日産グロリア(WY30型)です。
ステアリング系統の修理で入庫しました。
油圧式パワーステアリングの、ポンプとギヤボックスを結ぶ高圧ホースからPSFが漏れています。この部品は欠品製廃なので、日産から新品の供給を受けることはできません。
今回は、オーナーが持ち込んだ再生品の高圧ホースを使って修理します。
高圧ホースは、両端の金具を加工して間のラバーホースを組み替えることができます。
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パワーステアリングポンプの吐出ポート。
Oリングは健全でしたが、念のため交換。
シート面に異物の付着が無いか、指触で入念に確認します。
パワーステアリングの高圧ホースは前述の通り、両端の金具を新品のホースに加締め直すことによって、オーバーホールすることができます。この再生品は、金具が塗装されていました。
シールワッシャーの当たり面は、平滑であることが組付けの条件になります。念のため塗膜を磨き落とし、写真の状態にしてから組付けました。
PSFをリザーブタンクに給油して、エア抜きをします。
暖機が済んだら油量を調整し、オイル漏れによって汚損した領域を確認します。
アンダーカバーは取り外して修繕し、スチーム洗浄をしました。
エンジンルーム内の汚濁領域を、上下からスチーム洗浄。
アンダーカバーのほかレゾネータやファンシュラウドも修繕し、日産純正のスクリューで固定。このあたりの樹脂パーツは欠品製廃になるのが早いので、永くお乗りになられる方は機会を逃さずに入手することをお奨めします。
走行テストで、直進安定性にも、問題を抱えていることが判りました。
ステアリングリンケージを調べると、アイドラーアームのガタつきが確認できます。
日産Y30型のステアリングリンケージは、このような構成をしています。
すべてのボールジョイントを点検し、アイドラーアームの修理のみで改善は可能と判断。しかしながら、アイドラーアームAss'y は欠品製廃で新品の調達ができません。
幸い、インナーパーツの供給があると判明したので、アイドラーアームの中身を組み換えて再利用することに決めました。
再生したアイドラーアームを元通りに組付けたら、サイドスリップ量を測定してステアリングセンターを合わせます。ガタのある状態で車検を通されたクルマは、ガタがあるなりに調整されてしまっているので、再調整は必ずしなければなりません。
写真の外観を見れば一目瞭然ですが、現車はフロントの車高を下げた状態にセットされています。Y30型のサスペンションは、正規の車高から縮むとトーがアウト側に振れる設計になっています。
下げた状態における目標値は、サスペンションのばね荷重を考慮して求めるのですが、その話は長くなるのでまた別の機会に譲ります。
日産Y30型のデビューは、1983年(昭和58年)。
グロリアの名は、元々はプリンス自動車の商標です。日産は、車格が似ていたセドリックの兄弟車として、長年に亘りその名を大切にしていました。
セダンとハードトップがY31型にフルモデルチェンジした 1987年(昭和62年)以降も、バンとワゴンはY30(WY30)型のまま販売が続けられ、ハードトップがY32型にフルモデルチェンジした 1991年(平成3年)以降も、WY30型だけは継続して販売されました。
16年間に亘る生産期間に33万台ものY30型が販売され、日本から世界に輸出されていたことを想うと感慨無量です。
オーソドックスゆえに色褪せないスタイル。
今後も体現し続けてみせて頂きたいと、FTECは思います。
今後も体現し続けてみせて頂きたいと、FTECは思います。
どうかいつまでも、お元気で!