ダッジ チャレンジャー 1971年(昭和46年)式 です。
ヘッドライトの作動不良で入庫しました。
入庫時には、純正のシールドビームが4灯ともバルブ交換式のヘッドライトユニットに変えられており、そこに装着されたLEDバルブはハイビームとロービームの切り替えができず、内側の2灯も点灯しない状態でした。
フロント周りを分解してヘッドライトの配線を点検すると、経年劣化とは異なる損傷が多数見つかりました。このような配線では、恒久的な健全性を確保する望みはありません。
今回は、エンジンルーム内とダッシュボード下の配線について、
・ 損傷箇所は修繕
・ 不要な配線は除去
・ 運転を妨げない取り回しに変更
・ 不要な配線は除去
・ 運転を妨げない取り回しに変更
という方針で整備にあたることに決めました。
ヘッドライト裏 |
このクルマの初度登録は、昭和46年。つまり、新車で日本に輸入されたクルマです。ということは、純正以外の付け足された配線は、すべて日本人の仕業 と見て間違いありません。
もちろん、全部が自動車整備士による作業だったかは確かめようのないことです。しかし、勢いにまかせたその場しのぎの手当てで難局を切り抜けようとする日本人の態度が、とりわけアメ車の品質に対する誤ったイメージを広めてきたことは、疑う余地のない事実だとFTECコーポレーションは確信しています。
ペダル周り |
ステアリングコラム下 |
ダッシュボード下 |
パネル開口部で損傷した配線 |
より合わせてテープで巻いただけの結線 |
ためらい傷と切り取られた配線 |
カプラーに残る焼損の跡 |
入口/出口 両方で切り取られた短絡線 |
剥いて巻いただけの、電源取り出し部 |
機能していない後付けのスイッチ類 |
この時代のクルマの配線図は、基本的に紙です。1970~71年式のサービスマニュアルから系統ごとに配線図を抽出し、クルマのワイヤーハーネスをほどいて現物と照合。
すると、大抵の場合、配線図の側にも間違いが 見つかります。( ̄▽ ̄;)
まあ、ゴージャス&デラックス至上主義で毎年アップデートされていくクルマの修理書を、CADの無い時代に全車種間違いなく出版せよ、というのは酷ですが。
ストップライトとディレクションライト(= ウインカー)の系統に不具合が見つかり、配線図を調べていたところ、配線図側の間違いを発見。修正版は、以下の通りです。
現車には、セキュリティやETCなどのアクセサリーも取付けられています。そして、過去に付いていたであろうアクセサリーを取り外すために切断された無意味な配線がたくさん残っています。ものによっては、調整用のネジにアース線をかませていたケースも。
狭い作業域、苦しい姿勢。電源やアースを確保する辛さが雑な配線の原因ならば、それを取り除く工夫もしましょう。
純正のヒューズブロック付近に新しいターミナルを設け、バッテリー電源(常時B+)とアクセサリー電源(ACC)を、一般的なギボシで取り出せる ように整えました。
平端子であれば、純正ヒューズボックスから取り出せます |
ストップライトとディレクションライト(= ウインカー)の系統に不具合が見つかり、配線図を調べていたところ、配線図側の間違いを発見。修正版は、以下の通りです。
1971 Challenger Stop & Direction light Wiring Diagram |
1971 Challenger / Revised Wiring Diagram
いかがでしょう?大分スッキリしたと思いませんか。
当然ながら、失われた機能はひとつもありません。
配線は繋がってさえいれば機能する。機能している間は、配線の良し悪しは体感できない。そして、別の線をどんどん付け足し元の線を切る方法は、故障原因を究明して改善をはかるより、遥かに早くて安上がり。それらを踏まえたうえで、あえて問いたい。
要求を満たせば完了というのは、仕事でしょうか?
もしそれが日本の常識なら、アメ車の評判を貶めた責任は整備士だけにあるのではなさそうです。このクルマに巣食っていた不具合は、10年落ちのクルマなんて恥ずかしくて乗れないのが常識だった、1970年代に施されたものばかりではありませんから。
日本の道しか知らないこのクルマが、この国に来てよかったと思える日が来ますように。
おまけの映像は、映画 バニシング・ポイント(1971年)の予告編。
アメ車のタフで雑なイメージは、数多のカーアクション映画によるところも大きいかと!