埼玉県狭山市の自動車整備工場、FTECコーポレーションが、主に特殊整備にカテゴライズされる業務内容を紹介するブログです。

SC430のシャシー補強

レクサス SC430(UZZ40型)平成19(2007)年式です。
走行距離は 62,000㎞。ボディ補強を含む一般整備で入庫しました。


ボディ補強の内容は、TOM'S Z382 ソアラ用 補強ブレース一式の移植です。

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一般整備の内容は、多岐に亘った項目のうちインテリジェントAFS(Adaptive Front-lighting System)の修理を、ピックアップして記事にします。AFSとは、クルマの姿勢や運転操作に応じて、ヘッドライトの照射角度を最適化する機構です。

このクルマには、走行中に「AFS OFF」が点灯する症状があります。インストルメントパネルに橙色の「AFS OFF」表示があるとき、AFSは機能を停止しています。


AFSは、クルマの姿勢や運転操作に合わせて機能します。
それらの判断要素には、

□ 車速センサ―
□ 舵角センサー
□ 車高センサー

からの情報が、含まれます。

関連が予想される領域の改造は、影響を深慮して実施しなければなりません。


はじめに、純正のシャシ下周りとTOM'S Z382用補強ブレースの状態を観察します。
打痕や腐食を観察することが、予後の見通しを立てる際に役立つからです。

現車は平成19(2007)年式なので、フロアパネルの板厚が増やされたマイナーチェンジ後のクルマです。TOM'S Z382用の補強ブレースは、2005年に行われた大規模マイナーチェンジ後のクルマにも、問題なく装着することができます。






FTECがこのブレースをSC430に装着する様子は、過去にも記事にしたことがあります。トヨタ純正部品とTOM'S Z382用の補強の違いについては、その記事で詳しく紹介しています。この点にご興味のある方は、そちらの記事をご覧くださいませ。

純正部品との違いを知れば、この浮き錆にまみれたTOM'S Z382用の補強を直してまで自分のクルマに装着する、オーナーの気持ちがわかるはずです。



過去の記事と同じように、現車もトランスミッションのベルハウジング部が補強に干渉します。加減速によるパワートレインの振れを考慮しながら、補強側に逃げ加工を施します。




このボルト穴は、リューターのような道具で拡大加工がされてしまっています。
余程寸法が狂った車体に取付けようとしたのでしょうか?

真相を知る術はないので、手持ちのリソースで最善を尽くすことに集中します。



加工部周りのカエリやバリは、研削して均します。
このままの状態では、満足な結合強度は望めません。



銀色の塗装は、新品時のものと予想できます。
元々、重防錆の塗装ではなかったのでしょう。

錆が進行する順序は、今後も同じと予想できます。

もし融雪剤を散布する地域で日常的に使うなら、地金を出してから2液のウレタン塗装によって表面を閉じます。φ4程度のサービスホールを開けて、内側に錆止めを施すことも有効です。今回は、浮き錆を落とした後でプライマーを吹き、耐熱性のシリコン塗装を施します。

袋状の内側や溶接の入隅は処理できないので、ケミカルで塗装の剥離をしてはいけません






あたりまえですが、錆を落とせばそのぶん母材が凹みます。
美観にこだわるあまりパテやプラサフを使ってしまうと、先々厄介なことになります。

部品の機能を理解して、性能を長続きさせることを最優先する。
それが、今回の処置を選択した理由です。








溶接で組まれた複雑な形状から表面の錆を除去するのは、昔風のディスクグラインダーです。日進月歩する研磨剤を何種類も試すうちに、最適なパッドを選べるようになります。








ベルハウジングと補強とのクリアランスは、調整の結果写真ようになりました。逃げ加工による歪みを考慮して、均等に締付けを行います。
取付け穴の拡大加工などは、不要です。


デファレンシャル周りとサスペンションメンバーの補強。
要所が漏れなく押さえられており、トラクションの向上が期待できます。








このふたつのナットは、座面の面積以外は同じ仕様です。
どちらを選んだほうが有利であるかは、一目瞭然です。


アッパーアーム内側ステフナーの組み付けは、マフラーと遮熱板を外して作業域を確保します。ここの組み付けは作業域が狭いうえに体勢が苦しいので、短気を起こさないように注意しましょう。
ゆるく組み付けられるように加工をしたら、補強の役目は失われてしまいます。



直視できない通し穴は、鏡を使って揃えます。
本締めは、1Gを想定したアームの角度で行います。







TOM'S Z382用の補強は、すべてがスチール製です。
合計重量は純正より増しますが、車軸より下側の負担です。

この補強は、走行性能を向上させるための要所を網羅しているにもかかわらず、大規模な車体側の分解を必要としません。総じて、後付けのボディ補強のマスターピースだとFTECは思います。




追加工を施して、アンダーカバーを装着します。
緑色のテープの部分を切除して、補強側にタップ加工を施します。








装着には、一般的なアンダーカバー用のアプセットボルトを使います。
純正より強固に固定すること、決して自然に緩まないこと。
改造に、念入り過ぎるということはありません。




レクサス SC430(UZZ40型)に TOM'S Z382用の補強ブレースを移植する記事は、以上です。これによる車体剛性の向上は、意図的に大きな走行負荷をかけなくても体感できます。

フルタップ型の車高調整式ストラットとコーナーウエイトゲージで車高を決め、1G状態ですべてのブッシュから捻じれ残留応力を取り除き、タイヤが新しいうちに4輪アライメント調整を行えば、従前と同じクルマであるとは信じられないほどの好感触が得られるでしょう。

その領域には、ブッシュやベアリングやボールジョイントが衰損したクルマでは踏み込めません。それらが健全な状態に保たれているこのクルマには、まだまだ伸びしろがあると感じました。


次回は、インテリジェントAFSの修理を記事にします。