フォード ブロンコ (第2世代 1978-79年型) です。
エキゾーストシステムをアップデートするために入庫しました。
排気ポートからテールエンドまで、汎用品を利用しながらワンオフ製作します。
第2世代のブロンコは、F-100 トラックのショートホイールベース4WD仕様と主要コンポーネントを共用するステーションワゴンで、現車は351cid(5.8リッター)のV8ガソリンエンジンを搭載しています。
まずは古いマフラーの問題点を把握し、新規に製作するマフラーの構想を練りましょう。
入庫時の全景 |
触媒と消音器 |
追加されたマフラーハンガー |
加工に加工を重ねた感じ |
折らずに外せるかな? |
途中でパイプ径を絞った箇所があります |
ハンガーの荷重に問題あり |
出口を合わせようと無理に吊っていたようです |
なぜか逆向きのセンサーボス |
一見、経年劣化しただけのようにも見えますが、よく見ると製作の時点で抱えていた問題が年月を経て顕在化したとしか考えられないような箇所がたくさんあります。
全体的に不揃いな印象です |
「走行中に打音がすることがある」とのこと・・・ |
左に伸ばしたパイプがプロペラシャフトに干渉した跡があります |
新車時の純正マフラーは、右側一本出し。
おそらく、古いマフラーはそこを変えたくて製作されたのでしょう。
拡管したパイプを挿し込んでUボルトで締めるのは量産車でも使われるお手軽な接続方法です。しかしワンオフマフラーの場合は、重量や応力のバランスをよくよく検討しないとズレたり回ったりして収拾がつかなくなってしまいます。
このマフラーには、Uボルトで締めたあとで回り止めのために溶接した箇所や、Uボルトそのものをパイプに溶接した箇所がたくさんありました。
走行中にエキゾーストシステムの形状が変わってしまっては、それを吊るハンガーが受け持つ荷重に不均衡が生じることは避けられません。
残念ながら古いマフラーには、ハンガー、ステーともども、再使用に堪えるものはなさそうです。
パイプを三重に挿して溶接されている箇所。
全周溶接されていないのは、回り止めが目的だったからと推察できます。
また、古いマフラーは不具合が出るたびにパッチワーク的に溶接されてきたせいで、
切断しなければ取外せないマフラー
になってしまっています。
ひと通り観察した後は、ハンガー、ステーともども、全部切り刻んで撤去してしまいましょう。
ボルトナットは上流ほど腐食が激しく、触媒やヘッド回りは疲労しきっています。
廃棄するボルトは折れてもべつに構わないのですが、気持ちよく作業を進めたいのでプロパントーチで加熱しながら緩めていきます。
力任せの作業は、工具を傷めたり怪我をしたりと、ロクなことになりません。
緩むべくして緩む、という条件を整えることも自動車整備士の仕事とFTECは考えます。
鋳鉄製の純正マニフォールドが取り外された排気ポート周辺の様子。
エンジン左バンク側は、スペース確保のために前プロペラシャフトも分離します。
シリンダーヘッド側にボルトが折れ込むと、アフターケアの時間で工程が大幅に狂います。鋳鉄ヘッドに炭素鋼のボルトという組み合わせは、3/8"sqの標準的なハンドツールで容易に緩められるのが普通です。
エキゾーストマニフォールドの一部のボルトは、タイヤハウス内から工具をかけることになります。
排気マニフォールドが取り除かれたシリンダーヘッド。
エキゾーストマニフォールドの嵌合面は、ケミカルとスクレパーでガスケットを剥がした後、 #180程度の研磨布で仕上げます。
新たにワンオフするマフラーの装着スペースを下から眺めながらアイディアを出します。
ポイントは、
1.サイレンサーやキャタライザーの配置
2.パイプの太さと取り回し
3.排気音の予想
など。
話が前後しますが、今回は排気音の傾向を掴むために、作業の各段階で録音することに決めました。最初の記録は、改造されたマフラーを撤去した状態における純正エンジンの音です。
純正エキゾーストマニフォールドは鋳鉄製で短く、それだけではエンジンルーム内に排気されてしまいます。そのため、床下までのパイプ(約1m)を接続した状態で排気音を記録します。
この試みは、古いマフラーの不協和音がどこから出ていたのかを知るのに役立ちました。
パイプ径が所々で絞られたり長さが不揃いだったりすると、澄んだ音が出ないことは容易に想像がつきます。この動画に録音された音は、マフラーの出来に左右されない、純正マニフォールドを装着したエンジンの生の声といえるものです。
さて、どう料理しましょうかね!