マーキュリー クーガーXR‐7 (第4世代、1977-79年式)です。
エンジン不調の修理で入庫しました。
ミスファイアを伴いながらの苦しげなアイドリングで、正規の回転数まで下げられません。
キャブレターの調整は極端なオーバーリッチで、過熱した触媒が異臭を放っていました。
このクルマは、6.6リッター(400CID)のV8エンジンとC6ATの組み合わせ。
アイドリング回転数は、500rpm以下に調整しなければなりません。
左右のシリンダーヘッドとインテークマニフォールド間のガスケットに異常がないことを確認し、キャブレターアッセンブリーを取り外します。モータークラフトの2150は、手入れが成されていないだけで、欠品や欠損がなかったことは幸運でした。
あふれたガソリンで損なわれたガスケット。気密不良の痕跡が認められます。
・ キャブレター本体のガソリン漏れを修理
・ キャブレター~インテークマニフォールド間の気密を確保
・ EGRシステム、バキュームデリバリーの確認
これらを下準備として、油面調整からアイドリング調整を行います。
キャブレターのベースガスケットは、上下とも汎用の耐ガソリンガスケットで作製。
気密性が疑わしいバキュームデリバリーは、面倒でもすべて単体チェックを実行します。
キャブレターからシリンダーヘッドまでの気密を確保したら、点火装置系統を点検します。
このディストリビューターキャップは換気が悪く、フラックスが堆積しがちです。
消耗の程度自体は軽微なので、今回は清掃して再使用します。
なんでも新品に替えればいいという判断は、時流に逆らっている気もしますし。
ハイテンションコード(プラグコード)の金具に破損がありました。
こんな状態でも、単に「走る」というだけの期待には応えられます。アメ車の懐の深さゆえですが、粗末な整備状態で放置されているアメ車が多い原因ともいえるかもしれません。
不適切な調整によって真っ黒に湿ったスパークプラグ。
電極の損耗状態を見ると交換したばかりのようなので、これも再使用することに。
プロパントーチで炙ってクリーニングします。
インナーパーツを交換したキャブレターと、新品に交換したハイテンションコードをセット。
予算次第ですが、MSD等のより確実な点火システムや、エーデルブロック等の新しいキャブレターを採用することによって、オーバーホールより早く仕上げることができます。もっとも、インテークマニフォールドやディストリビューターも替えたくなってキリがないかもしれませんが。
いずれにせよキャブレターの調整は、周囲環境を整えた後でなければ無意味です。
完全暖気の状態でアイドル調整を施した後、チョークシステムの調整をして完了です。
クーガーに限らず70年代のアメ車は、排気量に比して小さ目のキャブレターで制御されています。圧縮比が低く初爆が得やすいので、始動性は極めて良好なのが普通です。
サービスマニュアル通りに調整して良好なアイドルが得られるのが、最高のエンジンです。
このクルマは今回の整備によって、トルクが回復し正規のアイドル回転数に下げられました。その効果はいずれ、オートマチックトランスミッションの寿命にも表れるでしょう。