BMW Z3 2.2i(1995-02年式)です。
ヘッドライトの仕様変更で入庫しました。
▲ 交換後の外観 |
ヘッドライトの機能は、自車のみならず他車の安全運行にも影響が大きいので、できるだけシンプルに配線をまとめ、後年誰かが取り外しても迷わず元通りに装着できるように配慮することが肝要です。
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今回新たに装着するヘッドライトユニットは、SONARのブランド名で流通している台湾製の部品です。これをベースに、ロービームをHIDに、ハイビームをハイワッテージのハロゲンに、ターンシグナルライトを橙色のLEDに、ポジションライトを白色のLEDに変更します。
▲ ライトアッセンブリーとそれに組み込む部品群。 |
▲ 光源を組換えて配線の整理が完了した状態。 |
新しいヘッドライトには、
1. ハイビーム(走行灯)
2. ロービーム(すれ違い灯)
3. ポジションライト(車幅灯)
4. ターンシグナルライト(方向指示器)
5. CCFLリング(任意灯火)
が備わっています。
このうち、3.と5.は点灯条件が同じなので、都合4つのカプラーに整理することになります。
▲ 左:整理後 右:整理前 |
CCFLリングは、ハイ&ローの前照灯を縁取る高輝度の冷陰極管で、イカリングと通称されるものです。内外同時に点灯させるので、配線も合流させます。
内外同時点灯は確定事項なので、二度と分離しない前提でハンダ付けします。
熱収縮チューブで絶縁して束ねます。4本が2本になりました。
CCFLリングはポジションライトと連動させます。ポジションライト用の配線(黒と白)と、電源とアースの端子を共締めします。
何故2本にしなかったのか、お解りですか?
こうすることで、電源が白の系統と赤の系統がこの端子で点灯すると判るからです。
続いて、ロービームにHIDのバーナーをセットします。
このバーナーには、インバーターIN/OUT用の配線4本が通されたグロメットが付属しています。何故このようになっているかというと、ヘッドライトの筐体内部でハロゲン電球の配線が完結している車輛のコンバージョンを想定しているからです。
シリコンシーラントでカバーとグロメットの嵌合部と配線を抜いた穴を埋め、ここは完了。
同様の手順で、ターンシグナルライトの配線を延長します。
ハロゲン電球の替わりにHIDバーナーを装着し、ハロゲン電球のための配線をHIDのインバーターのIN側に接続する、という設計ですね。
生憎、SONAR製の筐体はハロゲン電球の後方から電源を供給する仕組みになっています。
このままではインバーターIN側に点灯信号を入れられないので、筐体側の端子2本を切除してグロメットから配線を引き抜きます。
引き抜いた2本の配線は、車体側で点灯信号に接続します。
SONAR製ヘッドライトに付属する、ハロゲン電球後方のダストカバー。
写真奥のグレーのカプラーでBMW純正ヘッドライトハーネスに接続し、写真手前の端子でハロゲン電球に接続する仕組みであることが分かります。
筐体側のハロゲン電球用端子は、HID化によって不要になるので切除。
これでダストカバーから引き抜くことができます。
配線を引き抜いたSONAR製ダストカバーに、HIDバーナーのグロメット内径に合わせた穴をあけます。
ダストカバーとグロメットを組み合わせます。双方ともシリコン製なので、材質の親和性は非常に高いです。
▲ ダストカバーの穴径はアンダーサイズで丁度良い。 |
シリコンシーラントでカバーとグロメットの嵌合部と配線を抜いた穴を埋め、ここは完了。
将来的なヘッドライト筐体内部の曇りや汚れを防ぐには、全周均一に塗布して湿気を帯びた空気の出入りを防ぐことが肝心です。
前工程で引き抜いた2対の配線を利用して、HIDインバーターIN側にロービームの点灯信号を入力する配線を作ります。手前の灰色カプラーでBMW純正ヘッドライトハーネスからロービームの点灯信号を受け、奥の黄色い防水キャップを被った黒いカプラーでHIDインバーターIN側に出す配線です。
カプラーの精度に信頼がおける場合は配線を継いで大丈夫です。もちろん、すべて新品なら更に信頼性が高まりますが、もしその品質に均して作業にあたったら全体の費用がうなぎ上りになって収拾がつかなくなるでしょう。
フラックスを使わずにハンダ付けをして、並行する2本の長さが同じになるように配慮します。ハンダが鋭く尖っていたり、芯線がハンダから飛び出していたりすると、絶縁チューブを突き抜けて短絡することがあるので注意しましょう。
ハンダで継いだ部分は柔軟性がないので、なるべく屈曲しないように養生する必要があります。経験則ですが、カプラーのすぐそばよりは、離れた場所の方が故障を起こしにくい傾向があります。また、耐熱スリーブを継いだ場所に施工して、屈曲しやすい場所をコントロールすることも可能です。
繰返し応力や振動に曝されると故障発生の確率が高まるので、むやみに長い配線をだらしなく施工してはいけません。
▲ 第三者が分解しても迷いや疑いが生じないように配慮します。 |
