フォード・ブロンコ・エディーバウアー(1994)です。
走行時の異音整備を積み重ねています。
今回から、前アクスルの修理に着手します。
初期診断(IPC)で、ナックルのボールジョイントにガタがあることが判っていました。
1994年式フォードトラック4x4の前アクスルは、DANA 44 IFS。
1994年式フォードトラック4x4の前アクスルは、DANA 44 IFS。

ここにガタを生じさせた部品を交換するには、前アクスルの広範な分解が要ります。
また、タイヤの回転に同機した異音の発生原因になり得るホイールベアリングは、ブレーキローターとクリップボルトによって結合されたハブに圧入されています。
現車には、自動ハブロック(= フリーハブ)が標準装備されています。
ハブとナックル、アクスルの構成は、以下の図の通りです。
また、タイヤの回転に同機した異音の発生原因になり得るホイールベアリングは、ブレーキローターとクリップボルトによって結合されたハブに圧入されています。
現車には、自動ハブロック(= フリーハブ)が標準装備されています。
ハブとナックル、アクスルの構成は、以下の図の通りです。

現車には「ブレーキ力に余裕がない」という事情があり、後ドラムブレーキは前回の記事で紹介した通り、既にフルオーバーホールが済んでいます。今回の前アクスル分解の機に乗じて、前ブレーキもフルオーバーホールすることに決めました。
キャリパーとパッドの取外しから、アクスルの整備を始めます。
キャリパーとパッドの取外しから、アクスルの整備を始めます。
ハブナットとリテーナーの取外し。緩み止めのピンがある方が内側のハブナット。
このナットの脱着・調整には、専用工具(SST)が必要です。
このナットの脱着・調整には、専用工具(SST)が必要です。
再使用するハブから古いローターを分離します。クリップボルトに傷がついても構わない汎用のナットをかけて、ハンマーの打撃で抜き取ります。
現車には、4輪ABSが装備されています。車輪速センサーのトーンホイールがハブの内側に圧入されているので、クリップボルトの抜き取り前にプーラーで分離しておきます。
タイロッドエンドのダストブーツは、組付け前の工程で新品に交換します。
内外ハブベアリングの交換と、オイルシールの交換。
ハブ内部のグリスは、経年劣化で石鹸状に変質しています。
ハブ内部のグリスは、経年劣化で石鹸状に変質しています。
ハブベアリングのアウターレースは、内部の清掃後に真鍮棒とハンマーで打ち抜きます。
新品のハブベアリングを組付ける前に、清掃・塗装して仕上げます。
再組付けにふさわしい状態にするという概念に、今回は防錆塗装も組入れます。
再組付けにふさわしい状態にするという概念に、今回は防錆塗装も組入れます。
次に、ハブスピンドルを整備します。
スピンドル内にも、アクスルシャフトを保持するベアリングが存在します。このベアリングには、接地荷重がかからない構造です。今回は、「回転と同期する異音」の原因を根絶する目的で、念のため交換します。
スピンドル内にも、アクスルシャフトを保持するベアリングが存在します。このベアリングには、接地荷重がかからない構造です。今回は、「回転と同期する異音」の原因を根絶する目的で、念のため交換します。
車輪速度センサー(= ABSセンサー)の先端に、削れたような痕跡があります。
もしかしたら、ハブベアリングやナックルボールジョイントの不具合により、トーンホイールなどと接触した経歴があるのかもしれません。
スチール毛のワイヤーブラシと浸透潤滑剤で、積年の汚れを落とします。
このABSセンサーのナックルからの分離は、工夫しても無駄でした。ごく薄いステンレスの筒に、ナックルに生じた錆が喰い込んでしまっているからです。
このABSセンサーのナックルからの分離は、工夫しても無駄でした。ごく薄いステンレスの筒に、ナックルに生じた錆が喰い込んでしまっているからです。
オーナーのご理解のもと、破壊して除去します。
片側のABSセンサーには、外せずに諦めた痕跡が残っていました。
