スズキ セルボ SS40型 昭和60(1985)年式です。
コンプレッサーから異音を生じた純正クーラーを修理します。
コンプレッサーから異音を生じた純正クーラーを修理します。
前回の記事で、サンデン製 SD505型コンプレッサーを、同じサンデン製の5H09型に置き換える工程を紹介しました。SD505型はR12仕様、5H09型はR134a仕様です。
| 1985年式 スズキ純正クーラーの構成図 |
5H09型コンプレッサーのホース接続部は、Oリングでシールする仕様。これに接続できるホースの新規製作を検討しましたが、エンジンルームの狭さが災いして突破口が見出せません。下の写真は、コンプレッサーのディスチャージ(D)側とサクション(S)側のホースの、それぞれ反対側の加締め部です。
純正の金具を活かしてホースを新規製作するなら、赤矢印の加締め部を削除して同じ断面形状のラバーホースに交換し、新しいホースの外径と古いフィッティングの芯の寸法に合った汎用のソケットを探し出して加締め直す必要があります。

セルボSS40型のエンジンルームは狭く、純正のラバーホース部分が非常に短い特徴があります。コンプレッサーのD側に接続するためには180° Uターンするパイプの先端をR134a仕様のOリング式のフィッティングに変更しなければならず、しかも純正より大きくなったり長くなったりすることは許されない環境です。
そこで発想を変えて、古いコンプレッサー(SD505型)のリヤカバーを分解しました。
物理的な破損による内部の損傷が無く、シールの嵌合面に狂いが無ければ、新旧のリヤカバー組み換えられるのではないかと考えたのです。
そこで発想を変えて、古いコンプレッサー(SD505型)のリヤカバーを分解しました。
物理的な破損による内部の損傷が無く、シールの嵌合面に狂いが無ければ、新旧のリヤカバー組み換えられるのではないかと考えたのです。
新品コンプレッサーを一度も回さずに分解してしまったら、初期不良があっても保証は効きません。この点に一抹の不安があったのは事実ですが、そもそもケースを切り刻まなければセルボのF5Aには装着できない事情があります。
後戻りできる段階は過ぎていると肚を括り、新品のコンプレッサー(5H09型)のリヤカバーも分解。新旧の嵌合面を比較します。
後戻りできる段階は過ぎていると肚を括り、新品のコンプレッサー(5H09型)のリヤカバーも分解。新旧の嵌合面を比較します。
| 左:5H09 右:SD505 |
SD505型のリヤカバー。フレアの結合部の傷は簡単に修復できそう。
ケミカルで清掃する際に、銀色のペイントが吹きかけられていたことが判明。
フレア部の据わりには、ナットとパイプ間の遊び量だけ動く余地があります。
S側のナットを少し緩めて、パイプの垂直を確かめてから締め直し。
実は緩める際にトルク不足を感じたのですが、振動の影響か?と気に留めませんでした。
コンプレッサーのポートの材質はアルミ、パイプとナットはスチールです。
ねじ部を損傷したら替わりの部品は無いので、慎重にトルク管理をして締付けます。
S側のナットを少し緩めて、パイプの垂直を確かめてから締め直し。
実は緩める際にトルク不足を感じたのですが、振動の影響か?と気に留めませんでした。
コンプレッサーのポートの材質はアルミ、パイプとナットはスチールです。
ねじ部を損傷したら替わりの部品は無いので、慎重にトルク管理をして締付けます。
よく観察すると、S側のユニオンナットの下(赤矢印)から漏れ出していると判ります。締付状態を再確認すると、明らかに緩んでいます。何故、そんなことが起きたのでしょうか?
