埼玉県狭山市の自動車整備工場、FTECコーポレーションが、主に特殊整備にカテゴライズされる業務内容を紹介するブログです。

HIDコンバージョンキットの取付け

ハロゲン式のヘッドライトをHID式に変更します。

HIDコンバージョンキットは、大手ネット通販で選べますし製品レビューも豊富です。
配線の加工がまったくいらず、カプラーオンで使える商品も流通しています。


「付けて光らせる」だけなら、もはや何の工夫も要りません。
ですので、ここではHID取付け時の留意点について記事にまとめることにします。

車体側の分解について、手間を惜しまないこと
配線を、純正ハーネスの流れに沿わせること

まず肝に銘じておくのは、この二点です。

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車格や年式に関わらず、クルマのフロント周りには、安全面からの要求を満たすためにタイトな設計がなされています。ヘッドライトユニットそのものを重要な衝撃緩衝剤と見做した設計も多く、軽い接触で簡単にライトの取付け部が破損するクルマも増えています。

車外部品の取付けには、純正部品の構造と機能に敬意を払う」姿勢が欠かせません。


HIDユニット(バラスト)の安全な装着場所を決めるには、バンパーやアンダーカバー、フェンダーライナーなどは躊躇なく取外します。この方が仕上がりが美しくなることは明白ですし、綺麗に取回した配線ほど高い信頼性を長期間発揮するものです。

FTECの経験では、「できるだけバラさない」方法よりも、早く仕上がるケースが多いです。


HIDのバーナーは、ハロゲンバルブと違ってフィラメントが無いので切れない、というのが一般的な認識です。しかし、絶対ということはあり得ず、こうして5年ほどで点灯しなくなるバーナーもあります。

このバーナーは、BCM (=Body Control Module) によるオートライト機能付きの車輌に装着されていたので、セキュリティのON/OFFや日陰を通るたびに点灯と消灯をくりかえす等、点灯時間、頻度ともに多めでした。5年という歳月は、寿命と見做して良いでしょう。


近年、HID変換キットの価格が下落しているので、旧式のキットのバーナーだけを交換するなら、すべて新型に交換してしまう方がメリットがあるケースが出てきました。

この5年間でバラストは大幅に小型化され、発生するノイズも激減しています。


バラストそのものが存在しないHIDコンバージョンキットもあります。
バーナー後方の取付けスペースに余裕のあるクルマなら、それの方がスマートですね。

ただし、いくら小型化されてもバラスト一体式バーナーがハロゲンバルブより軽く仕上がるはずがないので、固定部にかかる負荷がどのくらい増えるかについては検討が必要です。


昔の、高価だった頃のHIDユニット(バラスト)。
点灯信号を入れるカプラーを、逆に挿入できてしまうというスゴい設計 (^-^;;)



新品のHIDには「空焼き」が必要、という怪しい噂を度々見聞きします。

FTECでは、初期不良がないことを確認する意味で似たような作業をしています。
配線を加工した後で初期不良を発見すると、返品交換の際に厄介なので。



ライトの明るさについて、決定的な影響力を持っているのはレンズとリフレクターです。
せっかくHID化するのなら、潜在能力を十分に引き出して見た目も良くしたい。


ぼやけたレンズの純正ライトをユニットごと交換したり・・・


向かって左 : 純正 右 : 社外

純正のヘッドライトユニットが高価な場合は、補修するのも良いでしょう。


1000番の耐水ペーパーでレンズ表面を削り始め、最終的に鏡面近くに仕上げます。



劣化したプラスチックレンズの表面からは、こんな色の老廃物がどんどん取れます。


透明感を取り戻したヘッドライトレンズ。
性能と気分が同時にあがる、気持ちの良い整備になりそうな予感がします!



こちらのヘッドライトユニットは、ガラスレンズで構成されています。
純正で施されていた黒塗装が劣化し、みすぼらしいので補修します。


劣化した塗膜はガラスレンズの上なので、スケルトンで剥離が可能。


このあと足付けし、プライマーを塗布してアクリルラッカーで仕上げます。



純正バルブの後方には、砂塵や湿気の侵入を防ぐためにグロメットがついています。
ここの加工は最小限に抑えないと、5年、10年と経つうちに後悔する破目になります。
HIDにかわる部品より、純正グロメットの方がはるかに早く入手困難になるでしょうから。






左の穴(2か所)は、内側から液体シーラントで塞いであります。

ひとつのライトユニットに、

・ ヘッドライト Hi ビーム
・ ヘッドライト Lo ビーム
・ クリアランスライト
・ フォグライト

などが組み合わされたクルマは、全部の色目を統一すると品質感が向上します
電球色の光源が混じっていると安っぽく見えがちなので、白色LEDを組込みました。

試しに、クリアランスライト(= スモール、ポジション) を点灯すると・・・

青、というか紫?
なんだよこの「チバラギ」なイメージ。

販売元のいう「白色」は、「黄色っぽいより青っぽいほうがクレームが少ない」 という公差で管理されているのでしょうか??


別のLEDを取り寄せて試します。
上の写真より、下の写真の方が好ましい色目です。



全点灯した時に、ライトレンズ全体が光に満たされると綺麗です。



同じユニットで何種類もLEDを試して気づいたこともあります。
それは、クリアランスライトなど装飾性の高い灯火には、全周に向けて平均的に光を放つように工夫されたLEDが常に最適とは限らない、ということです。


スモール点灯状態を正面から見た写真で比較してみましょう。

向かって左が、正面向き8素子、向かって右が5方向20素子。
好みは人それぞれでしょうが、光源が小さな点に見えるLEDには、

レンズ内の奥行きを表現する力

がある、と言えそうです。

向かって左 : 指向性が強くメリハリがある。右 : 平滑に見える。

HIDヘッドライトが純正採用されたのは1991年式のBMWから、とのこと。
日本では5年ほど遅れて、大型トラックから乗用車に順次普及していきました。



また、HIDはプロジェクターライトとの相性も良好です。
そういえばプロジェクターヘッドライトの純正採用も、BMWが最初でしたね。



正しく配光されたライトは明るいほど安全なので、目覚ましい早さで普及するだろうとは予想していましたが、流通価格がこれほど下落するとは嬉しい誤算という気がします。

品質の悪いものは自然淘汰され、取付けのノウハウも標準化されつつあるようですが、たかがアクセサリー用品の取付けと軽んじることなく工夫を重ねることで、より安全に長期間運用できるクルマに仕上げられると、FTECは信じています。





おまけの動画は、HIDヘッドライトの輝きが印象的だったレースの模様。
モータースポーツの世界にHIDが現れたのは、1980年代半ばのことでした。

プロトタイプカーが巨大な眼を剥いた専用カウルは、夜間走行を含む耐久レースにおける「ヘッドライトの重要性」を象徴するアイコンだったと思います。