ボルトの頭をナメて、タガネを打ち込んで緩めようとした古傷が残っています。
ボルトの頭をナメて、タガネを打ち込んで緩めようとした古傷が残っています。
このボルトは、頭をリューターで削除して、芯をポンチで打ち抜く方法で取外します。
皮一枚を残して上手に削れば、ポンチで打った瞬間にボルトの残滓がリング状に剥がれます。これなら、ナックル側にリューターの傷は残らず、再び錆びるリスクを軽減できます。
皮一枚を残して上手に削れば、ポンチで打った瞬間にボルトの残滓がリング状に剥がれます。これなら、ナックル側にリューターの傷は残らず、再び錆びるリスクを軽減できます。
ABSセンサーのホルダーは再使用するので、リューターとポンチによる作業によってボルトではなくなった残滓を、取り除かなければなりません。
残滓の部分をバイスに固定しホルダーにレンチをかける手法で、除去できました。
残滓の部分をバイスに固定しホルダーにレンチをかける手法で、除去できました。
同じ部分の反対側から取外した部品群。写真上から2番目のボルトが、上記の作業で取除いたボルトのあるべき姿です。この写真の部品はすべて洗浄・研磨して、点検後に再使用します。
続いて、スピンドルをナックルから取外します。鋼の機械仕上げ面同士なので強固に錆び付いているうえ、スピンドルとナックルの間に、薄板のバックプレートを挟み込んでいます。
短気を起こさず、バックプレートを痛めないよう慎重にタガネを打ち込んで分離しましょう。
短気を起こさず、バックプレートを痛めないよう慎重にタガネを打ち込んで分離しましょう。
スピンドルを分離できたら、いよいよアクスルシャフトを抜取れます。
500N・m程のトルクをかけても微動だにしなければ、プロパントーチで温めます。赤熱するまで温めると再使用する部品に悪影響が出るので、アセチレントーチは使いません。
ロアボールジョイントの周囲は袋状になっているので、このナットを緩めるために直接インパクトレンチを使えるだけの作業域を確保することは不可能です。
ロアボールジョイントの周囲は袋状になっているので、このナットを緩めるために直接インパクトレンチを使えるだけの作業域を確保することは不可能です。
キャンバーアジャスターを、アクスルの下側から見上げたところ。
スリーブ状のアジャスターの穴が、偏芯していることが解ります。このオフセットによって、現車には1度30分のネガティブキャンバーが付けられていました。
前ブレーキディスクのバックプレートを、再組付けにふさわしい状態に整えます。
33年分の歪みは、廃棄するブレーキローターを金床の代わりにしてハンマーで修正。
ナックル周辺のボルトナット共々、洗浄槽で洗います。
33年分の歪みは、廃棄するブレーキローターを金床の代わりにしてハンマーで修正。
「再組付けにふさわしい状態とは何か」については、FTECで行われているプロジェクトに限定しても、考え方に幅があります。
たとえば、このバックプレートの新品が容易に入手できるとしても、交換を提案するかどうかは、オーナーのご意向やご予算次第です。
とはいえ、「外した部品を汚れたまま再使用して欲しい」というオーナーの意向には、従うことはできません。その理由は、以下の通りです。
ナックルは鉄鋳物、スピンドルは削り出し、バックプレートはプレス加工でできています。新車を組み立てた時には、4つの嵌合面は鏡のように平滑なので、問題の生じる隙はありません。
しかし30年以上が経過してから浸透防錆潤滑剤とタガネとハンマーで分離したこれらの部品は、外部から堆積した汚れや古い塗料、内部から生じた錆によって、表面が凸凹に変わっています。
4つの嵌合面を鏡のように平滑に戻すことは不可能ですが、異物を噛み込むことによる位相の狂いを無くすことはできます。磨いてから錆止めを施せば、組付け不良は起きません。
この記事のプロジェクトでは、分解を機にできる改善はすべて施して、回復させた機能を持続させることを念頭において「再組付けにふさわしい状態」を定義しています。
次回の記事では、再使用する部品の仕上げ方について、FTECの流儀をご紹介します。

