埼玉県狭山市の自動車整備工場、FTECコーポレーションが、主に特殊整備にカテゴライズされる業務内容を紹介するブログです。

リンカーンのロアアームブッシュ交換

リンカーン ナビゲーター アルティメイト (2003-2006) です。
前サスペンションの修理で入庫しました。


前回の点検時に、ロアアームの内側に大きなガタがあることが判明。

総重量2.7トンの巨体のせいかステアリングには明確な異常が伝わってきません。しかし、足回りのガタつきはタイヤを偏摩耗させ直進安定性を損なう原因になるので、確実な整備が不可欠です。

今回は、費用が安く効果が大きい対策方法をご紹介いたします。

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まずは、ガタの程度を動画でご覧にいれましょう。


リフトアップした状態でタイヤの上下に手を掛け、交互に揺さぶっているところです。


これほどの異常でも、気づかずに乗れてしまうのがアメ車の凄さ。

フォードによる正規のサービスマニュアルによると、上下のボールジョイントに許されるガタ(遊び量)は、それぞれ最大0.2ミリと0.8ミリ。

・・・問題の箇所は、ゆうに20ミリは動いてますねΣ(゚Д゚;

部品図を調べると、このパーツは ロアアームAss'y でしか供給がない ことが判明。アルミ鍛造品で日本国内に在庫なし、見積り価格はセットで20万円超とのこと。

③ 前ロアアーム Ass'y

アメリカには、外したアームを送り返せば幾らか返金されるサービスもありますが、日本から航空便でわざわざそれをしてもメリットがありません。

ブッシュだけを交換する方法について心当たりを探してみたところ、信用できるメーカーが必要なブッシュを単品で供給しているとわかり、早速手配しました。


レイベストス シャシーズ → Raybestos




シャシーとブレーキに関するレイベストスの製品は、品質面での過去実績がピカイチです。
FTECは、純正同等パーツのサプライヤーとして、自信をもって彼らをご紹介します。



交換するパーツの準備が整ったら、ロアアームを取り外す。
乗用車とは違い、ボルトナットも造作が大きい。

六角二面幅 30ミリ

ロアアーム脱着の付帯作業として、

・ ブレーキキャリパー
・ キャリパーサポート
・ ディスクローター
・ タイロッドエンド
・ ドライブシャフトアウター

等の脱着が必要です。



アーム単体にしてから問題のブッシュを点検すると、完全に破断していることが分かります。もしこのまま放置すれば、他のラバーブッシュやボールジョイントにも悪影響が出たかもしれません。


油圧プレスを使用したブッシュの抜取りと圧入の方法は、別の記事に詳しく書いた手順とほぼ同じ。確実な段取りができていれば250㎏/cm2 以下で抜き取れることも同じです。


ボイラー配管用のキャップ(鉄鋳物)と退役したソケットのコマで古いブッシュを抜き取ります。下側にはスリットの入った汎用のドリフトをあてがい、水平の基準面を確保。


ブッシュが抜けたらアーム側のボアを点検し、内面を仕上げます。
アルミダイキャストなので深追いは禁物。削り過ぎては台無しです。



左から順に、

・ 新品のブッシュ
・ 壊れたブッシュ
・ 新品圧入用のドリフト
・ スリット入りの汎用ドリフト

新品圧入用のドリフトは、配管材料をもとにブッシュの形状に合わせて加工したものです。



専用工具でなくても、適切な段取りさえできれば正確な作業ができます。費用と時間に配慮して、臨機応変に対処することが一般整備の要諦であるとFTECは考えています。



さて、ブッシュ交換されたアームは分解と逆の手順で組付けて、アライメントをチェックすれば作業完了です。費用はメーカーのワークショップマニュアルにある正規手順の三分の一

この作業の費用対効果は現車のオーナーに判断を委ねることにして、もっと安上がりに解決できる方法をお探しの方に向け、Webで見かけた情報を付記します。




再生部品の CARid 。



中古部品の Subway Truck Parts 。


今や世界は隅々までネットで繋がっているのですから、情報を駆使してより安上がりなカーライフを楽しむのも一興でしょう。 ただし、

・ 日本に送ってくれるのか?
・ 送料はいくらかかるのか?
・ 時間はどのくらいかかるのか?
・ 部品が使い物にならなかったら?
・ 間違ったり紛失したときの責任は?

等、諸々のリスクを自己責任として受容れて、アクシデントも楽しむ心構えが必要です。






こちらの動画は、自動車雑誌による第2世代ナビゲーターの評論です。

ちょっと依怙贔屓なのでは?と思う節もありますが、北米市場における一般的な評価がよく表れているので、オーナーや将来のオーナーには見どころが多いのではないでしょうか。