ユーノス コスモ (JCESE型、1990年式) です。
ガソリンタンクのコーティングで入庫しました。
実質2人乗りの大柄な2ドアクーペ、3ローターツインターボでハイオクしか飲みません。
バブルに咲いた百花繚乱の花のうちでも、ひときわ艶やかな一台です。
4815×1795×1305mm |
遠方から自走でFTEC入りしましたが、極たまにエンジンが愚図つくとのこと。
再現性がないので診断がしづらい症状ですが、誕生から四半世紀も経過したクルマの場合、タンクを含む燃料系統の健全化は決して無駄にはなりません。
オーナーが燃料タンクの錆を認知していて、ゆくゆくは改善したいと願っているのなら、最初にこの問題を解決してからエンジン整備に取り掛かるというのは、手堅い選択といえます。
まずは、どんな状態か覗いてみましょう。
ユーノスコスモのフューエルリッド(給油口)は、トランクフードのヒンジ右横にあって上方に開口しています。コスモは初代 L10型(マツダ コスモ)から、ラゲッジスペースとキャビンの間に燃料タンクを配置するのが伝統でした。
当然、雨水を逃がすドレンホースがあるのですが、枯葉のくずや土埃などが詰まると、逃げ場をなくした水分が燃料タンク内に滲入することがあります。
ラゲッジスペースのトリムを外すとタンクが現れる。 |
センダーユニットの配線と配管。 |
燃料タンク内に残留しているガソリンは、あらかじめシャシー下側のフュエルラインを分離して排出しておきます。あとは、ラゲッジスペース内の作業だけで燃料タンクを降ろすことができます。
燃料タンクの容量は85リットル。 |
室内装備なので外観は綺麗。 |
キャップを外した給油口。 |
燃料タンクを降ろす前に中の様子をうかがえるのは、フィラーキャップを外した給油口の部分のみ。現車のそれは指でこすれば付いてくる浮き錆と、フジツボのようなガソリンからの析出物が硬く付着した状態でした。
それでも乗り手によっては、見て見ぬふりでやり過ごしてしまう程度かもしれません。
センダーユニットを取り外し、アクセスホールから燃料タンク内部の様子を観察。
画面中央の四角いボウル内のガソリンを、フューエルポンプが吸い上げます。
変わった色のガソリンですね・・・ |
かつて「戦車の燃費」と揶揄された、20B-REW 型エンジン。
このガソリンでも、通常走行には支障ありませんでした。…結構タフなのか?
しかし、この状態では実力の半分も発揮できないでしょう。
毎回85リットルもハイオクを給油するのに、こんな燃料タンクでは虚しすぎます。
現車は冒頭に記した通り、極たまにエンジンが愚図つくという症状を抱えています。
こんなガソリンが供給されていては、燃焼条件の大前提さえも怪しまれます。
テスターやスキャナーを利用した故障診断は、このような不調の要因を取り除いた後でなければ、信用に足るデータが得られないばかりか、原因特定への道のりを長くする破目になりかねません。
タンクコーティングでエンジンが復調するかを疑うより、駄目と分かりきっているものは直す。
旧車のレストアは、系統ごとの健全化を積み重ねるより他に方法がありませんから。
コスモの燃料タンクは、リヤシートの真後ろに搭載されています。
本文中にある通り、普通に走れるクルマのタンクです。 |
バッフルプレートの配置を確認。 |
深く錆びついたフィラーネック。 |
現車は冒頭に記した通り、極たまにエンジンが愚図つくという症状を抱えています。
こんなガソリンが供給されていては、燃焼条件の大前提さえも怪しまれます。
テスターやスキャナーを利用した故障診断は、このような不調の要因を取り除いた後でなければ、信用に足るデータが得られないばかりか、原因特定への道のりを長くする破目になりかねません。
タンクコーティングでエンジンが復調するかを疑うより、駄目と分かりきっているものは直す。
旧車のレストアは、系統ごとの健全化を積み重ねるより他に方法がありませんから。
フィラーネック側からタンク内を覗いた様子。 |
最低層は沈殿した錆に覆われています。 |
コスモの燃料タンクは、リヤシートの真後ろに搭載されています。
タンク内部には、加速、減速や旋回のGによって、燃料が揺れて波打つ音が聞こえないように、複雑なバッフルプレート(=仕切り板)が溶接されています。
特に、車輌前方(=乗員側)に位置するバッフルプレート は、二重壁ともいえる構造。
ポンプまわりの平凡な処理とあわせて考えれば、制音に軸足を置いた設計だと解ります。