トヨタ2000GT(昭和45年式)です。
エンジン冷却系統の修理を記事にします。
エンジン冷却系統の修理を記事にします。
オーナーの指摘する症状は、「高速道では冷えすぎ、一般道では冷えない」という内容。
現車が搭載する3M型エンジンには出力向上のための改造が施されており、補器類も一部変更されています。まずはプライマリーチェックで状況を把握しましょう。
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トヨタ2000GTのエンジン冷却器は、前オーバーハングに立体的に配置されています。
現車には冷房が装備されており、標準車のオイルクーラーの位置にコンデンサー、前グリルの奥に標準車とは別形状のオイルクーラーが配置されています。
アンダーカウルを取り外すと、下面に向いたクーラーコンデンサーが露出します。
メッキグリルの奥に、横長のエンジンオイルクーラーが見えます。
ナンバープレート裏側からグリル内を覗く。コンデンサー上面は黒いシュラウドで覆われ、乳白色の電動ファンがクーラーと連動する仕組みになっています。
ラジエターは、純正より狭いピッチのコアで3層化されています。
3M型エンジンには、ベルト駆動の冷却ファンがありません。
ラジエターの前方から、電動ファンで風を吹き付ける仕組みになっています。
ラジエターの前方から、電動ファンで風を吹き付ける仕組みになっています。
ラジエターのロアタンクや上下ホースに、漏れたクーラントが乾いた痕跡がありました。クーラーラインを慎重に加圧し、原因箇所を探ります。
ラジエターキャップの口金部分やドレンコック周辺に、変形があります。
エンジンオイルクーラーにはデンソーのラベルが貼られていますが1970年当時のCIデザインではなく、部品の素性は不明です。
オイルクーラーの配管に使われているホースは2000年以降の製品ですが、複数個所でオイル漏れを生じています。経路の途中に増設されたドレンコックは当初からオイル漏れしていたと見え、ばねやタイラップで閉じる方向に拘束されています。
冷却フィンが美しいアルミダイキャストのエンジンオイルパン。その側面にオイルクーラーで冷却されたエンジンオイルが還流します。ここにも、顕著なオイル漏れが認められます。
エンジンオイルクーラーと冷房の配管が、前スタビライザーに乗り上げています。年間走行距離の少ない旧車で故障に至るケースは稀でしょうが、精神衛生上好ましくないのは言うまでもありません。
ここまでの観察で解ったことを念頭に、
「高速道では冷えすぎ、一般道では冷えない」
症状の原因を推理します。
速度とエンジン回転数を一定に保って巡航する場合、1速ギヤより5速ギヤの方が必要なエンジン出力は大きくなります。エンジン出力が大きい、つまり発生熱量が大きいときに冷え過ぎるのはなぜか?
低速でエンジン回転数も低く、アイドリングで停車しているときでも電動ファンが止まらず水温計の針が上昇していくのはなぜか?
診断は初秋で日中の最高気温は25℃、日向で渋滞すれば冷房を使いたくなる陽気。
低いギヤで高回転まで引っ張ってからシフトアップすることはあっても、連続して高回転を維持するような乗り方はしません。速度が高いと冷え過ぎるのだから、エンジンの改造によって得た高出力とは関係なさそうです。
ワンオフ製作された6-2-2の排気マニフォールドは、エンジンルームの容積に占める割合が純正品より大きいものの、2000GTの長大なエンジンルームで前オーバーハングに位置するラジエターに熱害を及ぼすとは考えにくい。
そのラジエターは前述の通り、ピッチの狭いコアで3層にコア増しされています。コアの正面から約10㎝前方に電動ファンがありますが、シュラウドはありません。この電動ファンはグリル奥の空気を攪拌しているだけで、大容量化されたラジエターに通風を強制する能力はありません。
以上のことから、
「高速で冷えすぎるのは、コア前面のラム圧(走行風による圧力)によって、ラジエターが過剰に機能するから」
「低速で冷えないのは、ピッチを詰めてコア増しした影響で通風が滞り、ラジエターが充分に機能しないから」
と推理しました。
1. エンジンオイルクーラーの見直し
2. ラジエターの仕様変更
3. 電動ファンコントロールの見直し
特別な条件として、
□ 車体側には手を加えないこと
□ 冷えない問題を優先すること
が出されました。
具体的な内容は、次回の記事でご紹介します。
https://youtu.be/LI3wUMObdiE?t=17