埼玉県狭山市の自動車整備工場、FTECコーポレーションが、主に特殊整備にカテゴライズされる業務内容を紹介するブログです。

カマロのシャシーリフレッシュ5/5・調整

シボレー カマロ 1973年(昭和48年)式。
リヤサスペンションも見たい!・・・とのご要望をうけて、補足します。


GM の F-body (ポンティアック ファイアーバード トランザム と共通のプラットフォーム)の場合、リヤサスペンションは非常に保守的な構造なので、リフレッシュに必要な工数はフロントより格段に少なくて済みます。よって、この記事は一話完結です。

経年劣化への対応という意味では、リヤサスペンションだけを整備するという選択はあり得ません。フロントサスペンションのオーバーホールだけを詳しく紹介しようと考えた理由は、そこにあります。

「またサメカマかよ」、なんて言わないで(^-^;;)


リヤサスペンションのリフレッシュメニューは、

・ リーフスプリング交換
・ シャックル交換
・ インシュレータ交換
・ ブッシュ交換
・ ショックアブソーバー交換

などを含む内容です。

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前後サスペンションのリフレッシュが終わったら、新しい車高の基準が決まります。
試走後にアライメント共々微調整を加え、サスペンションのアップデート完了とします。


フロントサスペンションと違い、再使用できるボルトナットの数は少なめです。
装着条件の違いによって、緩めると崩れて再使用不能となるケースが多いからです。


ショックアブソーバーは、フロント同様に低圧ガス封入式のビルシュタイン。
伸長し切った状態でリバンプ側のストロークを制限する寸法設定になっています。


リーフスプリングリヤ側のシャックル周り。

ショックアブソーバーは消耗品として交換歴がありそうですが、ここは新車時に組まれたきりでしょう。すぐ横に燃料タンクがあるので固着したボルトナットを温めることはできません

露出しているボルトのねじ山を清掃するのもスペース的に困難なので、ほぼこのままの状態でボルトナットを分離します。ボルトにダメージが及ぶ避け難い原因は、これですね。







右側の作業域はさらにタイト。
オープンエンドを斜めにかけて30度ずつ、地道に締付けをほどいていきます。



シャックル側がフリーになったら、ボルトを通したままギヤキャリア( = ホーシング)を保持します。プロペラシャフトのヨークからゴッソリ落下させたりしないよう、重々ご注意を!



新旧リーフスプリングの比較。
新しいリーフの方が明らかに柔らかく、動きが良さそうに見えます。
シャックルは、新しいものの方が軸間が長くなる設定です。









リーフスプリング前側のサポートアダプターは、取付けボルトが全滅します。
新しいボルトは、ワッシャーの径や厚さを増した仕様に変更されています。




写真の撮りようがないので記事にはしていませんが、新品のウレタンブッシュの嵌合箇所は、フロント同様に、錆や塗料や積年の汚れを取り除くことが絶対条件です。

ウレタンブッシュに付属するシリコングリスは摺動面の発する音鳴りを抑制するためのもので、組み付けをスムースにするためのものではありません。

このグリスは粘着力が強いので、面接触する部品との間に砂粒や塗料片を噛みこまないよう、細心の注意を払いましょう。






緩めると崩れて再使用不可能になるボルトナットはフロントよりリヤに多いと述べました。それは確率の話であって、旧車のサスペンション全体を俯瞰すれば、どこでも起こり得る日常茶飯事です。




アメ車の場合、レストアに挑む人の数が多いこともあって、どのボルトが壊れるかまで細かく追及した統計的な資料があり、それを利用したボルトナットのパックが通信販売されています。

強度が問題にならない箇所なら国内調達できる別の部品に変えても良いでしょうが、走行負荷を直接受けとめる重要な部品に関わる箇所は、専用のボルトナットを取り寄せて使いたいものですね。

EAST COAST BOLTS


都合5回にわたってお届けした、サメカマのシャシーリフレッシュに関連する記事。
ご覧頂いた方々の胸には、何が残りましたか?

「新車買った方がいいや」

なら、おめでとう人気者です。
銀行もディーラーも女の子も、きっとちやほやしてくれるでしょう。

「もっと先はねえのか」

なら、FTECまでお越しください。
あなたのクルマに相応しい整備を、一緒に考えましょう。

「俺ならもっといい仕事をするぜ」

なら、履歴書を送ってください。
価値観を共有できる仲間が増えるのは、素晴らしいことですから!



事実、今回のシャシーリフレッシュメニューにも、まだまだ先があるのですが。
・・・それはまた、別の機会に。




車高とアライメントを調整して、仕上がった73カマロの立ち姿。

空前の排出ガス規制と2度のオイルショックによる逆風をついて世界最大の自動車メーカーが放ったスポーツカーの佇まいは、燃費と車室容積をひたすら崇め奉る日本の自動車市場に向って、「そんなのいつまでもつづきやしねえよ」と語りかけているようにも見えます。

どちらの主張が正しいか。
答えが明らかになるまで今のクルマを健全に保つのが、FTECの仕事ですね!


※ おわり


【関連記事】

■ 73カマロのシャシーリフレッシュ

1・概要 → http://goo.gl/GgrTOA
2・分解 → http://goo.gl/3fnKP3
3・再生 → http://goo.gl/bY5uUl
4・組付 → http://goo.gl/roVQtu