ダッジ ダコタ レギュラーキャブ ピックアップ。
前の記事に続いて、フロントサスペンションまわりを修理します。
前の記事で、ダブルウイッシュボーン式サスペンションのアッパーアーム再生作業を紹介しました。10万マイルも乗りっぱなしであれば、それ以外の箇所も損耗していて当然です。徹頭徹尾純正部品を再生して新車を目指すレストアなら、ロアアームもアッパーアーム同様に修理するのが定石です。
しかし今回の主旨は、オーナーが長年かけて到達したスタイルから最高の性能を引き出すこと。そこで、車高を下げた状態におけるサスペンションの総合性能を底上げするために思い切った方法を採りました。
分解したフロントサスペンションの、ボールジョイントを点検する動画です。
最初に映っている、崩れたバンプラバーが装着されている部品がロアアーム。
今回は、フロントの車高を 3インチ(= 76.2ミリ)下げた状態で最適な角度となるように設計された、まったく別の構造をもつロアアームに置き換えます。
製造は、DJMサスペンション。
商品はCalmax コントロールアーム。
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DJM suspension
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ダッジのみならず、北米で流通している多くのトラック用に商品を開発しています。
テクニカルサポートも手厚いので、この世界に興味のある方には有益でしょう。
数ある商品ラインナップのうち、FTECが今回選択したのはDJM2397-3/5というもの。
ダッジ ダコタ の 純正コイルスプリングと純正リーフスプリングをそのまま用いて、フロント3インチ(= 76.2ミリ)/ リヤ5インチ(= 127ミリ)車高を下げられるよう設計されています。
フレームとの位置関係を根本的に変えることによって、短く硬いスプリングにしたり リーフとホーシングの間にブロックをかませただけのロワードとは一線を画した、高い走行性能を実現できます。
仕様の詳細は、DJMのサイトに詳しいので割愛します。
FTECで取り寄せたロアアームは端々までヘビーデューティに作り込まれていて、鈑金細工の純正ロアアームとは比較にならない高剛性を備えていることをここに明記しておきます。
それでは、フロントサスペンション整備の続きを始めましょう。
DJM Calmax ロアアームには、アウターボールジョイントとウレタンインナーブッシュが付属します。ウレタンブッシュはラバーブッシュより遊びが少なく軽く動くサスペンションの実現に寄与します。
左 : 純正部品 右 : DJM Calmax |
純正ロアアームは取外したら廃棄。
ボルトは点検の結果磨いて再使用することに決定。
ウレタンブッシュは稼動時に独特の音が出るので、これを軽減するために粘度の高いシリコングリスを塗布します。下の写真は車体側のブラケットが摺動する面。これ以外にも、アーム内に納まる筒の内外全面をシリコングリスでコーティングして組付けます。
サスペンションの動作範囲を確認します。
・ アッパーアーム
・ ナックルアーム
・ ロアアーム
を仮組みしてフルストロークさせ、角度の変位を観察します。
純正とは比較にならない深さのトラベルストロークが確保されていることが解かります。
動作のフリクションも低減されているため、より繊細なインフォメーションが得られるはず。
ハブベアリングAss'y は新品を組付けます。
フロントブレーキディスクローターは新品を加工してから組付け。
ローターのスリット加工は放熱性とパッド面のクリーニング性を向上させます。
サスペンションとステアリングの精度が上がり、ハブベアリングも新品となれば、ブレーキの反応として得られる情報の密度が飛躍的に向上します。
精度が向上したサスペンションが関連箇所の不具合をひっきりなしにドライバーに伝える破目になっては元も子もありませんから、このあたりの見極めは慎重にする必要があるとFTECは考えます。
ショックアブソーバーは、前後とも DJM が推奨する Calmax に交換。
組立てが完了した、ダッジ ダコタ の 新しいフロントサスペンション。
リバンプ限界時におけるスプリングのたわみ量が少なく、接地荷重がかかった状態でほぼ真直ぐにセットされていることが解かります。このことは、走行時に刻々と変化する荷重をよどみなくスプリングに伝えられることを意味するので、ストリートスポーツトラックのコンセプトに完全に合致します。
フロントサスペンションの修理と改造は、アライメント調整を残すのみとなりました。
早く走らせたい衝動を抑えきれなくなりそうですが、まだそうはいきません。
DJM2397-3/5 は、前後セットで性能を発揮するように設計されたもの。