埼玉県狭山市の自動車整備工場、FTECコーポレーションが、主に特殊整備にカテゴライズされる業務内容を紹介するブログです。

ブロンコのシャシ整備・4

フォード ブロンコ エディーバウアー(1994)です。
走行時の異音修理の一環として、ショックアブソーバーを交換します。



現車のショックアブソーバーは、加減速や停止時および中高速時に、サスペンションが大きくストロークすると出る打音に関連が疑われる状態。マウントブッシュが衰損し、一部の形状が失われていることを確認済みです。


現車は「ハンドリングパッケージ」なので、前後で6本のショックアブソーバーがあります。


後サスペンションはF-150等と共通ですが、ブロンコにはスタビライザーが追加されています。


アッパーマウントブッシュ、だった部品。
ここにガタがあると、ショックアブソーバーに伸縮の力が加わるたびに打音が発生します。



下側のブッシュも、硬化して一部の形状が失われています。



この写真のブッシュは、遊び量が増えてブラケットで削れ、円錐形に摩耗しています。



旧車の場合、新車の組み立てラインで装着されたショックアブソーバーがそのまま装着されているとは限りません。「同じ役割を担っているのに、形状違いのナットが混ざっている」ことがあります。

新品のボルトナットよりも現車のボルトナットを再生再使用したほうが、納まり良く長持ちすることもあると覚えておきましょう。粘り強く取り組めば、駄目なボルトナットを瞬時に見抜くスキルも身に付きます。



ナットの高さより多くボルトの先端が余っているのは、生理的に好ましくありません。
組付け前に、切って揃えましょう。


こちらはスタッドボルトですが、この大径ワッシャーは無意味です。
一般的な径の厚手のワッシャーに、変えましょう。




ギヤキャリア側のブラケットは、ワイヤーブラシ等で浮き錆を落とし、防錆黒塗装を施して組み付けに備えます。シャシ下周りの入り組んだ場所は、分解の機会を逃さず防錆塗装を施すと、機能が長持ちするうえ見た目も良くなります。



部品の穴に貫通する部分は、塗膜の厚さやフリクションが、組付けや機能を阻害するおそれがあります。マスキングして、防錆塗装の後で表面性状を調えます。グリスを塗布して部品をタイトにフィットさせれば、この部分に錆びを生じるリスクは根絶できます。



ボルトナットは、磨いてからねじ山を点検して、瑕疵が認められなければ再使用します。




今回装着するショックアブソーバーは、RANCHO製のRS9000XL
外径2-3/4インチ(≒Φ70ミリ)の大型シェルで油量を増した、ガス併用式です。

RANCHOと言えば、白いショックに赤のアクセントカラーのイメージです。
オーナーのご要望で、黒く塗装してから組み付けることに。





白いシェルの部分のみを塗り替えて、ブーツ、ブッシュ、減衰力調整ノブは赤色をキープ。同梱されていたRANCHOステッカーは、今回は貼らないことに。




ブーツにはエア抜きの処理をして、ブッシュにはシリコングリスを塗布して装着。




カラーとワッシャーは、現車から取り外したものでは寸法が合わず、使えません。
FTECの在庫品の中から、最小の遊び量で頑強に締付けられる組み合わせを選びます。



楕円形のホログラムステッカーは貼り直しが効かないので、マスキングして残しています。




タイヤを装着して接地させてしまえば、のぞき込まない限り気付かなそうです。いかにも「社外品に換えました!」という主張がない、大人っぽい外観になったのではないでしょうか。





これで、ショックアブソーバーが異音の発生原因となる可能性を、排除できました。

6本のショックアブソーバーに、それぞれ9段階の減衰力調整機能が付与されています。
前:9x2 =18段、後:9段 ということは、162種類の減衰力を試せる計算になります。



