埼玉県狭山市の自動車整備工場、FTECコーポレーションが、主に特殊整備にカテゴライズされる業務内容を紹介するブログです。

ホワイトレタータイヤの装着

BFグッドリッチ ラジアルTA ホワイトレタータイヤです。
日産セドリック(Y31)に装着するために、海外から取り寄せました。

日産 Y31 + BF Goodrich + RS Watanabe

60年代の流行を意識した80年代のカスタム、それを今再現させる感じです。
選んだホイールは、RSワタナベのエイトスポーク。

RSワタナベにロクマルのレタータイヤといえば、旧車改造の王道のひとつと目される組み合わせです。でも実はこれ、タイヤもホイールも滅多にないシロモノなのです。






80年代日本のカーマニア(笑)にホワイトレタータイヤといえば、60年代のアメ車、なかでもマッスルカーを連想します。映画にも度々登場する有名なタイヤは、今でもアメリカ市場に流通しています。




しかし、ビンテージタイヤとして有名すぎるモノを強引に国産車に装着すると、小振りな車体が貧相に見えて本物のマッスルカーに並ばれたら恥ずかしい目に合ってしまいそう。

ここで狙うのは、そんな背伸びした感じとは無縁のさりげないカスタム。伝統的な国産旧車の様式美を尊重しながら、日本流に解釈したアメリカンテイストを具現化することです。




選んだタイヤの銘柄は、BFグッドリッチ Radial T/A

タイヤサイズは前後で変えて、全体の抑揚を整えます。

前 : p/n : 71599   P205/60R15 90 S
後 : p/n : 71715   P215/60R15 93 S

このサイズのホワイトレタータイヤは、日本中探しても存在しませんでした。
もっとも、乗用車用のホワイトレタータイヤ自体、今の日本では相当希少な存在ですが。


タイヤはアメリカで買って輸入することに決め、ホイールの選択を始めます。

前後のサスペンションアームを静止状態の角度に固定し、純正の鉄ホイールと他車のアルミホイールを仮組みしてフェンダーとの相関を再現、それらを実測します。

現車には、貴重な純正オプション・ステンレス製のフェンダーアーチモールが装着されています。このモールとフェンダーには、一切加工を施さずに見た目を整えることが肝要です。




16インチも仮組みして印象をチェックした結果、15インチを選択。

ホイールの銘柄は、RSワタナベ エイトスポーク

type   : F8F-15
size 前 : 7.0J +36
size 後 : 7.5J +42

このホイールを塗装してからタイヤを組みます。



今回使用するホイールは、オーナーが直接RSワタナベの工場に出向いて製造ラインの途中から引き抜いて来たモノ。スポーク部の鋳肌や切削リムのバイト目など、質感を追求するために採った特別な手段には、仕上がりのさりげなさからは計り知れない心配りが張り巡らされているのです。

ご協力いただいた「ひばり工房」さんには、この場を借りて心より感謝申し上げます。

仕上げ前の素材を比較。前後でスポークの色が違う。

色見本と現品を突合せて検討。

選択した5色を現品に塗装して見え方を比較。

晴天の日、オーナーに理想の色を選択していただきました。

シャープエッジ部の仕上げが技術的なキーポイント。

サンプルの塗装を落として素材状態に戻したホイール。

タイヤを組んで、ビードを落とした状態で仕上げの塗装を施します。

スポーク部をオーナーが思い描く理想の色と質感で塗装、その上で経年劣化を防止するためリム部を含む全体を半艶のクリアでコーティング。バイト目が曇らないよう、硬化後のクリアをリム部分だけ平滑に磨き上げるという工程を踏んで、唯一無二のホイールが誕生。

バランスとエア圧力を調整してホワイトレターを保護しているブルーペイントを除去すれば、「誰もが知っている、けれど何処にも売っていないタイヤとホイール」の完成です!




・ 売れるモノしか作らないメーカー
・ 儲かるモノしか揃えないショップ
・ お得なモノしか買わないユーザー

そういう人達が日本市場の多数派であり、日本経済の主流であることはFTECも重々承知しています。不特定多数の人から称賛や羨望を集めたいという方々には、この記事の面白味は到底理解できないでしょう。

でもね、だからこそやる。あえて、確信犯の面持ちで。
FTECは、お客様の選択肢を増やすお手伝いを喜んでいたします。

「こうなったらいいな」というアイディアを、「難しいだろうな」と諦めないで。
少数派で反主流の我々と一緒に、実現させる方法を探しましょう!




およそ40ミリのローダウンを施しています。


7代目セドリックY31型のデビューは1987年(昭和62年)
この4ドアセダンは、パトカータクシーとして職業運転手の期待に応え続けながら時代の要請による数々の仕様変更を重ね、2014年(平成26年)まで27年間も生産されました

Nissan Cedric Y31 SEDAN

特別な賞賛をうけることなく静かに第一線を退く姿に、哀愁を感じるのは何故でしょうか?誰にも注意を払われなくても、追憶の風景に溶け込んでいる凸型のクルマ、それが日産セドリックなのかもしれません。

ときどきは振り返って、思い出してみてくださいね!