リンカーン コンチネンタル マーク5のシャシー整備。
前回の記事で策定した整備メニューに合わせ、交換が確定した部品を取り寄せます。
1979年(昭和54年)式のクルマの部品というと、国産車ならメーカー問わず絶望的な補給状況ですが、アメ車の場合は潤沢な優良社外品から好みに合わせて選択することさえ可能です。
アメリカ本国からFTECに部品を送り出してくれるエージェントの手腕は素晴らしく、部品の構造と機能を理解したうえでパッキングしてくれるため、無駄な詰め物(緩衝材)をほとんど使わずに安全確実な輸入を実現してくれます。
海外からの個人輸入は、ショッピングサイトのユーザビリティ向上によって年々ハードルが低くなっています。が、リスクも低くなったと勘違いすると痛い目に合うので、利用には慎重さが必要です。
紛失や破損が起こりにくいパッキングの要点などは、やってみて初めて解かることですから。
FTECにおいても、部品到着時は即開梱して受発注ミスや輸送事故がないかを確認しています。
部品の確認が済んだら、フロント周りから着手しましょう。
まずはブレーキディスクキャリパーを取外します。
固定スクリューを抜いて、リテーニングキーとスプリングを打ち抜きます。
リンカーンのマークシリーズに限らず、フォードのミッドサイズモデルのブレーキキャリパーは、このキーセットひとつで固定される設計になっています。
ブレーキホースを車体側で切り離し、キャリパーAss'y を降ろします。
続いて、ハブベアリングを取外します。
リンカーンマークⅤのハブベアリングは、デビューした1977年当時としては分厚い30㎜のベンチレーテッドブレーキディスクローターに圧入されて、ハブスピンドルに組付けられています。
ブレーキとハブを取外されたナックルスピンドル。
錆と埃に覆われているだけで、何の問題もありません。
キャリパー側には、謎の昆虫が営巣した痕跡が(笑)
このへんは専門外なので、深く考えずにひたすら除去。
車体から降ろされた
・ ブレーキキャリパー
・ ディスクローター
・ バックプレート
・ ハブベアリング
・ ブレーキホース
の全景。
ベアリングは油圧プレスで抜き替え、キャリパーはシールキットを交換します。
・ ブレーキキャリパー
・ ディスクローター
・ バックプレート
・ ハブベアリング
・ ブレーキホース
の全景。
ベアリングは油圧プレスで抜き替え、キャリパーはシールキットを交換します。
ここにも、謎の営巣が・・・
キャリパーピストンを抜き、ボアの内側を点検します。
古いブレーキフルードに混じって大量のデブリが堆積しています。
古いブレーキフルードに混じって大量のデブリが堆積しています。
軽く磨き上げたキャリパーピストン。
腐食による虫喰いもなく、健全な状態です。もちろん再使用。
ボア側も、浮錆と油焼けを除去すれば良好な表面性状に回復させられます。
シールキット交換の手順は、高年式のキャリパーとまったく同じです。
ブレーキオーバーホールの際にFTECが特別に心がけているのは、ブレーキキャリパーの稼動部をすべて手で組付けるということ。理由は、工具を使わなければピストンをセットできないようでは後々作動不良を起こす可能性があるからです。
キャリパー、リテーナ、アンチラトルクリップ。 |
ナックルスピンドルを清掃してシャシーブラックを施工。
ついでにブレーキのバックプレートも塗装しました。ここをブルーに塗装するのは、FORDが好んで使う伝統的な手法です。このバックプレートは一枚板のプレス成型ですが、ハブセンターに走行風を導入する良い形状をしています。
清掃と点検、塗装を経て準備が整ったスピンドルに、オーバーホールが済んだブレーキとハブベアリングを組付けます。キャリパーとナックルの摺動面には最小限の専用グリスを塗布し、エア抜き後のフリクションを確かめるためにローターを手で回してみることを怠ってはなりません。
常識的な車検整備を施しながら運用すれば、次の整備は10年後かもしれません。
次回は、リヤブレーキまわりの整備をご案内いたします。
現車のリヤブレーキには、高年式のブレーキには無い機構が存在します。
フロントブレーキの約3倍の手間と時間をかけるので、どうぞお楽しみに!