クライスラー300C (2006年式) です。
車検整備と外装のドレスアップのために入庫しました。
オールペン後の完成形態 |
入庫時のボディーカラーはストーンホワイト(PW1)。
これをマットブラックに全塗装して、イメージの刷新をはかります。
入庫時(着手前)の状態 |
もともと前後のライトとグリルは変更してあり、22インチホイールを装着していました。
これはこれで悪くないスタイルですが、少々無難過ぎる印象も受けます。
社外品のグリルのフィッティングもイマイチですし、所々補修した塗装には痛みも目立つ。
下の写真では、ドアのリフレクション(=反射)が揃っていないこともわかります。
入庫時(着手前)の状態 |
ボディーパネルのチリ(=隙間)の狂いや表面のユガミは、クルマ全体がヤレているときには気にならなくても、オールペン後に見て見ぬふりはできないものです。
「下地の手間と時間が仕上がりを大きく左右する」ことは、プロなら誰でも知っている事実。
そして、「知っていることを実践できるプロは限られている」というのもまた事実です。
オーナーがそれを知るのもこうしたプロジェクトの一環であり、事前に情報提供することはプロの仕事の一部であるとFTECは認識しています。
さて、白かったクルマを黒くする以上、完成後に粗として白い部分が見えては興醒めです。
内外装ともに、分解・脱着は広範囲に及びます。作業にあたったボディーショップ輝のスタッフは、地味な作業を根気よくやってくれました。
アルファベットの「CHRYSLER」、「300C」のエンブレムはクドいので削除。
左右フロントフェンダーの「300C」エンブレムも、もちろん削除。
前後ドアの大面積でグラデーションを見せるために、サイドモールも全部削除!
前バンパースポイラーは社外品のエアロキットに交換。
左右サイドスカートと後ハーフスポイラーも新たに取付けます。
エアロパーツをはじめとする社外パーツの選択には、ネットで集めた写真を使いました。
実際に現物を入手できる、できないは後回しにして、「これも良いな」「いや、こっちのほうが」などと言いたい放題にディスカッションするうちに、方向性が定まっていきます。
使用した写真は、テーマごとに100枚以上。
ボディーカラーが白と黒では、クロームメッキの見え方がだいぶ違います。
目障りな装飾を排し、かつ反社会的組織のそれとは一線を画すよう配慮します。
マットブラックは、ひとつ間違えると強烈な政治的メッセージを放ちますのでご用心!
粘り強く下地を作り込んで仕上がったオールペンの質感を、少しだけ紹介します。
写真で伝えきれるとは思いませんが、要所は確認できるはず。
つづいて、一般整備に着手します。
実はこのクルマ、FTECで車検整備をするのは今回が初めてです。
これまで放置されてきた要整備箇所を、緊急度の高い順に処置することに。
主な項目は、
・ タイロッドエンドの交換
・ 前ブレーキのディスクパッド、ローターの整備
・ MIL(エンジンチェックライト)点灯によるO2センサーの交換
・ 油脂類、冷却水の交換
など。
ブレーキディスクローターの摩耗状態 |
そして最後に、車高調整式サスペンションに変更。
採用したのは、前後とも全長ネジ式シェルケースのショックアブソーバーと直巻きコイルスプリングで構成されるサスペンションキット。廉価版ながら30段階の減衰力調整機構も備えており、ドレスアップ目的であれば十分すぎるくらいの品質です。
前ストラット 上:純正 下:社外 |
後ショック&コイル 右:社外 左:純正 |
前サスペンション |
後サスペンション |
一般整備を経て仕上がったクルマは、文字通り生まれ変わったかのような出来映えです。
車検を機にナンバープレートも変更したので、傍目には別のクルマに見えるはず。
プロジェクト全体を振返ると予算や工期で気を揉んだ時もありましたが、最終的にはオーナーから大満足の一言をいただきました。それこそ、クルマ屋冥利に尽きる瞬間です。
FTECは、オーナーの要望を具現化するための手間を惜しみません。
今回のプロジェクトでは、オーナーからも協力企業からも良い刺激を受けました。
「できない理由よりやれる方法を探す」
「最後まで情熱を維持してやり遂げる」
自動車を愛する人々とその意志を共有することを、FTECは常に願ってやみません。