動画で原因が判明。トルクロッドのブッシュが機能しておらず、パワートレイン全体がエンジンルーム内で大きく揺動しています。この動きは、アイドリングでは正常なブッシュとほとんど変わりませんが、エンジン回転数を上げてシフトアップする際にはクラッチミートのたびに異常な振れ幅に増大しています。
更に不都合なことに、この振れはユニオンナットの回転方向に繰返し応力を加えています。2本とも短いホースの反対側は車体側に固定されているので、このままでは加締め部の耐久性にも悪影響が及ぶでしょう。
また、D側の90°に曲がったパイプ部は、バルクヘッドに衝突した可能性もあります。
90°パイプの素材はスチールですから、容易に変形はしません。エンジンの振れによってフレアの軸心から離れた場所を周方向に叩かれたら、ナットが緩む原因になることは自明です。
また、D側の90°に曲がったパイプ部は、バルクヘッドに衝突した可能性もあります。
90°パイプの素材はスチールですから、容易に変形はしません。エンジンの振れによってフレアの軸心から離れた場所を周方向に叩かれたら、ナットが緩む原因になることは自明です。
トルクロッドブッシュも、例外なく欠品製廃です。
流動性の高いエポキシ系の樹脂を充填して、固める対策を施します。
流動性の高いエポキシ系の樹脂を充填して、固める対策を施します。
写真の画角では、ブレーキパイプのコネクターとの間隔が少ないように見えますが、シフトアップ時のパワートレインはエンジンマウントを軸に円弧を描いて動くので、コネクターの下に逃げる空間があれば衝突は起こりません。
ISO VG 100 の PAGオイルを補充して、クーラーガスR134aを再充填。
パワートレインの振れは抑え込まれており、ユニオンナットの回転方向に過大な繰返し応力が掛かり続ける懸念は払拭されています。
パワートレインの振れは抑え込まれており、ユニオンナットの回転方向に過大な繰返し応力が掛かり続ける懸念は払拭されています。
クーラーガスの組成の違いに起因して、R134aから最高の性能を引き出すには、R12より最高圧力を高くセットしなければなりません。しかしそれは机上の空論であって、整備の現場にそのまま当て嵌めると別の問題を惹起しかねないことを指摘させてください。
今回の修理は、破損の予兆を示したコンプレッサーの交換が主たる目的です。自動車メーカーであるスズキからは部品供給を受けられず、搭載性を期待して購入したコンプレッサーは純正品と同じサンデン製とはいえ、R134a仕様しかありません。
コンプレッサー以外のクーラーを構成する部品は、洗浄して再使用しなければなりません。レシーバードライヤー(リキッドタンク)は洗浄できないので新品に変えて、その分のオイルを足します。再使用するすべての部品は、当然R12で使用することを前提に設計されています。
R134aが要求する理想の圧力を追求するあまり、41年前のコンデンサーやエバポレータ―をパンクさせてしまっては、元も子もないのです。
今回の修理は、破損の予兆を示したコンプレッサーの交換が主たる目的です。自動車メーカーであるスズキからは部品供給を受けられず、搭載性を期待して購入したコンプレッサーは純正品と同じサンデン製とはいえ、R134a仕様しかありません。
コンプレッサー以外のクーラーを構成する部品は、洗浄して再使用しなければなりません。レシーバードライヤー(リキッドタンク)は洗浄できないので新品に変えて、その分のオイルを足します。再使用するすべての部品は、当然R12で使用することを前提に設計されています。
R134aが要求する理想の圧力を追求するあまり、41年前のコンデンサーやエバポレータ―をパンクさせてしまっては、元も子もないのです。
またF5Aは、令和のいまでも高回転型のエンジンと言えます。サンデンが純正のSD505型に似た5H09型を新品で供給してくれたことはありがたいのですが、それは1,000回転でアイドリングして6,000回転まで回せるマニュアルトランスミッション車に搭載されることを想定してはいないでしょう。
以上の要素を総合的に勘案して、FTECではクーラーガスの充填量を「吹き出し口の温度」を指標にして見定めます。古いクーラー構成部品を過充填で破損させない範囲で、キャビン容積に対して充分な量の冷気を供給できることを、第一目標に据えるのです。
下の写真は、最終テスト時の温度です。
36.5℃ のときに、9.7℃ の冷気を供給しています。
下の写真は、最終テスト時の温度です。
36.5℃ のときに、9.7℃ の冷気を供給しています。
エバポレーターやエキスパンションバルブ、コンデンサーやホース類のすべてを新品に交換できるメニューなら、R134aから最高の性能を引き出す手段が他にもあります。しかし、昭和60年(1985)の軽自動車用に設計された現車のクーラーには、圧力スイッチさえ装備されていません。コンプレッサーのクラッチが繋がったままレブリミット付近まで引っ張る最悪の事態も想定して、最高圧力がR12と大差ない範囲に留まる充填量をもって最善の状態と判断しました。
スズキ セルボ SS40型(1982 -88)のクーラーを修理する記事は、以上です。
日本の自動車メーカーは、いわゆる旧車の部品供給には消極的です。FTECがブログで紹介した方法が、他のクルマにも使えるとは限りません。たとえ同じセルボでも、再使用できる部品とできない部品に違いがあるのは、当然のことです。
総排気量550cc、車両重量530kg。その乗り味を後世に伝えられるのは、健全な実車があってこそ。
いつまでも快適に、末永く運行できることを祈念します。

