フォード エクスペディション エディーバウアー です。
「チェック サスペンション」ライト点灯のため、入庫しました。
このクルマは四輪駆動で、前後ともエアサスペンション方式。
同年式のリンカーン ナビゲーターと、共通の構造・機能を備えています。
走行条件に合わせて連続的に特性を変化させる仕組みになっており、フォードではこれを、ビーグル ダイナミック サスペンション(=VDS)と呼称しています。
車高調整の条件 |
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積載量による車高の変化を是正するほか、以下のような制御を自動的に行います。
・ イグニッションOFF →車高下げ 25ミリ
・ 後輪駆動、アクティブ4WD、4WDハイモード →基準車高
・ 4WDローモード+速度40km/h以下 →車高上げ 25ミリ
・ 4WDローモード+速度40km/h以上 →基準車高
・ 4WDローモード+イグニッションOFF →車高上げ 25ミリ維持
これらに加え、以下の信号をコントロールモジュールが演算し、独立したエアサスペンションベローズの内部圧力を調整します。
・ ブレーキペダルスイッチ
・ アクセルペダルスイッチ
・ イグニッションスイッチ
・ ステアリングセンサー(≒EVO)
・ 車速センサー
・ 車高センサー
・ トランスミッションレンジセレクター
・ トランスファーレンジセレクター
・ ドアスイッチ
・ リヤゲートスイッチ
当然ながらコントロールモジュールは、指示通りシステムが機能していることを確認するため、フィードバック制御を備えています。コンプレッサーとベローズはもちろんのこと、加圧・減圧をつかさどるソレノイドバルブや、制御に関連する他のモジュールとの交信状態を常時監視しています。
(さらなる詳細については字数の都合で割愛)
興味のある方はご一読を |
そんな複雑なエアサスペンションですが、結果得られた乗り心地が夢のように素晴らしいか?というと、実はそうでもなかったりする。これは、新車に乗るたびに感じていた事実です。
構造・機能の概要を知ればだいたい想像がつくでしょうが、修理にかかる費用は甚大。
10年落ちのクルマともなれば、別の方法はないのかと叫びたくもなります。
そもそも、この程度の乗り心地なら普通のサスペンションで実現できるんじゃないの?
ストラットマスターズ社のサイト
サンコアインダストリー社のサイト
・・・と疑問を抱く人がいれば、当然試してみる人もいるわけです。
巧くいけば、同じ発想のみんなに幸せの御裾分け。
ユーザーが多ければ独自の工夫が加わり、さら良い商品になる。
高価で洗練された商品と、粗製乱造の商品が入り乱れる。
割高な商品は、市場が自然淘汰する。
これぞ、アメリカンマーケットのパワー(笑。
「ものすごく安くてデタラメな商品が、「チープだ」という価値観のもとに淘汰されない」
というリスクは常に念頭に置かねばなりませんが、選択肢の多さには感服させられます。
そんなわけで、このクルマのエアサスは、コイルスプリング方式に変更することにしました。
キットに含まれるスプリングは、
・ 前 : 線径8.0ミリ 巻径75ミリ セット長250ミリ 巻数14 (純正トーションバー併用)
・ 後 : 線径16.1ミリ 巻径145ミリ 自由長450ミリ 巻数10
という仕様。
まず、スキャナーでシステムの圧力を解放し、エアのデリバリーチューブを取外します。
車高センサー(ライドハイトセンサー)と、そのブラケットも取り外し。
新旧 前サスペンションの比較。
ストラット風の構造ですが、前サスペンションはトーションバーを併用しているので、荷重の大部分はそちらにかかります。このコイルスプリングには、リバンプ時の足の伸びを軽くする効果が期待できます。
アッパーマウントの嵌合面にシリコンを塗布。
前サスペンションのコンバージョンが完了した状態。
写真左下、水平に伸びているのがトーションバー。
つづいて、後サスペンションに取りかかります。
純正エアサスペンションのベローズは、車体フレームに写真のようなクリップ(ダルマピン)で固定されています。タイヤが地面についていれば荷重がからない場所なので、生産が楽なように工夫したのでしょう。実際、ここの作業はとても楽です。
純正エアサスペンションのベローズ。すっかりお疲れの様子。
新旧 後サスペンションの比較。
後はこのコイルスプリングが全荷重を担います。
新たに取付けるショックアブソーバーは、モンローのセンサトラック。
純正の車体側ブラケットはボルトナットの締付によって幅が詰まっていることが多い。
傷をつけないように開いて挿入します。
後コイルスプリング装着完了の図。
コイルスプリングとショックアブソーバーの位置関係を確認。
車体側アッパーシートとの嵌合部。
見づらいので、山に乗り上げたりしないように注意。
組み上げて始動させると、チェックサスペンションライトは常時点灯の状態に。
そりゃ当然ですよね。もうエアサスじゃありませんから。
その解決方法も、商品に付属する取扱説明書に含まれています。
ポイントは、エアサス廃止の影響を他の関連箇所に波及させないこと。
ABSとパワーステアリング、エンジンのコントロールモジュールが関連していることは最初に紹介した通りです。取説が指定するヒューズとカプラー、バルブを手順に従って取外します。
具体的な手順は、下の資料をご参照ください。
新しいサスペンションでテスト走行を実施。
第一印象は、「サスペンションが楽に動いている」といったところでしょうか。
故障していた旧サスペンションは固く突っ張っている状態だったので、より顕著に改善を体感できます。
費用は、システム全体を純正新品に刷新するプランの約半額で済みました。
自動制御を廃止したデメリットは?といえば、重い荷物をラゲッジルームに積んだとき、ヘッドライトの光軸が高くなるという点でしょうか。VDSとドライバビリティを比較するならば、すべて新品で組み直されたクルマと乗り比べないとアンフェアですので、軽々には言えません。
顧客満足度に目を向ければ、答えは明白ですけどね。