リンカーン コンチネンタル Mk.Ⅴ (1979年、昭和54年式)です。
エンジンはフォードの6,600cc(402cid) V型8気筒 OHV。
前の記事から始まった、エンジンに補機類を組付けていく作業の続きを記事にします。
再塗装から帰ってきたバルブカバー。 |
錆と歪みでみすぼらしかったバルブカバーが、すっかり綺麗になって帰ってきました。
エミッションコントロールラベルを残して塗装を総剥離し、下地調整を経て全塗装。
クリアのトップコートを施して磨き上げると、まるでタイムスリップしてきたかのような美しい純正仕様のカバーが出現♪♪ 一気にテンションが上がります。
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せっかくなので、バルブカバーをシリンダーヘッドに締付けるボルトにも、青く染まってもらいました。これらは性能にはまったく寄与しませんが、気持ちの良さという面で充分有意義だと思います。
最初からこの姿だったかのような自然な仕上がり。 |
せっかくなので、バルブカバーをシリンダーヘッドに締付けるボルトにも、青く染まってもらいました。これらは性能にはまったく寄与しませんが、気持ちの良さという面で充分有意義だと思います。
これは、フロントカバープレートに共締めされる、タイミングインジケーターです。
ただでさえ混みいった補機類の隙間から覗きこむような指針なのに、錆びて周囲に溶け込んでいては見づらいことこの上なく、セッティングに支障をきたす恐れがあります。
かるく全面を磨いて浮錆を落とし、
脱脂してプライマーを塗布して、
近似色のブルーペイントを施しました。
観賞用ではなく機能優先のエンジンなので、セッティングが楽になるという成果を得たことで良しとします。
仮組みをしてボルトナットの位置を確認。折れたり崩れたりしたために交換したボルトについては、締付ける補機類の厚さとねじ込まれるエンジン側の深さを足した長さとボルトの首下とを比較して、オリジナルのボルトと同等に機能することを最終確認します。
ドライでクリーンな取付面を確保した上で、フロントカバープレートとウォーターポンプをエンジンに取り付けます。下方、クランクシャフト前端付近に先程塗装したタイミングインジケーターが見えています。
これは、ダンパープーリーに共締めされる、エンジン補機類ドライブベルトのプーリー。
プレス細工の溝には、数十年分の埃が堆積していました。
クランクプーリーと二次空気導入用のエアポンプが取付けられた状態。
オルタネーターやコンプレッサーを取付けるブラケット。
これらも、積年の汚れをワイヤーブラシで落とすと精悍な表情が蘇ります。
新旧ディストリビューターの比較。
純正新品と同等の良い部品が入手できたと喜んでいたのですが・・・。
素手でシャフトを回すと、「ガリっ」と嫌な手応え。
シグナルジェネレーターのローターとマグネットピックアップがクラッシュしています。
これでは最初にクランキングした瞬間にディスビの中が滅茶苦茶になってしまう!
新品だろうと保証付きだろうと、駄目なものは直すしかありません。
一度も装着しないまま分解して組み直します。
シャフト側のベアリングとカラーを点検し不具合がないことを確認。
クリアランスが最適になるようにピックアップ側の取付け部を調整して解決。
アッパーホースが接続されるウォーターネック。
たくさんのメーカーから様々な品質の部品(リプロ品)が発売されています。
今回取り寄せた品物は、鋳肌と型精度の面で評価すれば平均より上のレベル。
補機類をドライブする4本のVベルトは当然、全部新品に交換します。
エアポンプ用の非常に細いVベルトは、本国から取り寄せるには情報が少なすぎ。
排ガス規制の対策に七転八倒していた当時のエンジンは、同じ年式でも次々と仕様が変えられていきました。さらに、アメリカ国内でも州ごとに規制レベルが違ったので、現品と突き合わせて選ばないと「よく似た使えない部品」が届いてしまいます。
今回は国内調達と決め、産業用のVベルト3本を取り寄せ、その中から選択して装着。
再生されたウォーターラインの再接続を待つヒーターバルブ。
ダイヤフラムとバルブの動作を確認したうえで、ネック部分の錆を除去。
同じく、冷却水を分配するチューブにも、あとで問題を引き起こしそうな箇所があります。
こういう所は先回りしてどんどん処置してしまいます。
組み込んだ後では、同じ作業をするスペースがあるとは限りませんからね。
シリンダーヘッドとバルブカバーの接合面に残る、型ずれによる段差。
こういう箇所を見逃すと、組んだ早々オイル漏れを起こして気分が萎えます。
コルクのパッキンは一度漏れたら再交換になるので、確実な下地を作りましょう。
FTECはこの問題に対処するために、パーマテックスのRTVシーラントを使いました。
見ると触るとでは全然ちがう印象。放置すれば確実に漏れます。 |
苦行のような段取りが実を結び、完成間近の様相を呈してきた400クリーブランド。
1960年代のエンジンなら、間もなく火が入ると思って間違いないのですが。
これは大気浄化法(通称 マスキー法)に苦しみぬいた、1970年代のエンジンです。
オリジナル状態で再生するということは、その苦闘の歴史を追体験するということ。
ふたたび走り出すまでには、最後にもうひとつ山を越えねばなりません。
1979年。それは二度目のオイルショックが新しい価値観を決定づけた年。
※ つづく