埼玉県狭山市の自動車整備工場、FTECコーポレーションが、主に特殊整備にカテゴライズされる業務内容を紹介するブログです。

ビューエルのスタッドボルト交換

ビューエル(Buell) M2 サイクロンです。
エキゾーストマニフォールドのスタッドボルト交換で入庫しました。

オーナーがうっかり折ってしまい、しばらく放置していたとのこと。
2輪はFTECの守備範囲外ですが、旧友の紹介ということもあってお引き受けしました。


ちなみにビューエルは、「エキゾーストヘッダー」を、正式の部品呼称と定めています。

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M2に搭載されているエンジンは、ハーレーダビッドソンXL1200の流れを汲むVツイン。
黒いサンダーストームヘッドから取回される妖艶なヘッダーパイプは、ビューエルを象徴するアイコンです。現車は排気漏れこそ起こしていないものの、クランプナットが欠けている状態。二次被害が出ないうちに、綺麗に直してしまいましょう。


リヤセクションとマフラーを分解してヘッダーパイプを取り外します。
折損しているスタッドボルトは、前バンクの上側です。


破断面を観察すると、放置されていた期間や折れた際の回転方向が分かります。


スタッドボルトの径は、5/16インチ。ナット側が24山、ヘッド側が18山です。
この細さでは、ナットを溶接する手法は採れません。


折れたスタッドボルトの突出し残量は、5ミリ弱。
抜き取りに必要なトルクを探るべく、下側のボルトにKLANNのスタッドボルトリムーバーをかけて見ましたが、まったく回る気配がありません。


ロックタイトが推奨する温度まで温めて再トライするも、結果は同じ。
この時点でドリルアウトすることに決めました。



リューターで破断面を平滑にしてからセンターを決め、慎重にドリルアウト。
正確に削孔しないと、折角のサンダーストームヘッドがゴミになってしまいます。
リコイルから専用治具が市販されていますが、今回は使用しませんでした。



スタッドボルトの残片が除去できたら、リコイルを施工します。
5/16-18のパケットを切らしていたので、大至急取り寄せました。
無理を聴いてくださったN-KITさん、ありがとうございました!


耐熱温度を確認の上、スレッドロッカーを塗布して新品スタッドボルトを植え込みます。



ヘッダークランプナットの締め付け規定トルクは、8.1~10.8 N·m
ガスケットの痩せなどで増し締めする場合でも、締めすぎには重々注意が必要です。



ほんの僅かに触れただけなので、FTECがビューエルについて語れることはありません。

ただ、レトロとモダンが同居する粗削りなデザインは、収益性一辺倒の企業風土からは誕生し得なかったものだろうと思います。

残念ながらビューエルというブランドは短命に終わってしまいましたが、彼の地における「バイカーがメーカーを動かす構図」は、依然芳しからざる経済情勢下でも確固不動の様相です。

日本の乗り手も、魅力的な新車が出るのをじっと待つだけではなく、結束してメーカーに意見具申すべきではないか?。忍耐力で景気が上向くとはもはや信じられない状況ですし。

・・・そんなことを考えつつ修理をさせていただきました。