埼玉県狭山市の自動車整備工場、FTECコーポレーションが、主に特殊整備にカテゴライズされる業務内容を紹介するブログです。

セルボのクーラー修理・1/2

スズキ セルボ SS40型  昭和60(1985)年式です。
クーラーの修理のために入庫しました。



現車が装備しているクーラーは、当時の純正オプション品。

スズキ自動車からの部品供給は、一切ありません。
41年前のディーラーオプションなので、無理もありませんが・・・。

現車のクーラーは、昨シーズンの稼働中にコンプレッサーから異音を生じたため、オーナーの手によってベルトが外されています。早速、マニフォールドゲージを接続して確認すると、クーラーガスは残留している状態と判明。



コンプレッサーのラベルからIDを読み取り、互換性のある部品を探します。

現車のコンプレッサーは、サンデン製のSD505型。いわゆる当時モノですから、当然R12仕様です。完全な互換性を備えた新品コンプレッサーを探し出せれば最善ですが、そう上手くいくでしょうか?



WEB上には、様々な流用情報があります。しかし、肝心な部分は公開されていません。

□ F5Aエンジンに固定する方法
□ 純正部品との結合方法
□ 車体側に加工を要するか否か

これらは、必須確認要件です。
車体側に妥協を強いる流用は避けたい、という認識でオーナーとFTECは一致しています。

コンプレッサーを装着する空間に余裕はないので、車体側無加工で乗り切るには古いコンプレッサーと同じかそれより小型のコンプレッサーを探し出す必要があります。



クーラーガスの流路は、専用の洗浄液によるフラッシングを実施します。
レシーバードライヤー(リキッドタンク)はフラッシングできないので、交換が必要です。

もちろん純正品は欠品製廃。一般的なねじ径と外形状であれば、汎用品を見つけられます。


クーラーホースにガス漏れの痕跡が認められた場合は、ホースを製作しなければなりません。幸い、現車のホースは加締め部もフレア部も健全でした。




レシーバードライヤーは、完全な互換性を備えた新品を確保できました。

新品(左)には、圧力センサー用のサービスポートがあります。

コンプレッサーは、同じサンデン製で同じ5気筒のR134a仕様、5H09シリーズを取り寄せました。現車のSD505型との互換性を保証する情報はありませんでしたが、寸法と形状がよく似ています。


ご覧の通り、5H09はダブルプーリーです。しかし外側のベルトラインは揃っており、プーリーの直径も殆ど同じ。



現車のSD505をよく観察すると、本体の使わないブラケット4箇所が切除されていることが解ります(下の写真の赤丸の部分)。



新品コンプレッサーの本体を切り刻んで搭載するとは、流石スズキ。無茶をします。初期不良のリスクが少々気になりましたが、エンジンに装着できないままでは話になりません。



F5Aエンジン用のマウントに結合しないマウント部を、容赦なく切除します。


切粉のケアは、入念に。
主軸とクラッチ周辺は、ドライエアーで徹底的に清掃します。


切断面は、ベルトグラインダーで均します。
清掃後はパッキングして、装着を待ちます。


コンプレッサーとレシーバードライヤー以外の構成部品は、フラッシングして再使用します。古いコンプレッサーが完全にロックしたり破損した案件と違って、詰まりを生じるリスクは小さいと思われますが、油断は禁物です。



フラッシングに使う圧縮エアの圧力は、高圧側と低圧側で使い分けた方が無難です。
エバポレーターの出口からガスの流路を逆向きにフラッシングすることは厳禁です。





古いオイルが洗浄液と共に排出されます。
金属粉らしきものは、混ざっていません。


パイプのフレア部は、内側と外側の両面を綺麗に磨いて整えます。ユニオンナットが滑りながらフレア部を圧しつけるイメージを持つことが、良い組立作業をするための要諦です。



まるで純正オプションのように、装着できました。

このレシーバードライヤーには、クーラーガスの圧力スイッチを付けられるサービスポートがあります。現車のクーラーシステムには低圧スイッチが存在しないので、潤滑不良を起こすほどのガス漏れを起こした場合にコンプレッサーを守れるかどうかは、オーナーの操作次第。

低圧スイッチを追加すれば、ガス漏れ発生時にマグネットクラッチの電源を遮断できます。
こうした冗長性についてオーナーに情報を提供するのも整備士の仕事だと、FTECは思います。



コンプレッサーに結合するフレア部も、内外両面を磨いて点検
段付きや異物の咬み込みがあれば、ガス漏れ発生は避けられません。



コンプレッサーをブラケットに固定する、ボルトナットとワッシャー。
磨いて再使用するのが基本ですが、元の部品最適かどうかを確かめます。
ワッシャーの寸法が不適切だったため、厚いものに交換します。



旧コンプレッサー(画面上)、鋳出しの刻印は「C505 R2」。
新コンプレッサー(画面下)、鋳出しの刻印は「B505 S17」。



F5Aエンジンの純正コンプレッサーブラケットに、ボルトオンできました。
コンプレッサー本体の切除部周辺にも、危険な干渉箇所等は見当たりません。


旧コンプレッサーのポート形状は、フレアで結合するホース用です。
新コンプレッサーのポート形状は、Oリングで結合するホース用です。



コンプレッサーのポートかホースのフィッティング、どちらかを変換しないとクーラーラインを結合できません。コンプレッサー本体を切り刻んで搭載しなければならないエンジンルームですから、変換のために使える空間はほとんど無いのが現実です。


自動車用エアコンホースをワンオフ製作できると謳っている日本国内の事業所何軒かに訪ねましたが、役に立つ情報は得られませんでした。小さなクルマの狭いエンジンルーム内で目的を果たすには、純正の金具を再使用可能な状態で切除して加締め直す技術が要ります。

ワンオフ製作の場合、純正金具をホースに隠れた部分まで仔細に調べ、適合するホースとソケットを探し出して加締める必要があります。このような要望に応えられる業者は年々減少しており、積極的に挑戦する新たな業者はなかなか見つからないのが実情です。

実はFTECにも、Mastercool社製の加締め工具 71550 があります。MASTERCOOL社COLDHOSE社製のフィッティングを駆使してエアコンホース一台分をワンオフ製作することは、技術的には可能です。しかし、トライ&エラーで完成度を上げていくために、どれほど時間がかかるか分かりません。時間が分からないということは、費用も分からないということです。

引用元:スズキデジタルライブラリ


ここは一旦冷静になって、自由な発想で解決することに努めましょう。
FTECが採った解決策は、次回の記事で紹介します。