埼玉県狭山市の自動車整備工場、FTECコーポレーションが、主に特殊整備にカテゴライズされる業務内容を紹介するブログです。

デュランゴのエンジン修理

ダッジ デュランゴの 5.9リッター(360CID)V8エンジンです。
新車並行輸入で日本に上陸して以来、ほとんど走行距離が伸びていません。
チェックエンジンライト点灯で入庫しました。

アイドリング回転数が髙過ぎ、P >R、N >Dシフト時のショックがひどい。
最初からこんな調子だったせいで、走行距離が少ないのでしょう。
また、オイル消費が非常に多いとのこと。

ほかのショップでエアバルブやスロットルをいじった記録がありました。
でも、症状は継続しています。



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まず、DTCスキャナーのデータストリームを使ってライブデータを観察します。

エンジンコントロールユニットは、アイドル不良を何とかしようと必死でした。
限度いっぱいまでバイパスエアを絞り、点火時期もリタードしています。

システムが正常機能しているのにアイドリングを下げられない原因は何か?

最初に疑ったのは、インテークマニフォールドガスケットの気密不良。
というか、理論的にそのくらいしかあり得ない。

ところが、実際の原因は別のところにあったのです。



この写真!

わかりますかコレ。
インマニの底のガスケットを組み損なっています!

この組付け不良は、まるで悪魔の所業です。
完成品質の検査時に、発見できなかったのでしょうか?

これ程の不良箇所が、症状が継続しているにもかかわらず今まで特定できなかった。
その理由は、このエンジンがダッジの360だったことに関わりがあります。

このエンジンのインマニは、左右バンクの中央部を完全に密閉する設計です。
フォードやGMのエンジンのように、インマニの下側に空間がない。

つまり今回の症状は、「インマニガスケットの不良箇所から外気ではなく、クランクケース内の空気を大量に吸い込んでいた」ということです。停車状態でシフトショックが現れるほどですから、オイルミストも大量にインマニ内に吸引されて、エンジンオイルを消費していたのでしょう。一方、水路は完全なので水とオイルが混ざることはなく、スロットルを開けば圧力誤差が減ってO2フィードバックの制御範囲内に収まってしまうため通常走行に支障はなかった、ということ。これですべての辻褄が合いました。

解答を見れば簡単な問題でも、盲点を突かれると解けない。
そんなときは、問題の周りをぐるぐる回って視点を変える。

いろいろ考えさせられる修理でした。