クライスラー300C(2005-2010)です。
ドアアウターハンドル(=エクステリアハンドル)の交換で入庫しました。
破損したハンドルを、社外品のクロームメッキパーツに交換します。
「安く」「それっぽく」見せるだけなら、純正の黒いハンドルの上に両面テープでメッキカバーを張り付ける商品がお得です。チリ(パーツ同士の隙間)は揃わないし、ドアを開閉するたびにエッジに指が触れてテープが剥がれないか不安になりますが。
ステアリングやシート、シフトノブと同じように、人間が直に触れる機能パーツには精緻な肌触りが求められます。細部の積み重ねがクルマ全体の品質感につながるので、ドレスアップをするなら隙の無いパーツを選択したほうが良い結果が得られます。
今回は、4枚すべてのドアトリムを分解し、ハンドルアッセンブリーで交換します。
ドアの内張り(=インナートリム)は、スクリューとクリップで固定されています。
ダイムラー・クライスラー時代にメルセデスベンツとの共通部品を多数用いて誕生した300Cですが、この部分の設計思想は一般的な日本車やアメ車に通じるものです。
エクステリアハンドル(= アウターハンドル)は3本のセルフロックスクリューで固定されており、その仕組みは前後共通です。この3本にアクセスするのが少々難儀で工夫が要ります。
前左ドアインナートリムを取外した様子。
インシュレータ(= ドアシール)は、ドアハンドル裏にアクセスするための最小限の領域を剥がします。ドライバー側のトリムから取り外すカプラーは、全部で5箇所。
スクリューは各ドアに2本ずつ。位置や隠し方は前後共通です。
たまたま足回りの整備と同時進行で作業することになったのですが、クルマが高い位置にあったおかげで作業姿勢が楽でした。狭く入り組んだドア内で、余計な分解を省いて目的のスクリューにアクセスするのは、様々なハンドツールを揃えていても少々手間のかかる作業です。
交換のきっかけは、矢印部分の破損でした。 |
キーシリンダーを清掃、組替え。ハンドルと共締めします。 |
アウターハンドルを固定する3本のスクリューのうち、前ドアはヒンジ側の1本、後ドアはラッチ側の2本が難関です。後ドアは、ラッチをパネルから外す作業が必須となります。
3本の固定スクリューとオペレーティングロッドが外れたら、ドアハンドルアッセンブリーを静かにドアパネルから抜き取ります。パネルを傷つけないよう注意を払い、ついでに埃も払います。
クライスラー300Cは、9年にわたるダイムラーとクライスラーの合弁事業が生み出した数少ない成功作です。デビューから10年経った現在も、乾坤一擲の野心と質実剛健の自若とが織りなす乗り味は古さを感じさせません。
今後は「アメリカとドイツのハイブリッド」という意味でも希少車になっていくでしょう。
良く整備して後世に残す価値のあるクルマだと、FTECは確信しています。
おまけの動画は、クライスラー300の新旧プロモーションビデオ。
成功した旧型の美点が新型に受け継がれづらい日本とは、だいぶ事情が違うようですね。