるでしょう。
しかし、「ストリートにはストリートの流儀がある」と、FTECは確信しています。
ちなみに、これらのプロモーションビデオに登場するドライバーズエイドの殆どはストリート専用のデバイスであり、モータースポーツ専用のマシンに装備されてはいないということは言うまでもありません。
しかし、「ストリートにはストリートの流儀がある」と、FTECは確信しています。
ちなみに、これらのプロモーションビデオに登場するドライバーズエイドの殆どはストリート専用のデバイスであり、モータースポーツ専用のマシンに装備されてはいないということは言うまでもありません。