埼玉県狭山市の自動車整備工場、FTECコーポレーションが、主に特殊整備にカテゴライズされる業務内容を紹介するブログです。

ドアミラー配線の修理

シトロエンC4 ピカソⅡ(2013-2022)です。

車検整備で、灯火装置系統の不具合を発見しました。
ドアミラーに内蔵されている、ターンシグナルライト()が機能しません。


これは保安基準不適合の状態であり、車検のためにも修理が必要です。
一般的には、ドアミラーAss'y での交換が定石となります。

しかし、新品は本国オーダーになるうえ、非常に高価です。ターンシグナルライトの他にも、アラウンドビューモニター用のカメラやブラインドスポットモニター用のインジケータ、カーテシ―ライトや防曇ヒーターなどが含まれる構造なので、ある程度高価なのは仕方が無いのですが。

希少車ゆえ、中古部品も見つかりません。


幸い、ターンシグナルライト用のLEDインジケータのみで部品の供給を受けられると判明。ウインカーリレーの開閉信号がインジケータのカプラーに届いていることを確認したうえで、購入しました。

下の図の8が、そのインジケータ。ここのカプラーには、DC12Vの点滅信号が供給されています。


ドアミラーAss'yを取外して分解。カプラーオンで一件落着!
…と、そうは問屋が卸しませんでした。新品に組み替えても機能しない!


点滅信号がカプラーに届いているのにインジケータが機能しない。
ということは、

    □ カプラーの接触不良
    □ GRD(=アース)の不良
    □ 新品の初期不良

このうちのどれかが原因です。


インジケータカプラーの端子数は2。

点滅信号を確認した配線の色は 黄/緑。
GRDの配線の色は 白/黄 です。

残念ながら、車体側ハーネスと結合する3つのカプラーに、白/黄 色の配線はありません。
ビニールテープできつく巻き細められているドアミラーのハーネスのどこかで、他の系統のGRD線と統合されている可能性が大きいと見て、絶縁テープを全部ほどいてみます。


絶縁テープを取り除く作業中に、ドアミラーハーネスの断裂を発見。
全部で5本も、ほぼ同じ位置で断裂しています。



下の写真の 白/黄 色の配線が、ターンシグナルインジケータのGRD線。
他の系統の黒色のGRD線と束ねられて、その先の線は茶色に変わっています。

これは、ドアミラーハーネスを分解しないと判らない部分です。


ドアミラーハーネスを、絶縁テープから完全に解放。
ハーネスの被覆に付着した接着剤をケミカルで除去して、切れた配線を接合します。


これらのハーネスは、被覆の柔軟性が足りず、芯線も粗く、繰返し応力に弱い物性のものです。太さは0.5sq(=AWG20)しかなく、屈曲部に用いれば断裂は起きて当然の仕様です。


とはいえ、自動車整備士としては修理するしかありません。

車検整備だけに焦点をあてるなら、ターンシグナルライトのGRD線を1本つなげば終わりです。しかし、これを見て見ぬふりを決め込める人は、整備士の中にはいないでしょう。


断裂した配線すべてを、絶縁被覆の色を頼りに接合します。

断面積が減らぬように、ハンダの量は最小になるように。
最終的に元の経路に納められるように、配慮します。



ハーネスの接合が完了したら、3つのカプラーを車体側に接続して作動テスト。
今度は、狙い通りに機能しています。


ミラー単体での動作確認が済んだら、ハーネスを元のルートに納めます。

接合した配線は当然ながら、元の配線より短くなっています。
接合した部分を屈曲させると、ハンダ割れなどの故障を誘発します。

ハーネスのゆとりを何度も確かめながら、元のルートに通せる太さにまとめていきます。


断裂した配線の接合部が、元のルート上で、かつ繰返し応力に曝されずに済む場所に納まるよう、細くきつくビニールテープで結束します。

ミラーの形状に組み上がった段階で、再度3つのカプラーを繋いで動作確認。
正常動作を確認したら、ミラーをドアパネルに組付けます。


スキャナーを接続して、故障コードを確認します。
複数個所を仮接続のままイグニッションONにしたので、多くのDTCが現れます。




すべての故障コードを記録後に消去して、再度オールシステムスキャンを行います。
今回の修理によって、LIN接続されている左ミラーカメラが回復していることを確認。
走行テストで、ブラインドスポットモニターの回復も確認できました。


ドアミラーを修理する記事は、以上です。

この修理を通じて明らかになったことは、純正配線のお粗末さに尽きます。

    □ 狭いルートを何度も直角に曲げて通す
    □ 配線は細すぎ被覆は柔軟性が足りない
    □ 多機能化によって配線の数が増えている
    □ ミラーの展開/格納で繰返し応力がかかる

どうして、このような製品が市場に出たのでしょうか。
過激なコストダウン要求が、背景にあるように思えてなりません。

車種展開(12種類)



現車のプラットフォーム「EMP2(=Efficient Modular Platform 2)」は、12種類もの車種で供用されています。この12種類の車種には、まったく用途の違う車種も含まれています。

そして、C4ピカソⅡだけに絞っても、6種類のガソリンエンジンと、10種類のディーゼルエンジン搭載車がありました。

ガソリンエンジン(6種類)

  • 1.2 PureTech 110(EB2DTS)

  • 1.2 PureTech 130(EB2DTS)

  • 1.6 VTi 120(EP6)

  • 1.6 THP 155(EP6CDT)

