埼玉県狭山市の自動車整備工場、FTECコーポレーションが、主に特殊整備にカテゴライズされる業務内容を紹介するブログです。

ダッジバンのディストリビューター整備

ダッジ RAMバン B150 (1987年式) です。
エンジン不動を修理するために入庫しました。


セルモーターは勢いよくクランキングするものの、かかる気配がありません。
オーナーに伺うと、同じ症状で購入店に出したが処置なく戻されたことがある、とのこと。
購入後半年足らずで何度もエンジンがかからなくなったら今後が不安になりますね。

アメ車は自己診断装置の先駆者なので、この年式でもスキャンツールが使えます
正当な診断によって、有効な処置を施しましょう。

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今回のケースでは、症状が出た翌日には入庫していただけたので、より正確な故障診断が期待できます。あちこちデタラメにいじくりまわされたクルマには真因とかけ離れた故障コードがたくさん入っているのが常で、入庫時に不動車だと正常に走っていたクルマが不動になる瞬間に記録した故障コード(DTC)を特定するのに手間取ります。

1987年(昭和62年)式だと、さすがにフリーズフレームの機能までは備わっていません。
また、クランキングしているうちにバッテリー上がりを起こしても診断に支障が出ます。

故障したら専用スキャナーで即診断、それがDTCスペシャリスト共通の願いです


スキャンツールによる故障診断の結果、検出されたDTCは以下の通り。

・ #13 Air injection reactor switch solenoid error
・ #18 EGR / Canister purge failure
・ #21 Distributor reference pickup error
・ #22 O2 sensor system malfunction



車室内のエンジンフードを取り外し、点火信号を点検。
1次、2次側とも出力がありません。

ピックアップコイルを単体テストし、これを故障原因と特定しました。
それにしても、くたびれたディストリビューターです。


この型のピックアップコイルは、ディストリビューターを分解しなければ交換できません。
製品の寿命をコントロールするという意味においては、合理的な設計です。
この際、オイルプレッシャー取出し口まわりのオイル漏れ修理も行うことに決めました。


現車に搭載されているエンジンは、5.2リッター(318CID) V8 OHV。
ディストリビューターの仕様によって、ピックアップコイルに種類が出ます。

シングルプレートピックアップ

デュアルプレートピックアップ

頻繁に壊れるなら、ふたつ付けておけば安心だ!という単純明快な発想。
一般整備で半端な改造は厳禁ですので、ここは素直にシングルプレートを取付けます。


ディストリビューターのシャフトは、ひょっとすると初めて分解されたのかもしれません。
もしそうだとしたら、これは26年分の汚れと摩耗ということになりますね。


シャフトとカラーを洗浄してエンドプレーを確認、専用グリスを給脂して組立てました。

下の写真はオイルプレッシャーセンサー。カシメ部からエンジンオイルが漏れています。
ディストリビューターのすぐ横なので、この周辺もついでに処置。




再組立の後は、短いクランキングで始動できるようになりました。

今回整備した箇所以外のエンジン制御系統にも年式相応の衰損はありますが、そこは商用車だけあって、補修部品が豊富です。正しい整備によって延命をはかるというエコを体現していただきたいものですね。

2039年の世界で、今年の新車を見かけることがあるだろうか。
26年前の実用車を路上に送り出し、ふとそんなことを思ったFTECでした。