キャデラック セビル(STS)の ノーススターエンジンです。
ウォーターポンプからの冷却水漏れを修理しました。
このクルマのエンジンは、まだDI化さえされていない初期仕様。
いまだ健在な理由は、よいオーナーに恵まれたという事に尽きます。
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ノーススターエンジンは、1990年代にGMが満を持してリリースしたDOHC32バルブのオールアルミニウムV8エンジンです。腰下までレースエンジンのように作り込まれており、過去と決別する強い意志が感じられる設計になっています。もっとも最初期のロットは、軸受けのメタルなど根幹的な部分に故障が頻発したため、良くない印象を持っている人も多いようですが。
ウォーターポンプは、一般的な補機類の逆側(ミッション側)でベルト駆動されます。
構造上の理由によって、ベルトとローラーは同時交換が必要です。
エンジン冷却系統全体の機能を考慮し、サーモスタットなども同時に交換します。
ひょうたん型のシールOリングは、下の写真の通り何度か仕様変更されています。
ノーススターエンジンは、日本が好景気に沸いていた頃のキャデラックに搭載されていたこともあり、FTECも連日この修理にかかりきりになっていた時期がありました。
下の写真は、最初にこの作業を行った15年前に、私が拵えたウォーターポンプレンチです。
充分な作業時間もろくな工作機械もなかった当時、ノギスとヤスリとディスクグラインダーでやりくりしながら、正しい整備をしたい一心で作った夜のことを、使うたびに鮮明に思い出させてくれる工具です。
昔話が過ぎると鬱陶しいのでこの辺でやめますが、この不格好な工具が今も手に伝えてくる「何か」は、FTECの原点にとても近い場所から来ているような気がして、なんとなく正規の工具より使う機会が多くなっているのは純然たる事実です。
キャデラックのノーススターの他、オールズモビル オーロラにもこの工具が必要です。
ちなみに、どちらの工具を使ってもエンジンの性能に差はありません。念のため。