埼玉県狭山市の自動車整備工場、FTECコーポレーションが、主に特殊整備にカテゴライズされる業務内容を紹介するブログです。

カマロのシャシーリフレッシュ1/5・概要

シボレー カマロ(第2世代 1970-1981年)です。
シャシー全体におよぶ広範なリフレッシュのために入庫しました。


ボールジョイントやブッシュは、相乗効果を成してクルマの印象を決定づける部品です。緩い箇所を残したまま部分的に改善すると、改善箇所に負荷が集中して劣化や損傷を著しく早めるため、系統ごとにまとめて整備するのが得策と言えます。 

今回は、ステアリングリンケージとフロントサスペンションの整備を基軸に紹介します。

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主な作業内容は、

・ ショックアブソーバー交換
・ サスペンションスプリング交換
・ タイロッドエンド交換
・ リレーロッド交換
・ アイドラーアーム交換
・ スタビライザー( = アンチスウェイバー)リンク交換
・ アッパーボールジョイント交換
・ ロアボールジョイント交換
・ アッパーアームインナーブッシュ交換
・ アッパーアームインナーシャフト交換
・ ロアアームインナーブッシュ交換
・ ハブベアリング交換
・ ブレーキディスクローター交換

など。




まず、分解の過程で各部の現況を確認。
組立までに改善すべき箇所を洗い出します。

過去の整備における組付け不良なのか、それとも40余年の歳月が齎した衰損なのか。
クルマを総体的に捉えて各部のダメージと照らし合わせ、施すべき処置を選択します。

アイドラーアームとスタビライザーが干渉。

リレーロッドのボールジョイントが破損。

防錆塗装はしてあるものの、整備は不十分だったようです。

スタビライザーはコネクティングロッドとブッシュを組替えて再使用。
アイドラーアームとリレーロッドはアッセンブリーで交換します。


ブレーキキャリパーを取り外し、上下のボールジョイントを分離します。
ハブベアリングも交換するため、ローターとハブスピンドルも分離します。





ブレーキディスクパッドは残量充分ですが、おかしな減り方をしています。

ディスクローター側に修正不可能な深さの傷があるのに、何の対策もせずにパッドを交換したのでしょう。この傷は、ブレーキパッドが完全に摩耗しきってからも運行をやめなかった結果、パッドの裏金によって刻みつけられたものです。左右ともに、裏表両面がこの状態でした。

このカマロのハブベアリングはディスクローターに組付ける構造なので、ベアリングと共にブレーキディスクローターも新品に交換することに決めました。






カマロに限らず一般的なアメ車のフロントサスペンションは、アッパーアーム( = コントロールアーム)内側の付け根に、フォーク状のシムを差してアライメントを調整します。

したがって、アッパーアーム脱着の際は、

前後左右の移置、シムの厚さと枚数を厳格に管理すること

が、極めて重要です。





スポーツモデルの旧車の場合、サスペンションのスプリングが純正のままであることは稀です。
このカマロも、線径が太く自由長が長いばねを大幅に圧縮して装着していました。
脱着の段取りは慎重に、大怪我をしないように心掛けましょう。



スタビライザー、ステアリングリンケージ、ブレーキ、ショックアブソーバー、サスペンションアーム等が取外されたカマロの前まわり。各パーツが装着されると防錆塗装が施せなくなる箇所は、簡単に清掃してクラックや溶接剥がれ等の欠陥がないか確認した後、シャシーブラックで塗装します。


こちらは、スタビライザー( = アンチスウェイバー)とロアアームのコネクティングロッド。

ラバーブッシュからウレタンブッシュに変更し、ロッド長を短縮することによって、純正から大幅に下がった車高にセットしてもスタビライザーの角度を適正に保つように調整します。



取外された前サスペンションまわりの部品群。
アッパーアーム、ロアアーム、ナックルスピンドル等は、整備を施して再使用。

次回は、再使用するアーム類をリフレッシュする様子をご紹介します。


おまけの動画は、SVRAヒストリックカーレース
コースは、かつてF1グランプリも開催していたワトキンス・グレン(ニューヨーク州)です。

40~50年も前のクルマの細かなパーツが今も選択に困るほどたくさんあるのは、こういう人たちがいるおかげ。見かけ倒しで効果のないチューニングパーツが淘汰され、確かな実力を備えたパーツが年々鍛え上げられていくのは、アメリカンモータースポーツの奥行きの深さの現れです。

集団の中ほどに、「サメカマ」の力走を見て取れます。




日本では、どうでしょうね?
与えられるのを待っていたのでは永遠に実現できない光景だと、FTECは思います。

自分達の帰属する社会に、こうした楽しみのためのスペースを確保すること。
それも、彼らが好んで口にする、「自由のための闘争」のひとつに違いありません。

【関連記事】

■ 73カマロのシャシーリフレッシュ

2・分解 → http://goo.gl/3fnKP3
3・再生 → http://goo.gl/bY5uUl
4・組付 → http://goo.gl/roVQtu
5・調整 → http://goo.gl/Vn1YYD