フォード エクスペディション (1997年式) です。
オーバーヘッドコンソールの修理で入庫しました。
ルームライトが一切点灯しないという症状。
ただの電球切れか?と思ったら、中ではとんでもないことが…。
ワット数の大きい電球が取り付けられていたため、ソケットが基盤ごと溶けています。
電球の破片の色から察するに、白く明るく光らせたかったのでしょう。
発熱量を考慮せずにインテリアまわりのライトを改造すると、このように溶損を起こし再起不能になってしまいます。これは、火災にならなかっただけ好運だったのかもしれません。
FMVSSラベルの情報をもとに、純正部品の在庫状況を米国フォードに確認。
オーバーヘッドコンソールAss’yでしか部番が無く、本国にも在庫は無いことが判明。
運転席側のドアライトの赤レンズも欠落。これは本国に在庫があり、新品を取付けました。
エクスペディションのオーバーヘッドコンソールの部品構成は下図の通り。
「部品が無いから直りません」ではつまらないので、他車種用の部品や汎用部品の流用を前提に、耐久性が期待できる手法を選んで修復することに決めました。
外観と性能は純正同等を確保し、操作感はなるべく変えない。
これをコンセプトの核に据えて、修復方法を考えます。
まず、構成部品のすべてを取り外して損傷状態を確かめます。
プリント基板は熱害で焼き切れてしまっています。
溶損したプラスチック製のリテーナー。
溶けはじめると、一気に変形します。
安全な運用と保守のため、車体側ハーネスはすべて純正品を使いたい。
あらかじめ二つのカプラーの入出力信号を確認しておきます。
国産車用のT10ソケットを加工して、純正と同じ位置で光らせることに決定。
T10は5W球。
純正より発熱量が少なく外径も小さいので、周辺に再び熱害を及ぼす危険がありません。
取付け部位の爪は、使用しないので切除。
加工済みT10ソケットとインローで嵌合するように、エクスペディションのライト中心部を加工。
このような位置で固定します。
表裏とも、純正の外形範囲内にまとめることができました。
この仕上げなら、将来ふたたび電球交換の必要に迫られても、迷うことなく作業ができます。
エクスペディションのライトケースは国産車のT10電球が納まるライトケースより大きいので、このソケットが熱害で損なわれる可能性もほとんどありません。
下の動画は、最終的な動作確認の様子です。
操作感、明るさともに、純正同様に仕上げることができました。
インテリアまわりの部品は、他の重要な走行装置の部品に比べ、早期に欠品になりやすい傾向があります。
これをワンオフでリプロダクトすると、多くの時間と費用がかかります。また、「使い勝手」より「つくり勝手」を優先して修理すると、必ず後で、使うたびにガッカリする破目になります。
こういう場合は、たとえ完成後に誰も気づかなくても、純正に近い仕上げをめざして手抜きをせずに作り込む。オーナー自身、修理したことを忘れてしまうような処置を施す。
そこが肝要であるとFTECは信じています。
この他にも、快適性と密接なつながりがあるのに壊れやすい部品はたくさんあります。
にもかかわらず、アメ車に限らずどのメーカーのクルマも、部品在庫は減らされています。
今後は生産後10年と経たないうちに、部品入手が困難になる時代になりそうです。
まず壊さないよう、取扱説明書(=オーナーズマニュアル)をよく読んで乗りたいものですね。