この記事は1970年代の日産車ですが、条件が合えばどんなクルマでも同じです。
なお、カーステレオのヘッドユニットはクルマの年式よりも新しいものに変えてあります。
一般的なロッド式オートアンテナの作動条件は、
1. ラジオのスイッチONに連動して伸び、伸びきった位置で止まる
2. ラジオのスイッチOFFに連動して縮み、縮みきった位置で止まる
3. ラジオON+イグニッションOFFに連動して縮み、縮みきった位置で止まる
4. 3.で待機後、次のイグニッションONに連動して伸び、伸びきった位置で止まる
といったところ。
問題は、初期のオートアンテナは人の意志で伸び縮みさせていた、ということです。
つまり、アンテナの上げ下げをコントロールする専用のスイッチが存在した、ということ。
ちょうどパワーウインドウのスイッチと同じようなものです。
一方、今のヘッドユニットのアンテナコントロールはアンテナの位置に関わらず常時12Vを供給しつづけるので、これに直接配線すると伸びきってもモーターが止まらなくなります。
ロッド式オートアンテナは、誤って折ったり内部ギヤが潰れたりして、よく壊れる部品でした。
かつては補修用の汎用部品がありましたが、 新車の多くがプリント式やショートアンテナを採用するようになったので、今の市場からは消滅しています。
次に、ボディ形状と取付位置を見比べて、流用できそうなアンテナを用意します。
アンテナ穴の外側にはめるキャップ(赤い矢印の部品)の形状が選択のポイントです。
今回は、S30系フェアレディZに、S13系シルビアのアンテナを取付けることにしました。
アンテナ穴の内側には、ボディパネルと密着させるためのグロメットがあります。
まわり止めを一旦外して自由に動くようにしてやると、防水性が向上します。
ステーはできるだけ簡単な加工で、純正の取り付け穴を利用したいところ。
その他の特別な条件として、オーナー所有のアンテナコントロールモジュールでも作動するように、汎用性を考慮した配線を新たに設計し、施工していきます。
オーナー所有のモジュールは、Y31系セドリック/グロリア用のパワーアンテナタイマー(282-3366U 05)。S13とY31の配線図を比較して、必要な作動信号を確認します。
Y31系は、ブロアム以上のグレードにアンテナが中間位置で止まる機能がありました。
配線の接続を間違えると基盤を損傷する可能性があるので、ここはあらかじめ切除。
その他の配線もできるだけ単純化して、故障の発生確率を下げていきます。
最終的に必要となる作動信号と、アンテナモジュール配線の色は以下の通り。
緑 (G) = イグニッション (IG)
青 (L) = アクセサリー (ACC)
赤/黒 (R/B) = バッテリー (B+)
黒/赤 (B/R) = アンテナコントロール (ANT)
黒 (B) = アース (GRD)
中古部品を利用する場合は、車体側のカプラー付きで取り寄せると綺麗にまとまります。
今回は、新品部品 + Y31モジュール対応のため、すべて新規に作製しました。
新たに施工した車体側の配線には、タグをつけました。
こうしておけば、将来アンテナ交換がふたたび必要になったとしても、そのとき取付ける部品の知識さえあれば、誰でも迷わずに接続することができます。
オーナーもメカニックも、永遠に変わらないとは言い切れない。
ならば後世に心配りをすることも、今クルマを託された者の義務なのではないでしょうか。
おまけの映像は、全米オープンゴルフトーナメントの開催地として名高いカリフォルニア州の「ぺブルビーチ ゴルフリンクス」における、ヒストリックカーコンクールの模様。
日本では、旧車の部品が欠品から廃番になるまでの期間が、年々短くなっています。
この先、自動車を文化遺産として後世に遺すという価値観が芽吹く日は来るのでしょうか?
「旧車」という言葉にまとわりつく貧相なイメージは、徐々に減ってきた気もしますが。
日本車の部品を輸入したり、クルマ自体が消滅したりしないようにと願うばかりです。
他車の部品を流用する場合は、加工箇所を最小限にとどめ、できるだけシンプルにまとめることが、耐久性の確保につながるとFTECは信じています。