シボレー C1500(1991年式)です。
エアコンの修理で入庫しました。
冷房の機能は完全に失われており、クーラーのシステム全体を入れ替える方針で承りました。
「クーラーのシステム全体を入れ替える」とは、「クーラーガスが流れる経路の全てを新品に替える」という意味です。35年前のクルマにこの選択肢が存在しているという事実は、アメリカの消費者が自動車市場に大きな影響力をもっていることを表しています。
前の記事では、エンジンルーム側の作業を解説しました。
この記事では、キャビン側の作業の「一部」を解説します。
この記事では、キャビン側の作業の「一部」を解説します。
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第4世代のC1500(1988-2002)は、GMT400プラットフォームの上に構築されています。キャビン側に装着されているエバポレータにアクセスするには、ダッシュボードの取外しが必要です。
エアコンのコントロールユニットが動作することは、幸運です。
これを修理するには、この記事の解説とは全く違う工程を別に組む必要があります。
これを修理するには、この記事の解説とは全く違う工程を別に組む必要があります。
純正のラジオは、配線されていませんでした。
特殊な寸法形状なので、新しいものに置き換えられなかったのでしょう。
特殊な寸法形状なので、新しいものに置き換えられなかったのでしょう。
プラスチック製のダッシュボードは、長年にわたる紫外線の影響で脆くなります。
脱着には、細心の注意が必要です。
脱着には、細心の注意が必要です。
社外品のアクセサリーを追加するたびに、醜く改造された配線類。
これらは大規模な修理の際に直さないと、故障や火災の原因になります。
配線の修理は、後ほど別の記事にまとめます。
これらは大規模な修理の際に直さないと、故障や火災の原因になります。
配線の修理は、後ほど別の記事にまとめます。
エンジン冷却水を排出し、ファイアウォール(=バルクヘッド)のヒーターホースを分離します。ヒーターコアは、交換部品のリストに入っていません。再使用が条件です。
ホースを分離する際に無理な力を加えると、チューブやタンクを破損させかねません。
ホースを分離する際に無理な力を加えると、チューブやタンクを破損させかねません。
修理をきっかけに機能を喪失するようなことは、修理の目的とは違う領域でも、あってはならないとFTECは思います。
ファイアウォールの穴のエッジで継手を傷つけないように、角度を確かめながらHVACユニットを取外します。体勢が苦しいので、場合によっては事前にシートを降ろしましょう。
改造された配線の整理が必要である理由が、下の2枚の写真だけでもお分かり頂けます。
摘出したHVACユニット。埃まみれの筐体を清掃して、ケース内の熱交換器を組みなおします。エバポレーターは交換、ヒーターコアは再使用。崩れた気密部材は取り除いて、代替品で再施工します。
ダッシュボードの上面から落下したコインが、たくさん見えます。
日米の硬貨が混ざっていますね。
日米の硬貨が混ざっていますね。
ブロアモーターとシロッコファンも、今回は交換しません。
ダクトの内側に堆積した埃を清掃して、清浄な空気をキャビンに送り出せるようにします。
ダクトの内側に堆積した埃を清掃して、清浄な空気をキャビンに送り出せるようにします。
ヒーターコアのホースネック。ホースが嵌合していた部分にも、析出物が付着しています。これは、濡れたまま空気に触れたことがある証拠です。
ホースの内面に密着しやすいように、析出物を取り除きます。
円筒度を意識して、アルミパイプを変形させないように研削しましょう。
ヒーターコア IN側のホースネックに結合するホースも、今回は交換しません。
下の写真は、キャビン側からファイアウォール越しに見えるヒーターホースの先端。
ヒーターコアのホースネックに付着していたのと同じ析出物が見えます。
再使用するホースの内面は、イチグチのフラップホイル#120でデブリを除去します。適切な外径のフラップホイールが無いときは、下の写真のような道具でも代用できます。
再使用するホースの内面が、綺麗に整いました。
目視と指触で、ホースネックが嵌合する深さ以上に処理ができていることを確かめます。
目視と指触で、ホースネックが嵌合する深さ以上に処理ができていることを確かめます。
このホースは、反対側の端部がアルミチューブに加締められる構造で、汎用のヒーターホースで単純に代用することができません。
通常、再使用するホースの内面は、イチグチのフラップホイル#120でデブリを除去し、シリコングリスを塗布しててから、ホースネックに結合します。この際、ホースバンドの位置と向きを、取外す前と同じに合わせることが、肝要です。
エバポレータの配管は、R134a用のOリングを用いて規定トルクで締結します。
新旧の部品で角度が違うことがあるので、締め損ないには注意しましょう。
角度の調整が要るときは、HVAC内に組み込んだエバポレーターとヒーターコアの形状を思い出して、無理な力を加えないように慎重に調整します。
新旧の部品で角度が違うことがあるので、締め損ないには注意しましょう。
角度の調整が要るときは、HVAC内に組み込んだエバポレーターとヒーターコアの形状を思い出して、無理な力を加えないように慎重に調整します。
冷却水を入れたら、エア抜きをしてキャップテスターで水密を確認。
エンジンの再始動に備えます。
エンジンの再始動に備えます。
キャビン側に装着されている、エバポレータとヒーターコアの組み換えが完了しました。
HVACユニットの清掃によって、清浄な空気が供給される瞬間が待ち遠しい。
でもその前に、片付けなければならない大問題が残っています。
次の記事では、ダッシュボードの本体と配線の修理について、解説します。
第4世代のシボレーC/Kトラックがデビューした1988年(昭和63年)は、前年10月19日のブラックマンデーから立ち直る兆しが見え始めた時期にあたります。
アメリカ政府は自動車産業を含む製造業全般を保護する政策を採り、貿易赤字解消のために様々な方策を講じました。
日本市場でアメリカ車が大きなシェアを獲得することはありませんでしたが、円高とバブルの景況感に押されてアメ車を選ぶユーザーが増えたことは確かです。
トラック等の働く自動車が格好よく見えるのは、両国にとって喜ばしいことです。
健全な自動車を後世に残すことで、次世代の想像力が刺激されることを期待します。
日本市場でアメリカ車が大きなシェアを獲得することはありませんでしたが、円高とバブルの景況感に押されてアメ車を選ぶユーザーが増えたことは確かです。
トラック等の働く自動車が格好よく見えるのは、両国にとって喜ばしいことです。
健全な自動車を後世に残すことで、次世代の想像力が刺激されることを期待します。