埼玉県狭山市の自動車整備工場、FTECコーポレーションが、主に特殊整備にカテゴライズされる業務内容を紹介するブログです。

ナイトロのサイドブレーキ修理

ダッジ ナイトロ(2011年式)です。
駐車ブレーキの整備で入庫しました。



サイドブレーキレバーに手応えがなく、ブレーキ力もありません。
レバーを限度いっぱいに引き上げても、まったく効かない状態です。

殆ど整備されずに運用されていた様子なので、ブレーキ全体の点検から始めます。

なお、ダッジ ナイトロは、同じクライスラーグループのジープ チェロキー(リバティ)とコンポーネントを共用しています。従って、この記事で紹介する修理はチェロキー(リバティ)KK型とも共通です。

リヤブレーキは一般的なドラムインディスク式
駐車ブレーキが効かないので、慎重にジャッキアップしてリジッドラックを掛けます。



キャリパーとローターを外して駐車ブレーキのライニングを観察。
案の定、ドラムに接触した痕跡がありません。


ハブとドラムインディスクの勘合面の、浮き錆をカップブラシで落とします。
この作業は、ドラムとライニングの間隔を精密に調整するために有効です。


高圧洗浄で積年の汚れを落とします。点検の結果ブレーキの部品に破損や腐食がなく、ライニングも摩耗していないと確認できたので完全分解の必要はないと判断。


エアブローで乾燥させた後、ライニング表面をペーパーで研ぎます。
この処置は、ドラムの異常摩耗防止に役立ちます。


同様に、ドラムの内面もペーパーで研ぎます。クロスハッチが付くように、ドラムは縦横それぞれの向きで全周を研ぎます。


アジャスターには、流動性のあるモリブデングリースを給脂します。
バックプレートとシューの摺動面には、粘度の高いモリブデングリースを塗布します。

どちらも最小限の量にすることが、長期間性能を持続させる秘訣です。


キャリパーをスライダーに固定するボルト。
緩み止めが塗布されているので、ワイヤーブラシで除去します。




ブレーキディスクパッドの、アンチラトルシム。

ディスクブレーキは主ブレーキ(フットブレーキ)の構成要素であり、駐車ブレーキとは別系統ですが、付帯作業で分解するので同時整備を承りました。



クライスラー&ダッジ伝統のキャリパーピストン。
この茶色の素材は、軽量で断熱性に優れたベークライトです。


ドラムとライニングの間隔は、ホイールベアリングの遊び量を考慮して、限界まで狭く調整します。これで普通のクルマはサイドブレーキレバーの手応えが出始めますが、ナイトロやチェロキーはここからが本番です。


ナイトロやチェロキーKKのサイドブレーキレバーには、ワイヤーの引き代を自動調整する機構が備わっています。

ドラムとシューの間隔を正しく調整したにもかかわらず、サイドブレーキレバーを限界まで引き上げても満足にワイヤーを引けない原因は、自動調整機構の故障です。


この写真を見て、何か気づきませんか?



写真奥に映っている、角断面のねじりコイルばねに注目。
サイドブレーキレバーの支点(青緑の✔マーカー部)を中心に、

A=サイドブレーキレバーのグリップ側
B=サイドブレーキレバーのベース側

に固定されて機能する仕組みになっています。


このねじりコイルばねが正しく機能するためには、写真Bのアームが垂直に立った壁の後方に位置しなければなりません。

壁を乗り越えてBのアームが前方にある状態では、ばね全体が遊んで機能しませんよね。


サイドブレーキレバーは非分解式なので、レバーアッセンブリーが部品の最小単位です。しかし、こんな些細なことでアッセンブリー交換する気にはなれません。新しいレバーも対策がなされていなければ、いずれ同じ故障に見舞われる公算大です。

試しに、壁の後方に少し高い壁をロッキングプライヤーで固定してみます。


ねじりコイルばねのアーム(B)を壁の後方に戻し、サイドブレーキレバーを数回繰り返して引きます。すると、自動調整機構が正常に機能して、ワイヤーのテンションが戻ってきました。

壁を強固に固定できれば、この方法で問題を解決できそうです。


レバーアッセンブリーを車体から取り外して、件の少し高い壁を溶接します。


写真奥から手前に押されるので、奥側に重ねた壁を4点で溶接。



レバー下面側からも溶接。ねじりコイルばねのアーム(B)は、壁の上側を斜めに押すので、壁の下側は繰返し応力が掛かっても破損しないように配慮する必要があります。


修理が完了したサイドブレーキレバーを車体に取り付け、作動テストを行います。結果は良好で、サービスマニュアルに規定された通り4~6ノッチで駐車ブレーキが効くようになりました。


DTCチェックとサービスリマインダーのリセットは、定期点検の標準メニューに含みます。


駐車ブレーキの整備を記事にしましたが、このクルマには主ブレーキ(フットブレーキ)の整備も同時に実施しました。

長年乗りっぱなしにされていたクルマだったので、整備前後の変化は明白でした。
新しいオーナーには、本来のブレーキフィールを味わって頂けそうです。





前述の通り、ダッジ ナイトロはジープ チェロキー(リバティ)と主構造が共通です。

日本では3.7LのV6エンジンだけでしたが、北米ではナイトロだけにDOHC4.0Lが搭載されていました。ジープとは違うステージで、よりスポーティに使えるモデルを目指したのがこのナイトロ、ということになるのでしょう。



V6ガソリンエンジンを縦に搭載したパートタイム4WD、その素性はジープそのもの。

一般的なアメ車のフルサイズSUVとは違い、狭隘な日本の道路でも取り回しが容易なうえ、3.7Lなら税金も国産の2t級SUVと同じです。もしかしたら、中古車市場で再評価されるモデルになるかもしれません。