そんなに多くのセッティングを実際に試すことはないかもしれませんが、サスペンション各部の精度が高いほど細かく減衰力の差を体感できることは確かです。

異音を退治するための整備によって、徐々に関連箇所の精度が上がってきました。
次回は、後ギヤキャリアからブレーキドラム内にデフオイルが滲入する問題を解決します。


ブロンコのシャシ整備・3

フォード・ブロンコ(1994)のシャシ整備。
今回は、後デファレンシャルを点検します。

点検の主旨は、バックラッシュの確認とデフオイルの交換です。
後デフのバックラッシュは、アクセルペダルのON/OFFで生じる打音に関連があります。



現車の後アクスルコードは、#19。
ファイナルギヤレシオは3.55、ラージギヤ径は8.8インチと判ります。



この後アクスルにはドレンホールが無いので、カバーを剥がして古いオイルを排出します。







排出したデフオイルは、水分の混入による乳化が若干あるものの、焼けや金属粉などの異常は認められません。バックラッシュの量は、下の写真の状態でコンパニオンフランジを固定し、ラージギヤを前後させてダイヤルゲージで測定します。



バックラッシュ量は許容範囲内にあり、ラージギヤとピニオンの当たりにも異常は認められません。これを受けデフオイルは、純正指定の公差の中から硬めのものを選んで緩衝効果に期待することにします。




アルミダイキャスト製のデフカバーに変更します。
冷却フィンのデザインが美しい。

プレス鋼板の純正デフカバーより制音効果が高いから
・・・と言うのは、こじつけが過ぎるか。

格好いいから交換です。

このデフカバーにはブリーザ―のサービスホールがあるものの、ニップルは付属していません。手持ちのニップルを装着できるように、カバー内のバッフルプレートを外して雌ねじを切り直します。




イケールに垂直に固定して元のねじ山を削除し、ニップルの要求に合わせます。







ブリーザ―に直接デフオイルがかからないように、内側にバッフルが設けられています。その配慮は歓迎したいのですが、万一このスクリューが脱落すると、デファレンシャルギヤセットを損傷する恐れがあります。



カバー側の雌ねじを入念に脱脂して、スクリュー側にも緩み止めの対策をしてから、ロックタイトを塗布して締め付けます。デフオイルはエンジンオイルより高温になるので、アルミダイキャストのカバーはそのたびに熱膨張と収縮を繰り返します。

何年も先までの動作環境に思いを巡らせて、都度最善の対策を採ることが重要です。



カバーをアクスルに結合するボルトは、新調しなければなりません。プレス鋼板の純正カバーとアルミダイキャストのカバーとでは、ボルト周りの肉厚がまったく違うからです。



新しいカバーをアクスルに仮合わせして、ボルトに求められる長さを割り出します。アクスル側の雌ねじは止まり穴になっているので、ボルトの先端をカットして適切な長さに調整します。









装着前に、アクスルの雌ねじにタップをかけて、嵌合面を清掃します。





アクスルとアルミデフカバーの両面を脱脂してからフルードガスケットを塗布。
ボルトと同素材のワッシャーを併用して、カバーをアクスルに締め付けます。


ブリーザ―にシリコンホースを接続し、フレームの所定の位置に導きます。接地することでアクスルがフレームやボディと近づいた状態を再現し、鋭いエッジがシリコンホースに干渉しないことを確認します。もちろん、サスペンションが伸びた時にホースにテンションがかかってはいけません




アクスルに軸重を掛けた状態における位置関係で、デフカバーの見え方を確認。
のぞき込まない限り見えない部品ですが、機能美を感じさせる仕上がりです。



新たに装着したアルミダイキャスト製のデフカバーには、磁石を内蔵したドレンプラグが装備されています。デフオイルは渡河や泥濘地の踏破でもしない限り頻繁に変えるものではありませんが、今後のメンテナンスがしやすくなる改造はFTECとしても歓迎です。

次回は、6本装備しているショックアブソーバーの交換を記事にします。