BMW Z3(E36/7)です。
ヘッドライト交換で、2台同時に入庫しました。
黄ばんで曇りが生じた純正のヘッドライトを社外品に交換します。
オーナーが選んだ新しいヘッドライトは、ロービームをプロジェクター、ハイビームをマルチリフレクターで配光する構造で、光源はタイプH1のハロゲン電球という仕様です。
今回は、標準よりさらに明るくするために光源を変更します。
選択肢は、HIDとLED。
・ LED : HIDより長寿命、瞬時に最大の光量が得られる
双方の特徴を吟味し、一台にはHID、もう一台にはLEDを組むことに決定。
実際に装着して比較すると、興味深い発見がいくつかありました。
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新しいヘッドライトアッセンブリーは、FTECで過去に何台も取付けたことのある商品で、車検にも問題なくパスすることが確認できています。
HIDにせよLEDにせよ、光源を変換する場合はそれが車検対応品であることが絶対条件になります。ライトの設計がハロゲン電球使用を前提にされている以上、光源の位置に狂いが生じれば車検合格はおぼつきませんし、運転して暗いのに対向車には眩しいなどという悲惨な結果になりかねません。
最初に、ライトの取付説明書にしたがって、ライトカバーの外周に防水処理を施します。
使用するのは、パーマテックスのRTVシリコンシーラント。黄変しにくく施工がしやすいのでFTECの常備品です。
ヘッドライト交換には配線の加工が必要です。
今回取付ける社外品のライトには、
・ ハイビーム
・ ロービーム
・ クリアランス(スモール)
・ ターンシグナル(ウインカー)
のほか、BMW純正ヘッドライトには無い CCFL(=Cold Cathode Fluorescent Lamp) 式の、通称「イカリング」が付いています。これは装飾用の任意灯火なので、道路運送車両法に抵触しない範囲で点灯条件を選択できます。
新品ライトの防水グロメットを外した様子。標準装備のH1ハロゲン電球に供給される電源を変換キットの作動信号に利用することは、HIDもLEDもまったく同じです。
HIDの変換キット。バーナーの配線に防水グロメットが装備されています。
左がハロゲン電球、右がHIDバーナー。
どちらも水分・油分を極度に嫌う部品です。
新しいライトを長期間健全な状態で運用するには、防水と防塵に万全を期す必要があります。そのために使えるリソースは何でも使い、手間を惜しまない態度で作業にあたることが肝要です。
このHID変換キットは、ライト内でハロゲン球のカプラーに結線することを前提に設計されています。それが便利に機能することもありますが、このライトの場合はグロメット内の配線を減らしてトラブルの種を残さない方が得策と判断。キットに付属の配線2本は切断してグロメットから引き抜きます。
奥のグロメット、配線4本→2本に変更 |
ライトの付属品であるハロゲン電球用のグロメットを加工します。
HIDバーナー付属グロメットの内径に合わせて中央部を切除、余計な突起をトリミングしてふたつのグロメットを組み合わせます。
最後に嵌合面を液体ガスケットでシールすれば、防水・防塵対策は完了です。パーマテックスのシーラーと使い分けたのは、単純に黒色の方が見た目の収まりが良いからです。
無用となった配線穴は、裏側からシールしてあります |
CCFLの「イカリング」は、クリアランスライト(スモール)と連動させることにします。ライト側の配線に割り込ませる形でこの配線を施工。その他、Z3にこのライトを装着する場合、BMW純正ヘッドライトのカプラーを流用したターンシグナルライト(ウインカー)の延長配線を製作する必要があります。
つづいて、LED化の様子を紹介します。
クルマの年式、型式、ヘッドライトとも同じなので共通の手順は省略。
LEDの発熱量はHIDより少ないのですが、素子ではなく基盤を護るために冷却器が要るのが現状で、メーカーによっては電動ファンを内蔵しているLED変換キットさえ発売しています。このLEDバルブは、大型のアルミ製ヒートシンクを備えていることが分かります。
バルブ後部のスペースを確認。ギリギリ収まりそうですが、ヘッドライトユニットをクルマに装着したままバルブを滑り込ませること(通常の電球交換の作業手順)は不可能ですね。
というわけで、ヘッドライトユニットを車体から取外してLEDバルブを装着します。
左がLED、右がハロゲン。座金の突起が無い分遊びが大きく、LEDの装着には光源の位置ずれを起こさないために、より細かな心づかいが要ると感じました。
座金部分は別ピースになっているので、HIDと同様の防水・防塵対策が可能です。
LEDバルブに合わせてグロメットの穴径を拡大し、不要な配線穴を切除後にシールします。
LEDバルブをヘッドライトに固定した感触として、ハロゲン電球より重量が増しているにもかかわらず、標準のピンスプリングだけで固定しなければならない点に、不安を覚えました。もし、オフロード走行主体のクルマに装着するなら、ヒートシンクに近い部分を支えるステーを製作したいところです。
H1、H3、HB3/HB4、H8/H9/H11/H16、H7、H4、各LEDバルブの寸法は以下の通り。
今回装着するH1タイプのLEDバルブの寸法が、ラインナップの中でいちばん後方に長いことがわかります。そのことが、先述の不安な印象をより強くさせたのかもしれません。
下の写真は、左がH1、右がHB3/HB4のLEDバルブです。
HB3/HB4やH4など、もともとのバルブが強固にライトに固定できるものであれば、より安心してLED化できるに違いありません。
A = バルブ取付面からの距離の差 |
このLEDコンバージョンキットの消費電力は僅か20W。HIDなら少ないものでも35Wからなので、省電力は間違いなくLEDの美点です。キットの配線も他の一般的な電装品のそれより明らかに細く、軽量なものが使われています。
装着完了したHIDとLEDのコンバージョンキット。
双方とも色温度は6000Kで、HIDは55W、LEDは20W。
外観上は、点灯直後にHIDがじわりと光量を増していくのに対し、LEDはストロボのように瞬時に最大光量を発揮する点に違いを見出せます。
LED仕様 |
HID仕様 |
前方の視界はどうでしょうか。
こうして比較すると、HIDの方にこの世界における一日の長を認めざるを得ません。
[ご参考 ・ FTEC Facebook]
現時点で単純に明るさだけを比較すれば、
HIDに軍配が上がることは明白。
しかし、アイドリングストップやモーターアシストの普及によって、ヘッドライトへの省電力化と長寿命化への要求が厳しさを増していくことは確実なので、今後開発される製品の伸びしろとしてはLEDの方が上とみるのが妥当でしょう。
LEDのメーカーには、開発の手を緩めずにコンバージョンキットもブラッシュアップしてくれることを痛切に願います。
おまけの画像は、”BMW Z3”のキーワード検索で見かけた変わり種。
歴史的名車・希少車っぽい、Z3です (;つД⊂)…(゚Д゚) !?
自由奔放でいっそ清々しい!
赤いクーペはレンダリングで、現車は存在しないようです。
「Z3クーペって、こんな形だったらよかったのに」
と、ファンサイトのネタにされていました。
欲しい新車が無くなったと嘆くばかりではなく、自分たちでできる方法でメーカーに揺さぶりをかける。彼らの積極的な姿勢からは、日本の隠れエンスージアストも学ぶところが多いかもしれませんね。