埼玉県狭山市の自動車整備工場、FTECコーポレーションが、主に特殊整備にカテゴライズされる業務内容を紹介するブログです。

クラウンのヒーター修理

トヨタ クラウン 2ドアハードトップ (MS70型、昭和46年式)。
ヒーター修理で入庫しました。


「クジラ」の愛称で親しまれている、4代目クラウン。
この2ドアハードトップは、クジラクラウンの中でも一番前衛的なモデルです。

現車は、いっさい改造の無いワンオーナーカー。
46年間の歩みに敬意を払いつつ、適切な修理方法を選択します。

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プライマリーチェックでエンジンルームを点検。
ラジエターアッパーホース周辺に、明確な冷却水漏れの痕跡があります。


サーモスタットケース周辺の様子。
昨日今日に漏れ始めた雰囲気ではありません。


アッパーホースの途中に装着されている、サーモバルブ。
この周囲にも、冷却水漏れの痕跡が。


サーモバルブ取付部周辺には、風化したシリコンシーラントの欠片が見えます。


エンジン冷却水を排出し、ラジエターをケミカル洗浄。
ヒーターコアにも循環させて、冷却水路のスケールを除去します。



アッパーホースを取外されたサーモスタットケース。
ベースパッキンから長年にわたって冷却水が漏れていたことが解ります。


アッパーホースの、ウォーターネック嵌合面。
変形と硬化が著しく、再使用は不可能な状態。


サーモスタットケースの、ホース取付部。
原形が判らないほど不純物が堆積しています。


ウォーターネックを取り外し、サーモスタットを点検。
サーモスタットとパッキンをセットで交換します。


パッキンの下面から盛大に漏れていますね。
このサーモスタットは、新車時に組まれたものではありません。
おそらく過去に不適切な作業を受けたことがあったのでしょう。



ウォーターネックは、交換が望ましい状態。
しかし、トヨタから替りの部品を入手することはできません。




不純物を削ぎ落とし、ウォーターネック全体を原形が現れるまで磨きます。
アルミダイキャストの鋳肌は綺麗で、ホース嵌合部以外に腐食や割れ欠けはありません。


この状態になれば、再使用は可能です。


必要に応じて、サーモスタットケース側の取付面はオイルストーンで、ホース嵌合部は布ペーパーで平滑に仕上げ、エンジン冷却水漏れの再発防止を図ります。


サーモスタットとパッキンを取り除き、嵌合面を仕上げられたサーモケース。

写真右手前の水温センサー(負特性サーミスタ)は、カプラー部に不純物が付着した影響で、接触不良を起こしていました。端子を磨いてカプラーの雄雌双方に接点洗浄剤を塗布して組み直すと、水温計の機能が回復しました。


アッパーホースとサーモスイッチのアダプター。
写真右手、三日月形のデブリが風化したシリコンシーラント。

ここにシリコンシーラントを施工するというのも、メーカーの生産ラインで施された処理ではないはずです。シリコンは痩せるので、自動車修理に使うには注意が必要です。


ラジエターホース、ホースアダプター、サーモスイッチ。
すべて 欠品製廃再販なし

金属部品は清掃して点検、再使用。
ネジ山も清掃して点検、必要に応じてタップ修正を行います。

ホースは他車用のデッドストック品を流用して新品に交換。



ボルトの頭に刻まれたマイナス(すり割り)が往時の雰囲気を物語るホースバンド。
清掃、点検、修繕して再使用。



ラジエター用のケミカルを使用して、リザーブタンク内のスケールを除去。
昭和46年式の国産車では、リザーブタンクは目新しい装備でした。



ラジエターキャップを交換。さすがにこのくらい汎用性が高い部品は、トヨタ純正部品がなくても、優良な汎用部品を選ぶことができます。


意外なことに、サーモスタットとパッキンは、トヨタ共販から純正部品の供給がありました。レクサスの箱に入ってお出ましです!


ケミカル洗浄した冷却水路にクーラントが満たされ、エンジンの作動温度が適切に保たれるようになりました。しかし、車室内には温風が供給されないままです。

熱源が確保されたのに、温風を適切に分配できない。
ヒーターコントロール系統の修理が必要な状態です。

MS70型クラウンのヒーターコントロールはアメリカ車に倣って、エンジンの負圧を原動力として作動する仕組みになっています。

MS70 ヒーター バキューム配管図

MS70 ヒーター 部品構成図

ヒーターコントロールパネルに負圧を供給する配管を外し、バキュームポンプを接続して作動テストを実施。バキュームダイヤフラムの正常動作を確認。
この時点で、温風が供給されます


バキュームダイヤフラムは、エンジンの吸気圧力より弱い力でも正常に作動します。
ということは、負圧を供給するシステム側に極端な圧力漏れがあるということです。


前出のバキューム配管図の赤枠内には、キャブレターに分岐したホースが描かれています。燃料蒸発ガスに近いだけあって硬化と変形が激しく、すべて汎用の新品ホースに交換です。


負圧のリザーブタンクは、左フェンダー内に装着されています。
ヒーターシステム以外に利用するものも含め、すべてのバキュームホースを交換するには、フェンダーの取り外しが必要な構造です。


今回は、バッテリーを取外して確保したわずかな作業スペースから、ヒーターシステム関連のホースを点検。


わずかに覗いて見えているのが、負圧のリザーブタンクです。


完全に脱落したホースを発見しました。
同じ系統のホースを作業の手が入る限り点検し、再発の芽を摘み取ります。





インテークマニフォールド周辺の熱と振動に曝されるホースは、シリコン製の肉厚なホースに交換します。


バキュームポンプを取外して配管を再接続。
車室内の温風が調整できることを確認しました。

テスト走行に出るところで、尾灯の球切れを発見。
23W/8Wのダブル球を交換。右側には新しい電球がついていることを確認。







ピラーレスハードトップのクルマは、窓全開で走れば冷房など要りません。
しかし、暖房なしでの運転は難しい。デフロスタの機能も重要です。
その意味で、空調は安全装置の一部でもあるとFTECは考えます。



今回の整備では、車室内の空調が回復したことでドライバーの負担が心身ともに減り、一層安全で快適な運行ができるようになりました。

日本の道を走り続け、まもなく50年。
まだまだクラウンは、現役です!

MS70型 トヨタ クラウン2ドアハードトップ(1971-74)





おまけの動画は、1971年(昭和46年)の道路交通事情が解るもの。
このクラウンは、まさにこの年の3月に初度登録されています。
世紀を超えて走り続けていることを思うと、感慨もひとしおですね!