フォード エコノライン E-150 (1995年式)です。
チェックエンジンライト点灯の診断で入庫しました。
・ 発進直後にチェックエンジンライトが点灯する
・ アイドリングが下がってエンジンがストールする
・ ATミッションのシフトショックが大きい
などが主な症状です。
このクルマが装備している自己診断装置は、EEC-IV。
フォードオリジナル Electronic Engine Control システムの最終型です。
データリンクコネクターがエンジンルームにあるのも、この年式が最後になります。
まず、スキャナーを接続して自己診断プログラムを起動させます。
データリンクコネクター(EEC-IV) |
エンジン停止状態と始動状態で、それぞれセルフテストを実施。
アイドルコントロールバルブやエミッション関連のソレノイドバルブの作動を確認。
回収したフィードバックを評価するところまで、すべて自動で完了します。
パワートレイン関連の故障コードを確認。
検出されたDTCは以下の6項目です。
・ #159 MAF higher or lower than expected
・ #314 Air injection system inoperative bank 1
・ #311 Air injection system inoperative bank 2
・ #332 Insufficent EGR Flow detected
・ #538 Insufficent RPM change during KOER Dynamic Response test
・ #632 Traction control system did not change states
エアポンプやEGRは、その構造上今回の症状とは関連がなさそうです。
#538 は、FTEC入庫以前にどこかでスロットルボディをいじってアイドリング回転数を上げようとした痕跡とみられます。
6項目の中で、今回の症状に直接関連しているのは #159、MAF(マスエアフロー)センサーに関する故障コードと推定しました。
次の段階では、ライブデータを収集してMAFセンサーの出力を測定するのが定石。
ところが、その前にMAFのカプラーに嵌合不良を発見し、これを確実に固定しなおしました。
すると、症状が劇的に改善。
チェックエンジンライトは点灯せず、シフトショックも異常ありません。
今回の故障原因は、MAFカプラーの嵌合不良による電気的な信号不良ということですね。
その他、以前ABS警告灯が点いたことがあるとのことでしたので、この点検も行いました。
検出されたDTCは、以下の2項目です。
・C1206 Rear isolation valve circuit malfunction
・C1198 ABS inlet valve coil left front circuit malfunction
ABSに関しては、バルブボディ不良も視野に入れた対策が別途必要になりそうです。
今回は、問題視していた症状があっさり完治してしまいました。そんな内容をあえてブログの記事にしたのは、古いアメ車の正しい整備について再考してもらいたいからです。
上述のように、「止まりそうになるから、スロットルを半開きにする」などという処置は愚の骨頂です。多くの関連箇所に悪影響が出て収拾がつかなくなり、最終的に「古いアメ車なんてそんなもんだよ」と結論づけられていくのは、見るに堪えません。
FTECは断言します。90年代のアメ車の自己診断システムは、国産車はもちろんメルセデスベンツやBMWと比べても突出した高機能を備えています。
クルマの信頼性を斟酌するのは、正しい整備を施したうえのことでなければ無意味です。
不調のアメ車をだましだまし運転しているオーナーには、「アメリカ人は日本人ほど我慢強くないと思うよ」と進言したいですね!