はじめに、RSC(ロールスタビリティコントロール)についておさらいしましょう。
【RSCの目的】
重心の高い車輛の横転リスクを低減し、安定性を高めること。
【RSCの動作】
ジャイロセンサー(ロールレートセンサー)で、車体のロール角と速度を常時監視。横転リスクのある危険なロールを検知すると、外側車輪にブレーキをかけてアンダーステアを誘発。ヨーレートの減衰と引き換えに内側車輪を接地させ、同時にエンジン出力を抑制する。この一連の動作によって、横転を防ぎます。
【RSCの歴史】
世界で初めてRSCを採用したモデルは、2003年式のボルボ XC90です。
フォードが開発し、当時グループ内企業だったボルボのXC90に、世界初採用しました。その後、2004〜2005年頃からリンカーン ナビゲーターやフォード エクスプローラー等に展開されています。
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| 引用:公式カタログ |
AdvanceTrac® with RSC® (Roll Stability Control™) という表記で判る通り、2008年当時のRSCは、AdvanceTrac の正常進化版という位置づけです。
従来の AdvanceTrac は、オーバーステア(尻振り)の場合には外側前輪にブレーキをかけて車輛を安定させ、アンダーステア(フロントの逃げ)の場合には内側後輪にブレーキをかけて旋回を助ける役目を担っていました。
2003年にRSCが追加されたことにより、ロール角と速度が過大(横転リスク発生)の場合、外側の前後輪にブレーキをかける役目が増えたのです。RSC作動時にはエンジンコントロールユニットが電制スロットルに介入して、エンジンの出力を絞ります。
末端のブレーキパッドやローター、キャリパーの機能に疑いがある状態で診断を進めるのは得策ではありません。基本的なメンテナンスによる改善は、通常のペダル操作の瞬間にも体感できます。
制御系統を回復させて、新車当時のブレーキを再現しましょう。
B1342-20 を検出。
記録した後、一旦すべての故障コードを消去します。
消去後に、オールシステムDTCスキャンを再実施。走行させていない状態では、全ての故障コードを消去できています。
この段階で重要なことは、
スキャナーと各コントロールモジュールとの通信が確立できている
配管を分離する前に、4輪のキャリパーからブレーキフルードを吸引して抜き取ります。
ブレーキフルードは塗装を侵し鉄板を錆び付かせるので、滴下しないように重々注意します。もし塗装面に付着したら、直ちに大量の水で洗い流して拭き上げましょう。
それぞれの品番は、
UP251 RSC 8L24-2C219-CA
UP251 RSC/IVD 7A24-2C219-CE
IVD(Integrated Vehicle Dynamics)は、フォードが社内で使う技術名称であり、カタログ上における AdvanceTracと読み替えて差し支えありません。
✔ AdvanceTrac は2000年、RSC は2003年のデビュー
✔ RSC は、AdvanceTrac 抜きでは機能しない
これらの事実に照らして、"IVD" 表記の有無は不問と判断します。
ブレーキフルード漏れによって生じた汚損や瑕疵は認められません。
ABSハイドロリックユニット本体の固定、配管の締め付けは単純な逆手順なので割愛。現車の配管は、生産工場で締め付けたきり一度も分離された形跡がありませんでした。
現車が出鱈目な整備を受けていなかったことは、新オーナーにとって朗報です。
この記事の冒頭で、スキャナーと各コントロールモジュールとの通信が確立できていることが重要だと述べました。その理由は、ABSモジュールの組み換えにはスキャナーを使った車輛IDの書き換えが不可欠だからです。
スキャナーに車輛IDを読み取らせて、一時保管させます。
もしこの段階で通信不能に陥ると、使えないモジュールがふたつ残りかねません。
また、古いモジュールが衝突事故などで物理的に破損している場合にも、この記事の手順では車輛IDの書き換えができないことに注意が必要です。
KOEO(Key On Engine Off)セルフテストを実施して故障が指摘されなければ、KOER(Key ON Engine Run)セルフテストを実施。
現車はすべてのテストを NO CODE でクリアし、スキャナーによるエア抜きモードも正常に利用することができました。
最後に、走行テストで症状が解消していることを確認。
SERVICE RSC NOW 警告が鳴動する症状の修理は、これで完了です。
修理前と比較してブレーキペダルの応答性が高まり、ドライバーの爪先による繊細なコントロールができるブレーキに変貌しています。