  • 1.6 THP 165(EP6FDT)

  • 2.0 NA 143(RFJ) ※日本市場限定、先代搭載

ディーゼルエンジン(10種類)

  • 1.6 HDi 90(DV6ATED4)

  • 1.6 e-HDi 90(DV6C)

  • 1.6 HDi 115(DV6C)

  • 1.6 e-HDi 115(DV6C)

  • 1.6 BlueHDi 100(DV6FD)

  • 1.6 BlueHDi 120(DV6FC)

  • 1.5 BlueHDi 130(DV5RC)

  • 2.0 HDi 150(DW10CTED4)

  • 2.0 BlueHDi 150(DW10FC)

  • 2.0 BlueHDi 160(DW10FCTED)


さらに、トランスミッションは8種類もあります。
繰り返しますが、これはC4 ピカソⅡだけのバリエーションです。

トランスミッション(8種類) 


これらに加えて、右ハンドルと左ハンドルのバリエーションもあります。

エンジン16種類 x ミッション8種類 x ハンドル位置2種類 = 256種類

実際には年次改良名目で逐次投入されるとはいえ、12の車種で右ハンドルと左ハンドルの商品展開がされていたのは事実です。

設計の際に空前の標準化が断行されたことは、想像に難くありません。



EMP2 プラットフォームは、PSAグループの手によって開発されました。
その組織は現在、ステランティスに改組されています。

   「過激なコストダウン要求」   
「設計責任が曖昧なモノづくり」

それらを故障要因と見做すのは、整備士の邪推でしょうか。
「モノに魂が宿る」という感覚を、忘れずにいたいですね。

C1500のエアコン修理・3/3

シボレー C1500 エクステンドキャブ(1991年式)です。

元々は、エアコンの修理で入庫しました。


新品ダッシュボードを取り寄せました

前の記事で、クーラーガスの経路にあたるすべての構成部品を交換する工程を解説しました。エンジンルーム側とキャビン側で、2回に分けて記事にしています。

この記事では、「配線」と「ダッシュボード」の修理作業を解説します。

「エアコンの修理と何の関係が…」

と思った人もいるでしょう。

写真だけでも、眺めてみてください。
配線もダッシュボードも、「今やらなければ」ときっと思えるはずです。

C1500のエアコン修理・2/3

シボレー C1500(1991年式)です。

エアコンの修理で入庫しました。

冷房の機能は完全に失われており、クーラーのシステム全体を入れ替える方針で承りました。

「クーラーのシステム全体を入れ替える」とは、「クーラーガスが流れる経路の全てを新品に替える」という意味です。35年前のクルマにこの選択肢が存在しているという事実は、アメリカの消費者が自動車市場に大きな影響力をもっていることを表しています。



前の記事では、エンジンルーム側の作業を解説しました。
この記事では、キャビン側の作業の「一部」を解説します。

C1500のエアコン修理・1/3

シボレー C1500(1991年式)です。
エアコンの修理で入庫しました。


冷房の機能は、すでに完全に失われています。
クーラーのシステム全体を入れ替える方針で、承りました。
この記事では、エンジンルーム側の作業を解説します。

現車のエンジンは、シボレーのスモールブロック(350cid、V8)L05型です。
クーラーガスが循環する経路全体を交換し、R134a仕様に変更します。

C1500のウォーターポンプ交換

シボレー C-1500(1991年式)です。
ウォーターポンプを交換します。



エアコンの整備で入庫したのですが、整備前点検でエンジンの冷却水漏れが発覚。
ベルトトレーンを刷新するメニューに、冷却水漏れの修理を織り込みます。

スペーシアの12ヶ月点検

スズキ スペーシア(MK32S)です。
12ヵ月点検とアクセサリーの取付けで、初入庫しました。

クルマ全体の状態を把握して、オーナー所望のアクセサリーを取り付けます。


オーナーの要望は、

    □ 現状販売で購入したばかり

    □ 過去の整備履歴がわからず不安

    □ ヘッドライトが暗すぎる

    □ バックカメラを追加したい

    □ ルームライトを明るくしたい

などです。

法定12ヵ月点検を優先し、アクセサリー類で総費用を調整します。

早速、見ていきましょう。

シトロエンのバッテリー交換

シトロエン C4です。
始動不良で入庫しました。

STARTを押しても、反応がありません。
セキュリティシステムは機能しており、イグニッションONまでは正常です。


オーナーの駐車場から、積載車で入庫です。
早速バッテリーチャージャーをクランプすると、電圧は12.5V。

SC430のAFS修理

レクサス SC430(UZZ40型)平成19(2007)年式です。
AFS(Adaptive Front lighting System)を修理します。


走行中に「AFS OFF」警告灯が点灯する症状があります。インストルメントパネルに橙色の「AFS OFF」表示があるとき、AFSは機能を停止しています。オーナーから提供された情報では、1時間ほど走行すると点灯状態となり、エンジンを一旦止めると消灯状態に戻るが、その後の走行では数分から数十分で再び点灯状態になる、とのこと。


AFS(アダプティブ フロントライティング システム)とは、ヘッドライトの照射軸を車速と転舵に合わせて偏向させることで、夜間の前方視界を改善するシステムの呼称です。2000年(平成12年)頃、エウレカの資金調達によって設計開発が進められ、基本仕様が決定しました。その後2003年(平成15年)には、このAFSを搭載したモデルが発売されています。