同様の手順で、ターンシグナルライトの配線を延長します。
SONAR製 BMW Z3用ヘッドライトは数えきれないほど装着しましたが、すべてターンシグナルライトの配線長さが足らず、延長しないとBMW純正ハーネスに結合できません。
元々、ヘッドライトのその他の性能や品質がよく、確実に改善もされている事実に照らすと、この不備は腑に落ちないところがあります。もしかしたら、日本仕様だけ純正ハーネスのコネクター位置が違うのかもしれません。
BMW Z3は、アメリカの市場に向けてアメリカの工場で生産されました。その総生産台数は28万台を超えます。コンパクトなボディサイズと巧妙なパッケージングで日本の道路事情にもよく馴染み、堅実な設計なので長く生き延びていけそうなモデルです。
▲ 配線の長さ不足は一目瞭然。 |
この部分の延長には、純正ヘッドライトユニットから取り外したターンシグナルライトのソケットに付属する、配線とカプラーを利用します。理由は、カプラーの精度を比較すれば、SONAR製よりBMW製の方が優れていることが明らかだからです。
ハンダ付けの際に留意すべきことは、前出のロービームと同じです。フラックスを使わずに、なるべく丸く小さく仕上げましょう。指でなぞってチクリと痛みが走るようでは不合格です。
ロービームの例と同じように、熱収縮チューブと耐熱スリーブで仕上げます。色違いの配線が継いであることに後世の作業者が戸惑いを覚えないように配慮することも同じです。
SONAR製ターンシグナルライトの配線が延長され、カプラーがBMW純正品に変わりました。この見た目なら、改造内容を知らない人が取り外しても元通りに組めるでしょう。
光源を刷新して配線を整理したSONAR製ヘッドライト。以前はCCFLリング点灯用のモジュールが外部に露出していたのですが、このライトは本体に内蔵されています。
CCFLリングと同時点灯させるポジションライト用のLEDはT10電球の形状なので、極性確認のために試験点灯してから組みましょう。組み終わってから間違いに気づくと辛いです!
CCFLリングと同時点灯させるポジションライト用のLEDはT10電球の形状なので、極性確認のために試験点灯してから組みましょう。組み終わってから間違いに気づくと辛いです!
純正バンパーのクリアランスライト用の配線から、CCFLリングとポジションライト点灯用の配線を分岐させます。ライトアッセンブリーが取り外されていれば容易に手が入る場所なので作業は簡単です。
スプライスで並行コードを接続。繰返し応力が集中しないようにテープで養生。
ヘッドライト脱着時に、間違いようのない端子を使用します。
SONAR製ヘッドライトにレベライザーはありません。純正ヘッドライトのレベライザーに結合するカプラーは、雨水が滲入しないようにテープで養生して純正ハーネスに束ねます。
車体に装着された右ヘッドライトを、エンジン側から見た様子。新たに施工した配線が高熱や鋭いエッジの金属部に触れないか、念入りに確認します。
左側はエアクリーナーを取り外してライト後方を確認します。多少手間でも、この方が確実に故障の種を取り除けますし、光軸調整も楽にできます。
校正されたヘッドライトテスターで、光量と光軸を測定します。
SONAR製ライトユニットは、ロービーム上下左右とハイビーム上下の調整機構を備えています。BMW Z3は左右各4箇所のアジャスターを介してヘッドライトを車体に取り付ける構造なので、そのアジャスターを利用すればハイビームの左右も調整することが可能です。
SONAR製ライトユニットは、ロービーム上下左右とハイビーム上下の調整機構を備えています。BMW Z3は左右各4箇所のアジャスターを介してヘッドライトを車体に取り付ける構造なので、そのアジャスターを利用すればハイビームの左右も調整することが可能です。
ロービームは左側通行用のカットラインが綺麗に出ます(ハイビームは水平カット)。
エアクリーナーケースを外しているのでエンジン停止状態で調整していますが、光量は十分です。これで、他車を幻惑することもなく、純正より遥かに明るいヘッドライトを実現できました。
樹脂製ヘッドライトの経年劣化は避けられない現実です。純正の新品が手に入ればそれに交換するのが一番楽ですが、保安基準に適合する別の意匠の製品が在るのなら変更を検討する価値はあります。
より安全に新鮮な気持ちで運行できるなら、それに越したことはないとFTECは考えます。
より安全に新鮮な気持ちで運行できるなら、それに越したことはないとFTECは考えます。
BMW Z3は、アメリカの市場に向けてアメリカの工場で生産されました。その総生産台数は28万台を超えます。コンパクトなボディサイズと巧妙なパッケージングで日本の道路事情にもよく馴染み、堅実な設計なので長く生き延びていけそうなモデルです。
狙い通りのラインに乗せてコーナーを切り落としていく快感は、脊髄が痺れるようなエンジンパワーがなくても味わえます。いつも傍らに居て気持ちを高めてくれる、丁度いい塩梅のスポーツカーと言えるのではないでしょうか。