16万キロを経たサスペンションをリフレッシュし、新車以上の性能を獲得するプロジェクト。
今回は、リヤサスペンションのモディファイを紹介します。
TOPの写真があまりにも自然で忘れがちですが、新車の車高は下の写真のとおりです。
ターゲットは、前3インチ(= 76.2ミリ) / 後5インチ(= 127.0ミリ) のローダウン。
この車高を、ショートスプリングとロワリングブロックを組むのではなく、専用設計のロアアームとリーフスプリングの取付ブラケットに交換することによって実現します。
ショートスプリングはサスペンションのストローク量が減って硬くなるため、跳ねる挙動が目立ちます。ロワリングブロックはリーフスプリングに加わるねじれの力を増幅するため、加速時や転舵時の走行安定性が損なわれます。
一連の記事で紹介するシャシーリフレッシュメニューは、ローダウンの弊害として生じるネガティブな要素を根本的に解決し、ストリートスポーツトラックと呼ぶに相応しい性能を実現する内容です。
採用した部品は、DJM サスペンションの #2397 3/5 。
前回までの記事で、フロントサスペンションの組付けを紹介したものです。
リヤサスペンションは、純正リーフスプリングに正規の位置関係でギヤキャリア(= ホーシング)を取付け、それを取付ける車体側のブラケットを上方に5インチずらす設計になっています。
もともと、現車はロワリングブロックでリヤの車高を下げていました。
これは手軽にローダウンスタイルにできる部品ですが、サスペンションの性能面では改悪といって差し支えの無い代物です。
こんな高下駄のようなブロックをかませた状態では、プロペラシャフトや左右のタイヤからの入力によって常に搖動しようとするギヤキャリアを抑え込むことは困難です。
ロワリングブロックは高いほど悪影響を増幅するので、セッティングの最後の詰めでどうしても必要なら、できるだけ低いものを使用する。という認識でいたほうが無難だと、覚えておいてください。
それでは、リヤサスペンションの仕様変更に取り掛かりましょう。
ギヤキャリアを保持してリーフスプリングを取外します。ロワリングブロックは廃棄。
リーフスプリング前側を車体に取り付ける、純正ブラケットの様子。
ラダーフレームに、強力なリベットで取り付けられています。
リベットのヘッド部を切り飛ばし、貫通穴の輪郭が見えるまでひたすら研削。
純正ブラケットは廃棄するので削れても問題なし。
フレーム側を綺麗に保つ必要があることは、言うまでもありません。
打ち抜いたリベット。
さすがに生産工場で締め付けられただけのことはあります。
強烈に締まっており、綺麗にはずすためには根気を試される作業が要ります。
リベットを抜かれたフレーム側の穴の様子。
トラックのベッド後端部をクラッシャブル構造とするため、この部分のフレームは二枚重ねになっています。これにブラケットが合わさり、合計3枚の鉄板をリベットで締め付けていることになります。
新旧前側ブラケットの比較。
リーフスプリング前側の取付位置が、上方に移動することになります。
新しいブラケットは、ハイテン鋼のボルトとセルフロックのフランジナットで締め付けます。
リーフスプリング後側を車体に取り付けるブラケット。
前側と同じく、巨大なリベットで取り付けられています。
新旧後側ブラケットの比較。
リーフスプリング後側の取付位置も、当然上方へ移動します。
新しいブラケットは、車高を5インチローダウンするからといって、単純に穴位置を5インチ上方へずらしただけの部品ではありません。ローダウンによって変化するギヤキャリア(= ホーシング)の角度をプロペラシャフトに合わせるために、前後の穴位置の移動量を変えて対処しています。
ロワリングブロック用のUボルトを短く加工し、ギヤキャリアとリーフスプリングを直接結合。
最後にショックアブソーバーを、DJM 推奨品である Calmax に交換して、完成です!
前後サスペンションを構成する、すべての部品を脱着した今回の整備。
こうした規模の整備では、ブレークインも慎重に行う必要があります。
パーキングスピードにおける最初のテストから高速クルージングに至るまで、実走を担当する整備士は少しでも気付いたことがあれば直ちに点検する心構えができていなくてはなりません。
コイルスプリング上部のラバーインシュレーターも新品なので、いかに丁寧に組付けようとも乗り出して暫くは車高が変化していきます。
今回は、ブレーキディスクパッドを別銘柄の物に交換したり、コーナーウエイトを計測したりしながら最終的なセットアップにもっていきました。
四輪の荷重分布と車高設定に加え、フロントロアアーム交換によってサスペンションのジオメトリーが大きく変化しました。ということは、
もはやメーカー規定のアライメント数値は参考程度にしかなり得ない
ということになります。
アライメントは、キャンバーキャスターゲージをあてながらアッパーアームのピボットバー取付部で調整します。使用する工具は SNAP-ON WA171D キャンバー/キャスター アジャストフック。
光学式のアライメントテスターに載せるのは、どの数値をどう動かすと現車の反応がどう変わるかを理解してからでも遅くありません。
ドライビングに合わせてレスポンスを変えていくのは、スポーツカーならではの醍醐味ですから!
3回の記事にわたって紹介してきた、ダッジ ダコタ のシャシーリフレッシュ。
スタイルだけのロワードから、質実剛健なスポーツサスペンションに生まれ変わりました。
・ トラクションのかかり
・ ブレーキの効き
・ ステアリングの応答
すべての性能が飛躍的に向上していることを、タウンスピードでも実感できます。
重要な部位が消耗しきっていたこともあって、整備前と整備後ではクルマのキャラクターがまったく別物になったようです。これにはオーナーも驚かれていましたが、FTECも驚きました。
ストリートスポーツトラックというコンセプト、日本でもアリじゃないでしょうか!