ホンダZ PA1 (1999年式)です。
タイミングベルト交換とエンジン調整で入庫しました。
冷間始動時のファーストアイドルは正常。
完全暖機前の中途半端な水温で始動すると、アイドリングが低すぎる状態です。
他にも、赤信号手前でアクセルオフにするとエンジンが停止することがあるとのこと。
PA1型 ホンダZは、
・ ミッドシップ
・ 4シーター
・ 4WD
の、「軽 乗用車」です。
リヤシート下にターボエンジンを、クランクプーリーを後ろ向きにして縦に搭載。シビックの4速ATを流用してデフにビスカスカップリングを換装することでトランスファーを省略しています。
こんな特殊なパッケージは、ホンダ以外ではあり得ないのではないかと思います。
走らせると、余裕ある容量のコンバーターと過給圧高めのターボエンジンがフラットなトルクで車体を押し出してくれます。パワートレイン全体が巨大なブッシュでモノコックボディに吊るされているため、キャビンが車体から浮いているような独特の乗り味が興味深い。FFの軽以上に小回りが利くところにも好感が持てます。
低重心なうえ、重量配分も良好。 |
外観がもうちょっと洗練されていれば、持続的なニーズを掴めたのかもしれません。
結局後継車種は出ませんでしたが、こういう野心的なクルマには肩入れしたくなります。
リヤシートを前に倒してラゲッジルームの床板を外すと、エンジンが現れます。
まず最初に、スキャナーを使って水温センサーとISCのフィードバックを数値で確認。
ではさっそく、エンジンを診てみましょう。
リヤシートを前に倒してラゲッジルームの床板を外すと、エンジンが現れます。
まず最初に、スキャナーを使って水温センサーとISCのフィードバックを数値で確認。
アイドルスピードコントロールバルブを取外してバイパスポートの様子を診ます。
多量のスラッジで今にもポートが閉塞されそうです。
ピントルを清掃して点検、Oリングを取外してバイパスポート内をケミカル洗浄。
ついでにスロットルバタフライも清掃します。
インタークーラー→スロットル間のホース。 |
オーナーの名誉のために書き添えますが、このエンジンのオイル管理は良好です。
にもかかわらずブローバイガスとオイルミストによる汚損があるのは、エンジンカバー内の容積不足によるオイルセパレート不全が疑われます。タイミングベルト式のエンジンでなかったら、あるいはもっと保全が楽だったのかもしれません。
1番シリンダー(車輌後方)のTDCを出してカバーを外す。
タペットクリアランスは全気筒規定数値の範囲内に収まっています。
タイミングベルトを交換するならアイドラーやテンショナー、ウォーターポンプも同時に交換するのが当然、というのがFTECの考え方です。
今回は、
・ エンジン補機類のベルト2本
・ タペットカバーパッキン
・ プラグホールパッキン
これらもセットで交換します。
手前のエンジンマウントも外す必要があるため、リフトサポーターで保持しています。
Zと知らずにこの写真だけを見たら、きっとどの角度から撮った写真か分かりませんね。
カバー類のパッキンをすべて交換するのは、新品のベルトに水や油が付着すると部品の寿命が縮むから。その配慮がうまくなされていることを一目で確かめられるように、各カバーとも最低限の清掃をして組む。これもまた、当然のことです。
プラグホールのシール不全によって、オイルまみれになっていたスパークプラグ。
オーナーのご希望もあって、全数セットで交換。
冒頭に「パワートレイン全体をモノコックに吊り下げている」と記しました。
これは、そのマウントのひとつで、後デファレンシャルの前側を保持するもの。
このブッシュが破損したせいで走行中に大きなマスが搖動し、重く響く異音を発生していました。ホンダがここのブッシュだけでは供給していないので、ブラケットごと交換します。
組み上がったクルマは始動直後のアイドルスピードコントロールに繊細さが戻り、ストールの気配は消え失せました。また、不意に 「ゴトン、ドン」 と重い異音がすることもなくなり、当分Z特有の浮遊感を楽しめそうです。
おまけの動画は、PA1 型 ホンダZ デビュー当時のTVCMです。